現行の労働基準法第32条の3では、フレックスタイム制の清算期間は1か月以内と定められているため、フレックスタイム制を採用している企業の多くは、勤怠集計の締め日に合わせた「1か月」を清算期間としている。
しかし、これだと、月ごとの曜日の並びによっては法定労働時間(週平均40時間以内)を超えてしまうことがある(それを条件付きで容認する旨の行政通達(平成9年3月31日基発228号)が出されてはいる)、勤怠集計期間内で業務の繁閑を調整しきれない場合がある、等の不都合点が指摘されてきたところだ。
これを受けて、今年4月1日から改正施行される労働基準法では、フレックスタイム制の清算期間を3か月以内とすることが可能となった。ただし、①労使協定を労働基準監督署に届け出ること(清算期間を1か月以内とする場合は届け出不要)、②1か月ごとに集計した労働時間が週あたり50時間以内とすること(これを超える場合は三六協定の締結と割増賃金の支払いが必要)の2つが要件となる。
今般の法改正について、経営者側は概ねこれを歓迎しており、早速フレックスタイム制の導入(または制度改正)を考えている企業も多いと聞く。
フレックスタイム制の最大のメリットは、業務の繁閑を個々に調整できるため、総じて労働時間の短縮が期待できることだ。
さらには、「働きやすい職場」との印象から企業イメージ向上にも寄与できる。
一方、労働者にとっては、家族との団らんの時間が増える、地域活動に参加できる、通勤ラッシュを避けられる等々、「ライフ・ワーク・バランス」に配慮した働き方ができるようになる、といったメリットも挙げられる。
とは言え、フレックスタイム制には、次のようなデメリットもあることを承知しておかなければならない。
その最たるものは、労働時間管理が煩雑になることだ。フレックスタイム制では労働者ごとに異なる始業時刻・終業時刻・休憩時間をすべて記録し、管理する必要がある。管理ツールを導入(または改良)するにしても、費用の掛かる話であるし、本人や上司や労務担当者の負担は間違いなく増すことになる。
また、従業員それぞれのパーソナリティーによるところではあるが、生活がルーズになりがちであり(清算期間が長くなるとこの傾向がさらに高まる)、それに対応するべく、会社の管理体制を整える必要も生じてくる。
社内コミュニケーションの点からは、職場の一体感が薄れてくる(特にコアタイムを設けない場合にこれが顕著になる)、他部門との連携が取りにくくなり会社全体として知識・情報・ノウハウの蓄積が図りにくくなる、といったことも、大きなデメリットと言える。
今般の法改正を機にフレックスタイム制の導入を考えるのも悪くないが、これらメリット・デメリットを踏まえて検討されたい。
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