労働基準法第89条は、「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に、就業規則の作成と届け出の義務を課している。
これを「“常用労働者”が10人以上の事業場は就業規則を作成しなければならない」と誤解している向きもあるが、それはちょっと違う。「常時使用する労働者」と「常用労働者」とは意味が異なるのだ。
「常用労働者」とは、「期間を定めずに、もしくは1か月を超える期間を定めて雇われている者」または「前2か月にそれぞれ18日以上雇われた者」と定義される。すなわち、「パートタイマー(長期雇用)」はこれに該当するが、「短期アルバイト」は該当しないというイメージだ。
一方、「常時使用」は、事業場の規模を考えるうえで「常態として何人雇っているか」を見るものであるので、こちらには「短時間労働者」も「短期雇用の労働者」も要件に合致すれば含めることになる。
具体的な数字を挙げて説明してみよう。
例えば「正社員3人+短期アルバイト7人」の事業場があったとする。もし、この短期アルバイト7人全員が1か月以内の期間を定めて雇用されているなら、「常用労働者」は「正社員の3人だけ」ということになる。
しかし、仮に、顔ぶれは毎月変わるとしても、常に7人の短期アルバイトを雇っている状態であるなら、「常時使用する労働者」は「10人」と数える。そうなると、この事業場は、就業規則を作成して所轄労働基準監督署へ届け出る義務があることになる。
もっとも、労働基準法上の義務をあれこれ考えるよりも、就業規則は、労働条件や服務規律を明文化しておくこと(流行りの言葉で言えば「ルールの見える化」)が最大の目的なのだから、常時使用する労働者の人数に関わりなく、作成しておくべきだろう。
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