高齢者雇用安定法の定めにより、従業員が希望した場合は原則としてその全員を、満64歳(平成25年4月1日以降は「満65歳」と読み替え)まで雇用しなければならない。(例外措置もあるが、その解説はここでは割愛させていただく。)
さて、従来の定年を超えて継続雇用するにあたっては、それ以前と比較して労働条件が低下することもある。例えば、正社員であった者を嘱託社員等へ身分を変えたり、関連会社等へ出向させたり、賃金を減額したり…
こういったことは許されるのか、と問われると、実は、許されるのだ。
「労働条件を引き下げるのは不利益変更になる」と考える向きもあるかも知れないが、このケースでは、不利益変更には該当しない。「不利益変更」とは、雇用期間中に既得の権利を奪う場合に用いる法理であって、継続雇用により“新たに発生した雇用期間”については、比較対照すべき労働条件がそもそも存在しないので、適用できないからだ。
また、高齢者雇用安定法も、高齢者の雇用を確保することを目的とした法律であって、労働条件の内容まで拘束するものではない。
あくまで、「新たな労働条件の下で雇用契約を締結することに両当事者が合意すれば、継続雇用が成立する」という考え方なのだ。
しかし、そうは言うものの、以前と比べてあまりにギャップの大きい労働条件を設定してしまうのは考えものだ。
提示された労働条件に納得できずに退職してしまう者が多数発生するようであれば、結果として法の目的に反することとなるし、さらには、「初めから継続雇用するつもりが無かった」と見られて訴訟の場において不利な立場に立たされざるを得まい。
やはり、与える仕事や従業員の能力等を勘案して、現実に即した労働条件を設定するよう配慮が求められよう。
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