
居酒屋さすらいのアワードも獲得した小樽の名居酒屋のひとつ「魚一心」が2014年10月25日をもって閉店した。
閉店の日のことは、当ブログでも、居酒屋さすらいの番外編としてレポートしたが、その記事は今も時々デイリーの人気記事トップ10にランクインする。
同店が、多くの人に慕われていたことがうかがえる。
わたしが、最後に「魚一心」に訪問したのが、2013年の10月17日。今回は、この日のことについて、レポートする。
「神仏湯温泉」でひとっ風呂浴びたわたしは、一路小樽の「魚一心」に向かった。
「魚一心」が多くの人に愛された理由は、新鮮な魚を惜しげもなく、しかも安価にお客に提供してくれるところに他ならない。
この日の、つきだしはかすべの煮付け。かすべというのが、えいの一種であることは、途中から「魚一心」に急きょ駆けつけてくれたみーさんがそう教えてくれた。
白身の淡白な味。わたしは、てっきり白身の魚だと思ったが、えいなのである。
この煮付けの大きなこと。わたしたちが東京で購入する魚の切り身よりも大きい。それがつきだしで出てくるのである。
そう、「魚一心」の凄みは、新鮮な魚とそのボリュームなのだ。
その秘密は仕入れである。
南樽市場で魚の小売店を構える「魚一心」の大将のお兄さん。このお兄さんが実にいい方で、「魚一心」訪問の翌日、蟹を買いに、南樽市場を訪れたのだが、前日のしけによって不漁。その結果、この日は店頭に蟹はなかったのだが、大将のお兄さんは、最後までなんとかしようと手を尽くしてくださった。
南樽市場の他の店には、蟹は売っているんだけど、大将のお兄さんは、「モノが悪くて売れない」とおっしゃった。確かなものしか売らないプライドが垣間見える。
この確かな仕入れが、「魚一心」なのである。
その後は、ボリュームいっぱいの魚と貝のオンパレードだった。
東京で食べたら何万円もするくらいの。
その海の幸を燗酒でいただく。その幸福感といったら。
「魚一心」にお邪魔したのは、僅か2回。でも、なんかそんな感じがしないのは、みーさんが、月に2回ほど、「魚一心」のうまそうな酒肴をメールでレポートしてくれていたから。
そのメールも今や途切れ途切れになってしまった。
東京にいながらにして、「魚一心」をわたしは味わっていたのだ。
わたしの中にある小樽の灯火がひとつ消えたような気がするのである。
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