名古屋・名駅街暮らし

足の向くまま気の向くままに、季節の移ろいや暮らしのあれこれを綴ります。

山里のひな祭り

2011年04月03日 | セカンドルーム

 

今日は薄曇りで風も冷たく、上着を1枚余分にはおった。
花冷えと言いたいところだが、山里にはまだ花も咲いていない。


雪の消えた山肌は荒涼とした風景で、落葉樹のナラやトチ、ホウ、ブナ、カエデなどは白い肌をあらわにし、常緑樹のスギやヒノキ、マツは赤茶けてやつれた表情をしている。
間もなく、休眠期明けの森の木々は、地中のに張り巡らされた根から、勢いよく水を吸い始める。
そんな時に、ブナやミズナラの幹に耳を当てると、道管を通る水の音を聞くことが出来る。
あと1ヶ月もすれば、水分を十分吸った木は生気を取り戻し、一斉に芽吹き始める。

 

今日は、春の遅い飛騨地方のひな祭りである。
このあたりは土雛が多く、文字通り土の香りが漂ってくるような素朴な味わいがある。


雛飾りに欠かせないのが「アサツキ」で、束ねてコップなどに挿してある。
桃の花はまだ咲かないので、雪解けと同時に顔を出すアサツキを飾る習わしが、昔からあるようだ。
謂われは良く分からないが、お雛様が食事の時に箸の代わりに使うとか、子孫をたくさん増やす縁起の良い植物だからとも言われている。
お内裏様や三人官女、五人囃子などは、どこの家でも飾られているが、招き猫や福助、七福神などの縁起物、桃太郎や、金太郎、かぐや姫などお伽話の主人公、豪傑や軍神まで、とても賑やかに飾ってある。
おばあさんたちの話を聞くと、昔は春になると、富山や岐阜から荷車に土雛を積んで行商に来たと言う。
お雛様とは関係ない爆弾三勇士や、のらくろ上等兵などが飾られていることもあるが、男の子にせがまれて買ったのだろう。


子供たちは家を離れて戻ってくることも無く、老夫婦だけが土雛を飾って、ひっそりと思い出に浸っている。
高山の観光スポットやホテルのロビーに、旧家や豪商の煌びやかな雛飾りが展示され、観光客の目を楽しませている。
それとは対照的に、訪ねてくる人も無く、つつましく飾られた質素な土雛は、花冷えの山里にとてもよく似合っていた。

コメント (6)
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