10月に入り、上半期の人事考課に取り掛かっている会社もあるだろう。
ところで、人事考課の方法は、大きく分けて、「相対評価」(他の従業員との優劣比較による評価)と「絶対評価」(会社が予め設定した基準に対する“達成度”による評価)との2つがあるが、そのどちらを用いるのが望ましいのだろうか。
まず、査定結果を賞与支給額決定のためだけに用いる場合は、「相対評価」がお勧めだ。
と言うのも、支払える賞与原資が限られている中で、「その総額を、企業活動への貢献度に応じて配分する」のが、理に適っているからだ。また、「絶対評価のための基準」を設定するよりも、「模範(もしくは基準)となるべき従業員」と比較するのが、時間も労力も掛からないし、従業員間にライバル意識を持たせる意味でも効果がある。加えて、部門ごと(考課者ごと)の“甘辛”を調整しやすいことも、相対評価の特徴として挙げられよう。
しかし、「相対評価」では、デジタルに数値化できない評価ポイントでの比較がしにくく、また、従業員間で“足の引っ張り合い”を誘発する懸念も捨てきれない。そう考えれば、ある程度の「絶対評価」的な尺度も必要であり、「完全相対評価」に徹するのは難しいと言える。
一方で、その査定結果を昇格や昇進の判断材料として用いる場合は、「絶対評価」が適している。例えば、その会社における「課長」たるべき人材像があって、それに達しているか否かにより昇格や昇進の可否を決定する、というのは、まさに「絶対評価」の考え方だ。
これは、逆に言えば「評価基準を満たせば課長に昇進できる」ことをも意味するわけで、被考課者(評価される者)の動機づけの点で効果があるし、さらには、その「評価基準」を管理職研修の題材としても活用できる点でもメリットがある。
ただ、現実の昇格・昇進査定においては、「課長ポストが満席なので候補者のうち1人は昇進させられない」とか、「入社3年生の中で誰か1人を抜擢したい」など、相対評価的な要素を加味しなければならないケースもしばしば生じうる。なので、「完全絶対評価」というのも、これまた現実的では無さそうだ。
いずれにしても、人事考課に限らず人事管理の仕事はすべて、対象が“人”であるだけに、理屈だけでは解決できない部分が大きい。また、“経営環境”や“経営者のポリシー”や、いわゆる“社風”といったようなものも考慮すべきであることを承知したうえで、「相対評価と絶対評価のどちらにどの程度のウエイトを置くか」を会社ごとに考えるべきだろう。
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