
仕事を終えて、わたしは札幌から小樽へと向かった。
小樽の名居酒屋「魚一心」を訪問するためである。
だが、小樽駅の手前、南小樽にさしかかったとき、わたしはなんとなく急に、降りてみようと思ったのである。
小樽駅の構内は古き時代の面影を残す独特の雰囲気を醸す。一方、南小樽はプラットホームにはさほどの感慨を持たないが、木造駅舎の朴訥さには、心が打たれる。
また、駅周辺の風景は、関東地方の田舎とは違う、独特の田舎感が溢れている。
南小樽から散策しがてら、小樽に入ってみようと思ったのだ。
しばらく行くと、思いがけずに銭湯を見つけた。
「神仏湯」とある。ものすごい名称である。はたして、仏様が鎮座されているのだろうか。
東京都北区に「地蔵湯」という銭湯があるが、その上を行く、まさに別格の風呂屋だ。
建物は新しく、赤い暖簾が眩しい。
だが、「神仏湯」を紹介するウェブページによると、「明治の中頃よりあ」ると記されており、その伝統が偲ばれるのである。
わたしは、タオルなど何も持ち合わせていなかったが、とにかく入ってみることにした。
入店してみて、気がついたのだが、「神仏湯」は温泉なのである。
前述のウェブページより参照すると、「地下1300mから豊富に湧出している59.6度の温泉」という。しかも、原泉浴槽なる湯船があるらしい。
入湯料420円。
脱衣所のロッカーは赤や黄色、緑の原色の扉。
15年ほど前に、小樽の温泉に出かけた際、入湯にあたっての注意事項が日本語とロシア語で併記されていたのが印象的だったが、「神仏湯」にはない。
浴場には浴槽が3つあり、いずれも中央に配置されている。原泉浴槽だけ壁際にあり、湯はやや茶色がかって、かけ流し。
泉質は成分総計5.862g/kgの「ナトリウムー塩化物・硫酸塩泉」で、pH値7.2、源泉温度は59.2度、湧出量は毎分60リットル(Qちゃんブログより)
なかなかすばらしい。
体が芯から温まる、柔らかなお湯。
南小樽に降りて、よかった。
「神仏湯」の裏手には、家族風呂もあるらしい。家族風呂の銭湯とはなんと素敵なことか。
さて、身を浄めたことだし、小樽の酒場にでも出かけるとしよう。
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