今年もインフルエンザ流行の季節が近づいて来ている。
さて、企業のインフルエンザ対策としては、従業員やその家族が感染した場合にその感染を拡大させないための措置・ルールや、多数の従業員が休業した場合やパンデミックで交通機関が遮断された場合等に事業活動を維持継続させるための仕組みといった、いわば「事後策」も必要だが、そもそも従業員がインフルエンザに感染しないようにするための「予防策」を講じることは、それ以上に重要だ。
具体的には、従業員に向けての「ワクチン接種の奨励」や「手洗い・うがい・咳エチケットの徹底」といった呼び掛けが考えられる。
ところで、そのワクチン接種について、会社が“奨励”ではなく“業務命令”として従業員各人に強制することは可能なのだろうか。
結論として、それは「不可」である。
これが業務遂行や施設管理に関わる事であるなら会社が業務命令を発するのは可能、というより、そうするべきものだ。しかし、従業員の健康は、本質的に個人の自由と責任において管理するべき私的分野に属するものであるので、労働安全衛生法等で義務づけられるケースを除いて、会社はこれに干渉する権利を有さない。
また、医学的見地からワクチンの副作用リスクも否定しきれず、事故が起きた場合に会社が責任を負いきれるかという観点からも、ワクチン接種を強制することは避けた方が無難だろう。
ちなみに、平成25年に改正された予防接種法が「政令で定める者を除き任意接種」としていることを理由に「会社は強制できない」と解説する識者も見受けられるが、その法改正は、国が義務接種から任意接種へ方針転換したのであって、会社による強制の可否を定めたものではない。その点、本稿をお読みになっている諸氏におかれては、誤解の無いようにされたい。
とは言っても、特にインフルエンザに感染する可能性の高い業態においては、職場全体でのワクチン接種には(“当たり外れ”はあるものの)一定の予防効果が期待できるので、極力、従業員全員に協力してもらえるよう努めたい。
なお、現にインフルエンザに感染した従業員の就業を禁じるのは会社として当然の措置と言え、それを示唆したうえでワクチン接種を奨励するのは従業員の行動決定に良い影響を与えそうだ。
そして、もちろん、ワクチン接種に要した費用は会社負担とするべきだろう。
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