会社は、従業員が安全に働けるよう配慮すべきとする「安全配慮義務」を負う(労働契約法第5条)。
これに関しては、かつては職場での事故や怪我を防止することに重点が置かれていたが、昨今では、過重労働等を原因とする脳・心臓系の疾病やうつ病などが労災と認定されるようになり、また、平成27年12月からは「ストレスチェック」の実施も(従業員数50人未満の事業場を除き)義務づけられて、今や会社は、従業員のメンタル面を含めた健康にも配慮すべきとする「健康配慮義務」も果たさなければならなくなってきた。
また、ここ数年、「健康経営」(NPO法人健康経営研究会の登録商標)も話題になったように、「企業の持続的な成長のためには会社が従業員の健康に積極的に関与していくべき」という現代的な考え方も生まれてきている。
もっとも、常識的な経営者なら、従業員が負傷したり病気に罹ったりするのを望むはずがなく、従業員には健康でいてほしいし、(いやらしい言い方にはなるが)良質な労働力を提供してほしいと願っているはずだから、これは「現代的」というより「本質的」とでも言って良いくらいだろう。
とは言え、例えばウオークラリーを実施したり喫煙を禁じたりするのは、“啓発”ならまだしも罰則付きで“強制”するのは法的に微妙だし、一部の従業員からは反発があるかも知れない。プライベートな事項に会社が干渉することの是非は、会社ごとのカラーによって異なるので、他社で効果が上がったと聞いて安易に飛びつくことのないように気を付けたい。
それよりも、安全配慮の基本である「危険の予測(または早期発見)」と「適切な措置」が、健康配慮の面においても重要であることを忘れてはならない。
そのためには、少なくとも法で義務づけられている健康診断・ストレスチェックと、その結果を踏まえた治療や保健指導等を完全実施することをまず考えたい。
身体的・精神的を問わずすべての疾病に共通する話であるが、早期発見によって重篤にならないうちに治療すれば回復も早い。
また、早い段階で対処していたなら、万が一、会社の健康配慮義務違反を問う訴訟が提起されたとしても、会社としては最善を尽くしたと抗弁もできよう。「従業員の健康を守る」ことは、即ち「会社を守る」ことにも通じるのだ。
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