裏山を見上げると、点々と白いかたまりが散りばめられている。
これは春になって真っ先に咲くこぶしの花で、山里ではこの花を見て種蒔きを始めていたと言う。
高い山の雪形を見て、農事の時期を決めているところもあったが、今はハウスなどの農業設備や、品種改良で天候に左右されない農業が行われている。
枯葉に隠れていた植物も、春の陽射しに誘われて、急に姿を見せ始めた。
イノシシに荒らされた水仙も無事に開花して、土手一面に咲き誇っていた。
田んぼの畦にはつくしが林立して、既に胞子を開いているのもあった。 頭が青いのを採って卵とじにすると、ちょっとほろ苦いが春の香りがする。
山菜の王と言われる行者にんにくも、枯葉を除けると小さな芽がたくさん出ていた。
芽を摘むと、強烈なにんにく臭が漂ってきた。 行者がこれを食べて厳しい修行に耐えたと言われるだけに、いかにも元気が出そうな匂いがする。
湧き水の辺りにも、わさびが小さな花芽を付けていた。
もう少し大きくなれば、花や葉のお浸しが楽しめる。
クレソンも清水の中で密生し、背丈もかなり伸びて食べ頃になっていた。
雨が少なく駄目かと思っていた椎茸が、小指の先ほどの頭を出していた。
一雨降れば一斉に出て来るのだが、この乾燥が続くと収穫は難しくなる。
散水設備があれば撒くことも出来るが、とても上まで水を運ぶことは出来ないので、今年もお天気任せだ。
山里も春本番を迎えて、急に賑やかになってきた。
今朝は摘み取ったばかりのクレソンをサラダにして、朝食の一品に添えた。
これから野山の恵みが、食卓を賑わしてくれそうだ。