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「青木高の14球」-埼玉西武VS広島カープ4回戦・最終回の攻防 <後編>

2009-06-19 22:16:28 | モザイクの一球
 鋭い打球が青木の左脇でバウンドし、鮮やかなグリーンの人工芝を滑っていくように転がっていく。

 だが、その打球は先には左翼手の小窪が待ちかまえていた。小窪の反応はやや鈍かったが、難しいバウンドを捕球するとすぐさまバックホームし、三塁走者を封殺、捕手の石原は一塁に向き直って打者走者をアウトにし、併殺を完成させた。

 7-2-3のダブルプレー。
 長いプロ野球の歴史において7-2-3のダブルプレーが成立したのは、恐らく初めてのことだったのではないだろうか。いや、仮にあったとしても、これほど美しく外野手が加わったホームゲッツーはかつて存在しなかっただろう。

 黒瀬の当たりは決して悪くなかった。
 勝負の世界に「もし」はあり得ないが、もし、カープの内野陣が通常の前進守備であったら、黒瀬の打球は中前へ抜け、ライオンズは交流戦の優勝戦線に辛うじて踏みとどまっていたことだろう。

 しかし、一瞬のうちに二死となったが、好機が潰えた訳ではなかった。まだ二塁と三塁に走者を残しているのだ。
  依然としてライオンズのサヨナラのチャンスであることは間違いなかった。

 対する打者はGG佐藤。
 そこでカープベンチはゴロを捌いた左翼手の小窪に代えて嶋をレフトへおくった。
 小窪にしてみればワンポイントの守備要員ということになる。ワンポイントリリーフは古今東西あちらこちらで聞くがワンポイント守備というのはついぞ聞いたことがない。
 これも「内野5人シフト」の産物である。

 左翼に嶋が入ったことで、通常の守備位置に戻ったカープは、勝負強いGG佐藤を歩かせて満塁策を選択した。
 再び塁上に全ての走者が賑わうとライオンズベンチは次打者にとっておきの代打、江藤をおくる。

 なんという因縁か。前日、プロ野球史上35人目となる1000得点を記録した男は「3分の2は広島時代のもの」と古巣との対戦で達成した不思議な巡り合わせについて語ってみせた。
 その男が交流戦の優勝戦線を共に争う古巣に対し、引導を渡すシーンで抜擢されたのである。

 えてしてこういう場面では「古巣に恩返し」という見出しが躍りそうなドラマが起こりがちである。
 だが、江藤はどうやら気負っていたようである。
 その江藤とは裏腹に青木は毅然としていた。
 黒瀬と対戦していたときとは別人のように腕が振れていた。

 初球、外角のチェンジアップでストライクをとり、2球目も外角をストレートで押した。
 江藤はたまらずバットを出し、ファールするのがやっとだった。
 たった2球で青木は江藤を追い込んだのである。

 江藤にしてみれば、青木は球が荒れているとみて、まずは様子を窺ってきたにちがいない。
 江藤は初球をやすやすと見送った。
 3球目、4球目と内外角に吊り球を放ったが、江藤は手を出してこなかった。

 2-2の平行カウントになったが、それでも青木は強気だった。
 これまでの青木なら弱気になり、球を置きにいったところで痛打を浴びたケースが見られたが、この日はマウンド上でいつもより大きく見えた。
 5球目はストレート。この日最速の140kmを計測。

 江藤は辛うじてファールで逃げた。
 最後の球も5球目と同じようなコース。結局、江藤は最後までタイミングが合うことはなかった。

 力のない打球が左翼と中堅手、そして遊撃手のちょうど真ん中に上がった。
 早々と遊撃手の梵が手をあげて難なくそれを捕球しゲームセット。
 カープのナインはまるで勝利したかのようにマウンドの青木の元へ駆け寄っていく。
 それとは対照的にライオンズナインはうなだれながらベンチを後にしたのだった。

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