厚生労働省が公表した「令和3年賃金構造基本統計調査」によれば、全調査対象企業の「平均勤続年数」は「12.3年」(第2表;男女計)となっている。
ところで、「平均勤続年数」の意味を誤解している向きもあるようなので確認しておくが、これは、字のとおり「勤続年数の平均」のことだ。 決して、「退職者が在籍していた期間の平均」(すなわち「概ねこの年数経つと離職する」という意味)ではない。
極端な例を挙げれば、新入社員が勤続0年であり、定年間際の社員が勤続45年とすれば、その単純平均を求めれば、平均勤続年数は「22.5年」となる。
これを踏まえれば、平均勤続年数が長い(例えば20年以上の)会社というのは、
(a) 毎年同数の新卒定期採用をしているなら、そのほとんどが定年まで勤め上げる
(b) 近年の社員の採用数が減っている
のどちらかである可能性が高い。
前者であれば「超優良企業」と言えるが、後者であれば「(社員の採用数だけでは論じられないものの)要注意企業」と言えそうだ。
一方で、平均勤続年数が短い場合でも、創業して間もない会社や新卒採用よりも中途採用に力を入れている会社は平均勤続年数が短くなる傾向にあるので、「平均勤続年数が短い=社員が定着しない」とも言い切れない。
また、男女で平均勤続年数が大きく異なる会社についても、一般的には「女性の平均勤続年数が男性のそれを大きく下回る会社は女性の定着率が低い」と見られがちだし、事実、そうであるケースも多いが、必ずしもそうとは限らない。
もしかしたら「男性ばかりだった会社が最近になって女性を採用するようになった」のかも知れないので、これも先入観で判断してしまうのは危険だ。
すべてのデータの見方に共通するが、単に数字だけを見て「長い」とか「短い」とか直感で判断するのでなく、その意味や背景事情も考えて論じる必要がある。
冒頭に紹介した厚生労働省の統計も、それを踏まえて正しく活用したい。
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