香彩日記

一筆入魂!今の思いを『書』に込めて。

むらさきのスカートの女~最近読んだ小説から

2022年06月23日 13時56分23秒 | 本(紹介・レビュー感想)
     

2019年芥川賞受賞作、今村夏子さんの「むらさきのスカートの女」が、文庫本になったので読みました。

     

読み始めると、「むらさきのスカートの女」というフレーズが何回も出てきて、あまりの多さに、不思議な面白みを感じました、
一体何回出てくるのか数えたい気分にもなりました。
多い理由は、語り手の「私」が「むらさきのスカートの女」が気になって、その呼び名を連呼しているからです。
「むらさきのスカートの女」は、いつもむらさき色のスカートを穿いているので、そう呼ばれる商店街の有名人。
対して、誰も気にも留めない自称「黄色いカーデガンの女」である「わたし」は、「むらさきのスカートの女」を観察するうちに友達になりたいと思うようになり、密かに「むらさきのスカートの女」を助けます。
終盤で「むらさきのスカートの女」が消え、最後に「黄色いカーディガンの女」に変化が訪れます。
その後どうなるのか、いろいろ想像してしまいました。

本文は、160ページくらいで、文庫本には芥川賞受賞記念のエッセイ8本と芥川賞贈呈式パンフレットの「受賞の言葉」も収録されています。

エッセイによると、はじめは「むらさきのスカートの女」を語り手にするつもりだったそうですが、主人公を陰から見守る女を登場させることを思いつき、語り手の「わたし」に設定したそうです。

それによって、「むらさきのスカートの女」が連呼され、不思議な存在が二人になり、より奥深さが感じられるお話になったのかもと思いました。

読み手の受け取り方も様々なんだろうなあ。

 

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