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オレたちの「深夜特急」~インド編 マトゥラー 2 ~

2015-06-12 23:55:40 | オレたちの「深夜特急」

真夜中の、もう3時近い時刻に、わたしはマトゥラーの駅に降り立った。わたし以外、駅に降りたものはいない。

風が強く、それが妙に寂寥感を感じさせる。

停車していた電車はやがて、わたしの歩調とともに、静かに動き始めた。

わたしは改札をくぐりぬけて、駅の外に出た。無論、駅員などいなく、わたしは列車のチケットをポケットにねじり入れながら、駅の階段を降りたのだった。

 

色彩のない町。

街灯の黄色い光が町を単色に見せる。人影は誰もなく、クルマも走っていない。町は完全に寝静まっていた。

風に吹き飛ばされたタンプルウィードのようなものが、わたしの前を通り過ぎる。それを見て、わたしは西部劇をシーンは、本当にあることを実感した。

 

わたしの予想は裏切られた。マトゥラーという町はもう少し賑やかなところだとばかり思いこんでいて、宿などは、すぐに見つかるだろうとふんでいた。

だが、宿どころか、店すらなく、人々の家にも灯ひとつ点っていなかった。

しかし、不思議とわたしは平然としていた。

なるようになるだろうと。このまま、ほっつき歩いていれば、すぐに朝はくるだろうと。

夜明けまで、あと3時間程度だろうか。

このまま、歩いていてもやみくもに疲れるだけだ。どれ、どこかに腰をおろすとするか。

 

すると、目の前に、ちょうどいい建物の軒先があった。これは風もしのげて、ちょうどいい。腰をおろさせてもらうとするか。

ザックを下ろして、タバコに火をつけ、時計を見る。

もう、3時半だ。

 

辺りを見渡して、少しずつ暗がりに目が慣れてくると、建物の壁の看板があることに気が付いた。

英語の文字を追ってみると、Guest houseと書かれてある。

なんだ。

わたしは、偶然にも宿にたどり着いていたのだ。

 

これはなんとラッキーなのか。

だが、当然ながら、宿の扉は固く閉ざされている。とりあえず、あと数時間待てば、スタッフも起きてくるだろう。

そう思って、ザックを枕にして、わたしは床に寝ころがると、ちょっと低くなった気温に反応したのか、2回続けてくしゃみをした。すると、建物の中に明かりが点り、色の黒い若い男が出てきた。

わたしはとっさに「起こしてしまってごめん」と言った。

黒い肌の男は、眠い目をこすりながら、わたしのことを見て、「泊まりたいのか」とわたしに言った。

 

今、入ったら、今夜の分まで支払わなくてはいけない。あと少し待っていれば、一泊節約できるのだ。

「いや、明るくなるまで待ってる」と、わたしが言うと、彼は「とにかく入れよ」と言う。

わたしは、その言葉に甘えさせてもらった。

そして、彼は今夜の代金は要らないから、と言って、わたしのパスポートを求めた。

 

なんとわたしはラッキーなのだろう。

どうやら、マトゥラーも楽しくなりそうだ。

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