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喫茶さすらい 024 - この男、職人につき - 「SUGA COFFEE」(成田市橋賀台)

2015-10-22 12:11:15 | 喫茶さすらい

「スガコーヒー」という名前は、「喫茶 までい」のぷりんさんから聞いていた。

いや、そもそも「までい」のコーヒーが「スガコーヒー」から仕入れていたものだった。

くせのない味わいのすっきりとしたブレンド。

ぷりんさんは「ひとつの到達した味」と評価した。

多分もう、なかなか成田には来ないだろう。いや、成田山なら鰻を食べに、ふらりと出掛けるかもしれないが、駅から遠い飯田町や、ましてやもっと遠い橋賀台には来ないと思う。

今日行かなければ、「スガコーヒー」を訪れる日は永遠に来ないかもしれない。

そう思って、ボクは「スガコーヒー」を目指した。

 

店にたどり着くまでに、恐らくスガさんと思われる店主のことをあれこれ想像した。

成田の決して大きなマーケットではない場所で、ロースターをやるということ。これは並々ならない気持ちがあるはずだ。だが、勝負できる勝算を持って店を構える決心は、余程豆に自信を持っているのだろう。

その人物とは、どんな男なのだろうか。

 

店頭から、巨大なロースターが見えた。

一見すれば、コーヒー豆を販売する店には見えない。

店に入り、おそるおそる店の奥を覗いた。豆が飾られているショーケースのその向こうに彼がいた。

喫茶店の気難しいマスター風でもなく、スガシカオのような自由人なシャレオツでもなく、焙煎されたような、やや黒い顔に生気を讃えた老練ともいえるオヤジがいた。

刻まれたしわは深くはないが、コーヒー豆と同じような熟成した時間を過ごしてきたことは、容易に想像できる。決して、かっこいい風貌ではないが、生きてきた生きざまのようなオーラを発している。

 

その男を前にして、「スガブレンドを200g下さい」。そういうのが、やっとだった。

「スガブレンドね」。

ややくぐもった声で、彼は返事をした。

「あっ、ついでに一杯、ここでいただいていきます」。

店には、大きな円いテーブルがあり、その場で飲むことも可能なようだった。

 

ぷりんさんによると、スガさんは、かつて喫茶店を営んでいたという。

成田ニュータウンで、自信の豆を布教する男が淹れるコーヒーを飲んでみたいと即座に思った。

「座って、待ってて」。

 

店内には、浜省がかかっている。

もしかすると、スガさんは、浜省と同じ世代かもしれない。ジャズがかかる店が多い中、これは彼なりのアンチテーゼなのかもしれない。

「スガブレンド」は、昨今の深煎り全盛のローストと比べると、やや浅めである。苦味よりも、コーヒー本来の微かな酸味を感じさせる。

これも、今のコーヒーショップ界に抵抗しているようにも見える。

職人のハンドドリップは完璧だった。ぷりんさんのフレンチプレスによる抽出とは違う味わい。

満足なコーヒーだった。

ムラのない安定した味。長い旅路の末に辿り着いた極み。

コーヒー豆と職人の思念の融合。

 

ちなみに購入したコーヒー豆も素晴らしかった。

スタバの豆は、豆の屑なども混入されているが、「スガコーヒー」のそれには、屑は一切入ってなかった。

クオリティは技術だけでなく、心遣いにもあるようだ。

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