築数十年の古い民家に住んでいるので、昔の名残りが随所に残っている。
前に住んでいた人が居住部分を改築しているので、多少住みやすくはなっているけど、はじめは戸惑うことが随分あった。
家に鍵が付いていないのもその例で、以前は不安を感じたが、開口部が多い家のすべてを戸締りすることも面倒だし、鍵をかける必要の無いことも10年近く住んでみて分った。
使うことの無い2階の部屋は、囲炉裏の煙の通り道になっていたので、煤で黒光りしている。
外との仕切りは障子一枚で隙間が多く、虫や小動物の出入りも自由で、季節によって色々な客が訪ねてくる。
隙間ふさぐため、あちこち目張りをし、中には戦時中のポスターを貼って隙間風を防いだ跡もそのまま残っている。
この部屋からは、きつつきが板戸を叩いたり、小動物の足音や、昼夜の温度差で家がきしむ音、時には得体の知れない音も聞こえてきたりする。
最初は不気味に感じたこともあったけど、今では自然と一体となって暮らしていることを実感出来るようになった。