利用が伸び悩む成年後見制度の見直し議論が、法制審議会で始まることになった。
後見人が強い権限を持ち、不適切な行為が疑われても交代が難しいとされ、利用者の支援に当たる福祉関係者は「不透明だ」と批判する。
一方で後見人のなり手不足の現状もあり、制度面での課題は山積している。
高齢化が進む中、抜本的な改善に向けた検討が急がれる。
「どうして口座から数百万円が消えたの」。
静岡県の福祉関係者は、高齢者の親族と、後見人の弁護士とのトラブルを耳にしたことがある。
使い込みが疑われたが、弁護士は「(利用者の)生活用品に使った」と否定。
後見人には財産管理が認められており、解任要件となる不正行為とは断定できなかった。
支援を話し合う会議に出席しないなど意欲に乏しくとも、現在は後見人の解任は難しい。
この福祉関係者は「あまりに運用が硬直的で、当事者の家族は制度の利用を敬遠している」と訴える。
後見人を決める家裁の判断にも疑問の声が上がる。
NPO法人名古屋成年後見センターの石川理事長は、顔も知らない弁護士ら専門職を後見人に選任したケースは少なくないと指摘する。
「本当は心が通じ合った支援者が就くべきだ」。言葉には怒りがにじむ。
団塊世代が全員75歳以上となる2025年には、認知症の人が700万人前後になるとの推計があるにもかかわらず、成年後見制度の利用は2022年末で24万人余りにとどまる。
知的・精神障害者を合わせると支援が必要な人は「1千万人を超える」とみる専門家もおり、制度を利用しやすくする改正は喫緊の課題だ。
別の関係者によると、福祉の現場では「資産のない独居高齢者が、専門職に『報酬がもらえないなら後見人になれない』と断られた」などと制度を利用できずに行き場を失う人が既に存在する。
「報酬があっても少額で、後見人に手を挙げる弁護士や司法書士は少ない」と、なり手不足を指摘する声はやまない。
成年後見制度に詳しい新潟大の上山泰教授(民法)は「きめ細かく支援するには、1人の専門職が多数の人の後見人を務めるのは望ましくない。
制度見直しの法改正と並行し、社会福祉士を増やすなどの整備を進める必要がある」と指摘した。
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