
四日市から岐阜に移動し、インタビューを行った。かなり、タイトなスケジュールで、昼飯もろくに食べらなかったが、意義ある取材だった。T社のA野社長とほ昔からよくしてもらったが、なんとなく心の距離が縮まったような気がする。インタビューが終わったのは17時半。そこから岐阜駅まで約30分。岐阜で飲むか、それとも名古屋で飲むか。悩ましい。
岐阜に立ち飲みはないし、ここ! っていう店も知らない。泊まりなら、岐阜で飲むが、ここは名古屋まで出て、まだ行けてない立ち飲みにでも行くか。
太閤通り口側にある立ち飲みが数年前から気になっていた。今日はそこへ行こう。
予備知識もなく、お店に入ったのだが、どうやら独特のルールがあるらしい。お店に入ると、お姉さんから、によると、入場料650円がかかると告げられた。ただし、それもワンドリンク付き。しかもカウンターに出ているおばんざい風の大皿は食べ放題。
極端な話し、無料の大皿料理だけでも充分楽しめる。
これはすごいお店に入ったものだ。
ワンドリンクに、赤星の中瓶をチョイスした。赤星だって、中瓶といえど、500円くらいするんじゃないかしら。そこで、おばんざい一皿いただいたら、充分もとがとれる。
その大皿はトマトに、ブロッコリーの野菜サラダの他、ポテトサラダなどがある。これは大盤振る舞いだ。早速、ビールを飲みながら、それらを取って、臨戦体制を整えた。味付けも悪くない。
このお店、店名から推測すると、母体は八百屋らしい。仕入れは安価だし、場合によって、酒場が在庫リスクを減らす役割も担う。
ただし、いいことばかりではない。
少しすると、視界に何やら蠢く黒い何かがいるのが見えた。小さいのでよく分からないが、動きが早い。よく見ると、その何かは複数確認できる。飲食店でよく見る奴かもしれない。気にしていたらキリがない。なるべく、その黒い何かを気にしないようにした。
単品で、「赤ウィンナー」をオーダーした。
飲み物をどうしようかとメニュー表を取り上げたら、今度は茶色い何かが現れた。黒いやつより少し大きい。その何かは、カウンターの柱をだんだんと昇っていく。これには心が穏やかではなくなった。見ると、茶色いやつは自分の頭上にいる。落っこちてきて、食べ物に入らないか、気が気でない。しばらく頭上を監視しながら、酒を飲むはめになった。
カウンターの縁に目をやると、黒いほこりのようなもが目についた。トナーの粉のようである。はじめは汚いなと思うだけだったが、ちょっと考えたら、これってもしや。ちょっとした風が吹いたら、この粉が舞い上がりそうで、食欲をなくした。
「やれやれ」と思い、店頭の方を見ると、自分より歳上のおっさんと目があった。なんだか、彼はニヤニヤしている。もしや、自分の一部始終を見ていたか。このおっさん、それを承知の上でこの店に来ている常連かも。
結局、これにてお会計をした。支払いは千円ちょっと。
店の外側はテーブル席で、大変な賑わいをみせている。賑わっているから人も入るのだろう。Googleや飲食店サイトのレビューもコスパ最高! とか非営利団体が営業しているのか、などの賞賛が軒並み並び、蠢く黒い何かに言及する書き込みはない。
知らないというのは幸せではあるが、知ってしまった今回、その衝撃は恐怖レベルであった。
しかし、客の目に見えるとこで蠢いてるのに店の人が気づかないとかある?
あと、もしおっさんが本当に師が見つけたのを見て笑っていたのであれば、そのおっさんも大概だと思うよ。
多分、自分が見たのは氷山の一角で、いっぱいいるはず。
教えたら、どう答えるんだろうか。その答え方で、お店の方針が分かるよね。
おっさん、知っていると思うんだ。
カウンターエリアに何かがいるってこと(彼は出入り口近くのカウンターではないところで立ち飲んでいた)を。
あのニヤニヤは経験済みって感じの笑みだったよ。