沖縄県の翁長知事は9月14日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消す意向を表明し、政府と県の対立が先鋭化した。
歩み寄りのシナリオは見えず、世論をにらんだ駆け引きが激化。
双方は近い将来の「法廷闘争」を見据え、一歩も引かない構えだ。
「今後も『対話の窓』を閉ざすべきではないと考えている。 それは政府と沖縄県の共通認識だ」。
安倍首相は9月14日の参院特別委員会で、辺野古移設を推進する考えに変わりはないとした上で、普天間移設問題をめぐり県側と引き続き協議していく姿勢を強調した。
「対話の窓」という言葉は、難題が山積する中国や韓国などとの関係改善を目指すと説明する際に政府側が多用する。
政府筋は「折り合うのは容易ではないということだ」と解説し、双方の距離が縮まることは難しいと踏む。
国と県による1ヵ月間の集中協議では、普天間飛行場の危険性を除去する必要性では一致した。
しかし、普天間問題の原点をめぐり米軍に強制的に土地を収用された戦後を起点とする県側と、1996年の日米合意とする政府側の隔たりは最後まで埋まらなかった。
このため辺野古移設の是非や抑止力などに関する論議も平行線をたどった。
菅官房長官は9月14日の記者会見で「小学校の金網1枚越えたところに普天間の滑走路がある。 政府と沖縄の危険性除去の努力を無視するような発言で非常に残念に思った」と、翁長知事を厳しく批判した。
「どういう形で進んでいくのか見えない。 予測不可能だ」。
翁長氏は県庁で開いた記者会見で、辺野古沿岸部の埋め立て承認を10月にも正式に取り消した後の政府側の出方について問われ、表情を硬くした。
対抗措置を講じられた場合の対応には「政府の動きを横目でにらみながら判断する」と言葉少なだった。
政府側は当初から前県知事の埋め立て承認に法的瑕疵はないと繰り返し主張し「後は翁長氏の出方次第だ」と余裕をのぞかせる。
翁長氏は温存してきたカードを繰り出し、国との全面対決へ「退路を断った」ものの、法廷闘争に至れば政府側が有利との見方は県側でも根強い。
知事側近は「承認取り消しは結局、県の過去の判断を覆す自己否定だ。 県にとっては、もろ刃の剣になる」と先行きに気をもむ。
県は、辺野古移設阻止に向けて鍵になるのは世論と見る。
翁長氏は今月下旬の国連人権理事会で国際社会へ訴えるほか、辺野古移設の賛否を問う県民投票の検討も始めている。
知事周辺は「昨年あった主な選挙では辺野古反対派が全勝した。 県民投票であらためて『沖縄の民意』を鮮明にし、政権に計画断行を思いとどまらせるしかない」と力説する。
一方の政府は、米側との合意を守ることが「安倍政権の信頼につながる」として、10月以降に埋め立て本体工事を進める方針。
政府高官は「県側に期待を抱かせるのはよくない」と述べ、基地負担の軽減や振興策を進めることで地元の理解を得たい考えだ。
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