春の訪れが遅い飛騨では、4月3日にひな祭りがおこなわれる。
古い町並みでは、きらびやかな衣装を身につけた雛人形が、豪華な段飾りで並べられ、観光客の目を楽しませている。
立派な雛飾りは、昔は裕福な商家などにしかなく、農家などでは素焼きの土雛が飾られていた。
近所のおばあさんも、訪ねてくる人は居ないけど、毎年雛飾りをして春の訪れを楽しんでいる。
七福神やお相撲さん、兵隊さん、キューピーさんなど、その頃流行った人形が賑やかに飾られ、桃の花はまだ咲いていないので、猫やなぎや浅葱が彩りを添えている。
手垢や欠けた跡の目立つ質素な土雛を前に、幼かった子供たちの思い出にひたるおばあさんの姿は切ないけど、大店の絢爛豪華な雛人形にも増して、かけがえの無い宝物になっているのだろう。