労働契約法第18条は「5年超の有期労働契約は本人の希望で無期契約に転換できる」と定めている。これは平成24年の法改正で新たに制定されたルールで、当時マスコミ報道等で大きく取り上げられたのは記憶に新しいところだろう。
しかし、雇用契約の締結にあたっては、それとともに、同法第19条に定める、いわゆる「雇い止め法理」も忘れてはならない。
これは「有期契約が反復更新により無期契約と実質的に異ならない状態になっている場合、または労働者が期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない雇い止めは認めない」とするものだ。
既に確立していた最高裁判例(最一判S49.7.22、最一判S61.12.4)をそのまま制定法化したもので、現に訴訟の場ではこの法理が用いられてきた経緯があったため、特段のニュース性は無く、法改正当時、さして話題にもなっていなかったような気がする。
さて、この条文の解釈にあたってキモとなるのは、「雇用関係が継続されるものと期待」の部分だ。つまり、有期契約の更新を繰り返していた場合に、労働者が次の契約更新を“期待”したなら(期待することに合理性があったなら)、合理性・相当性の無い雇い止めは認められなくなり、5年を経過しなくても実質的に無期契約化することになる。
では、具体的に、何回更新したらその“期待”に合理性があると言えるのだろうか。
これに関して裁判所の判断は、事案によってまちまちだが、一般的には「2回更新したら3回目以降の更新を期待する」と考えるのが自然だろう。しかし、極端な例を挙げれば、雇い入れの際に人事担当者が「ずっと働いてもらいたいが形式上1年契約にしておく」などと言ったとしたら、その時点で(一度も更新していなくても)「期待させた」ことになってしまうこともある。
こういったことを考えれば、もしかしたら、「5年超で無期契約に転換」よりも「雇い止め法理」のほうが、会社としては注意を払うべきとすら言えるのかも知れない。
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