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足利市で仕事を終え、足利市駅に行ってみると、有料特急は発車したばかりだった。
次は1時間後である。
そういう客のために存在するのか分からないが、駅の構内に居酒屋がある。
今となっては懐かしい。黄色の看板、「庄や」だ。
なんてこった。喫茶店ではなく、何故に居酒屋なのか。
仕事を終えて、喉はからから。1時間という時間は、決して短くない。今日は、取材で歩き回った。ちょっと、どこかに座りたい。
すべての言葉が言い訳になる。
そう、この勝負、あんたの勝ちだ。「庄や」さんよ。
居酒屋チェーン店の第一世代。
「養老の滝」、「村さ来」などと並ぶ古参の店。「はい、よろこんで」で、一世を風靡した「庄や」は今やほとんど街で見かけない。ほとんどの店が新たなCIの下、看板をかけ変えた。
しかし、居酒屋チェーン店の第一世代は、いずれも民芸調である。いわゆるテーマパークやコンセプトショップのはしりだと思うのだが、時代は、田舎回帰、田舎へのノスタルジーに傾斜する流れにあったといえるだろう。
ともあれ、ボクは暖簾をくぐった。そして、カウンターの手前に座り、目の前にいる板前風の男に「生ビール」と告げた。
1時間をどう有効に使おうか。いや、出発の5分前にはホームにいたい。居酒屋の会計やホームへの移動を考えると、時間は50分間しかない。
「すぐ出てくるものをください」。
ボクは板前に懇願した。
すると、「たこキムチ」(380円)が、出てきた。「冷しトマト」(300円)が出てきた。
早すぎじゃね~か。
やはり、ボクははまっているのだろうか。「庄や」の罠に。
だって、出来すぎじゃないか。
特急を逃したら、次の電車まで一時間待つ、すると目の前に居酒屋がある。そこに入ると、ビールとあてが、まるで仕組まれたかのように出てくる。
そうか。これは仕組まれているのか。
まるで、竜宮城。
店から出たら、何百年も経っていたりして。
多分、こういう輩は少なくないのだろう。
特急を逃して、吸い込まれるように、生ビールを飲むやつは。
どうせなら「特急待ちセット」とか作ってみてはいかがだろうか。
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