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マーライオンのたたずむ階段を登って、店の扉を明けた瞬間、ふわっと鼻腔を優しい香りが突き抜けた。
「いい匂い」。
瞬間的にそう思ったものの、その香りがなんの匂いか分からない。
一瞬、にんにくの香りと思い、納得したが、実はその匂いではなかった。
それは、テーブルに海南鶏飯のプレートが置かれた瞬間に理解した。
鶏を生姜で煮た、その煮汁で炊いたご飯の匂いだったのだ。
それにしても、このふっくらと炊かれたご飯のなんともきれいなたたずまいと、その香りには驚いた。
ついうっとりとしてしまうその匂いにしばし、恍惚としてしまった。
なんて、豊かなのだろう。
整然とご飯の上に盛られた鶏のもも肉。
作りこんだであろうと想像できるサラダ。
デザートのスイーツは、レモン色に輝いている。
何よりも、メインディッシュの器が純白で、いかにもシンガポールらしい。
それは、水を吐き出し続ける、マーライオンの白だ。
一口目を食べると、堰をきったように口に運ぶ手が止まらない。
「おいしい」。
ついつい、口をついて言葉が勝手に出てくる。
ジューシーな鶏に甘辛のソースがからみ、ふっくらのタイ米が一体となって口の中に広がっていく。
甘酸っぱいドレッシングに彩られたサラダも忘れてはいけない存在だ。
エスニック料理を食べると、申し訳なさそうに出てくるサラダ。大抵のそれは、余った野菜で作ってあるようなものばかりだが、この店のサラダは違う。
サラダだけでもお金がとれる一品だ。
シンガポールに滞在した4日間、ボクは何を食べていたのだろう。思い出せない。
インド人街に泊まっていたせいで、インド料理を食べていたかもしれないし、近所のフードコートに出かけて、マレー料理ばかりを食べていたような気もする。本格的にシンガポール料理を食べると、それなりのコストを要求された。おいそれとは食べられないものばかりだった。今にして思えば、それなりのシンガポール料理を食べていればよかったなと思う。
中華やマレー、そしてタイ料理をもっと洗練させたようなシンガポール料理。だって、この「海南鶏飯」も、タイでは「カオマンガイ」と呼ばれている料理である。だが、タイのそれはもっと屋台的である。それはそれで、魅力的なのだが、それにつけても、このシンガのエッセンスを忠実に再現した「海南鶏飯」は最高だ。
「カオマンガイ」はナンプラーが入っていたが、「海南鶏飯」にはそれを感じない。或いは、多少魚醤を使っているのかもしれないが、タイの「カオマンガイ」とは似て非なるお料理だろう。
お店は清潔で、南向きの窓から、さんさんと日が射しこむ。
その陽だまりの中で食べる、「海南鶏飯」はシンガポールにいる雰囲気を更に演出してくれるのだ。
デザートも最高だった。
夏みかんのような柑橘系のゼリー。南国のフルーツの、爽やか感がなんともいえないゼリーは、思わずおかわりと言ってしまいそうなおいしさだった。
これで980円はお値打ちだ。
あぁ、ビールが飲みたい。
メニュー表には、大きく「タイガービール」の存在をアピールしている。
店長と思しき人に問い合わせてみると、なんと!「タイガービール」を樽生で入れているという。
今度は、絶対夜に行こうと思う。
鶏排飯とは?
と思い、ネットで調べてみた。
グーグル検索の上位に、この師のブログ記事が出てきたのにはちょっと笑ったけど、基本的に鶏排飯とは、台湾料理である「鶏唐揚げご飯」であるようだね。
アジア料理でよくある、ご飯の上におかずが乗っけてある系=ぶっかけ飯の一種で、乗っけてあるものが鶏からというものだ。
もう、これはご飯と鶏唐だけで間違いない。よほどまずく作らない限りは、だれも文句を言えない一品だと個人的には思う。
それにしても、中華料理のアジア各国への大きな影響は、この料理を見ても如実に現れてるね。
そして、中国からインドネシアへと渡ったその唐揚げを、料理として東京で出している店があるということが、東京の多彩な各国料理の裾野を表しているようで、関心至極だよ。
酷暑ながら乾いた南国の空気の中での、タイガービールと唐揚げ。
もう最高だろうね。
だが、厳密にいうと唐揚げではないよ。
生姜と一緒に煮た鶏ももだ。
ちなみにマレー半島と陸続きのタイでは、カオマンガイと呼ばれている。
シンガポールでは食べてないけど、バンコクでは食べたよ。
師は食べてないか?
シンガポール料理は少ないけど、タイ料理なら、このメニューは食べられるぞ。
鶏排飯=鶏の唐揚げ。
記事中にある師が撮った写真にも、「ジューシーに揚がった鶏肉を、チキンライスの上に。」と書いてる。
海南鶏飯=カオマンガイ=茹で鶏とそのゆで汁で炊いたご飯を盛り付けたもの。
この2つがごっちゃになってしまったんだと思う。
俺なんかコメントで、シンガポールなのにインドネシアとかすっとぼけたこと書いてるし、感心至極を関心至極とか書いてるし・・・。
なお俺、アジア旅行に行った時の飯って、ほとんど覚えてないんだよね。今だとこんなに食うもんに関心あるのに、当時は全然こだわってなかったのか、日記にも食べ物の記述とか、食べたものの名前とか、ほとんど書いてないんだよね。
今なら店のおばちゃんにレシピすら聞きそうだけど。(笑)
カオマンガイはどうだったかなあ。タイの安食堂や屋台で食ったかなあ・・・。
ただ、当時はガッツリした油ものが好きだったから、ゆでた鶏はチョイスせず、唐揚げを食ってた気がするよ。
ほんと全然覚えてない。このボケ具合、ろくなもんじゃないなあ・・・。
いかんな。
こんな初歩的間違い。
しかも、自分が食べようと思って、注文したいものを間違えているという二重の過ち。
あちゃーだよ。
旅の食べものは覚えているつもりだけど、この調子なら怪しいね。
早速なおすよ。
ありがとう、師よ。