ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

未払い残業代請求における「付加金」とは

2017-06-03 21:49:09 | 労務情報

 労働者から、残業代が支払われていなかったとしてその支払いを請求された際に、未払い残業代の金額と遅延損害金のほか、「付加金」の支払いも含まれていることがある。
 この「付加金」とは、労働基準法第114条の定めにより、解雇予告手当、休業手当、法定時間外・法定休日・深夜業に係る割増賃金、および年次有給休暇中の賃金を支払わなかった使用者に対して、裁判所はそれら未払い額と同一額の支払いを命じることができるとされているものだ。そして、これには「労働者の請求」が要件であることから、未払い残業代請求においては付加金も含めておくのが、今や、労働者側の常套戦術となっている。

 請求された会社側にしてみれば未払い(とされた)残業代の倍額を請求されるので一瞬驚くかも知れないが、落ち着いて、付加金支払いを命じるのは裁判所であることを思い出してほしい。加えて言えば、裁判所が命じることのできる場面は、「判決」しかない。

 そう考えると、訴訟が提起される前の、ADR機関(都道府県労働局等)における「あっせん」や「労働審判」の申し立て段階の話であれば、それらに応じた方が付加金支払い命令を受けることが無いため、会社にとっては得策であるケースもありえよう。ちなみに、一部には「労働審判も裁判所が介在するので付加金請求が可能」と主張する向きもあるが、労働審判で決定を下すのは正確に言うと裁判所ではなく労働審判委員会であるので、(請求するのは自由だが)労働審判では付加金支払いは命じられないとするのが多数説だ。
 そして、それらが不調に終わり訴訟に発展してしまった場合も、特に会社側の“負け筋”のケースでは、判決が出る前に解決するように努めるべきだろう。係争中に未払い残業代を清算した事件において、最高裁は「口頭弁論終結時までに義務違反の状況が消滅したときには裁判所は付加金の支払いを命じることができない」(最二判S51.7.9、最一判H26.3.6等)と判断している。

 もっとも、そもそも未払い残業代が無いのであれば徹底的に争うべきであるし、それ以前に、残業代の不払いなど、あってはならないのだが。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする