年金資金の運用を委託されていた投資顧問会社の“犯罪的”とも言える運用失敗の影響で、複数の厚生年金基金(以下、単に「基金」と呼ぶ)が解散に到ってしまっている。
件の投資顧問会社へは委託していなかった基金も、その財政状態は決して芳しいものとは言えない。大多数の基金で運用実績は想定利回りを下回っており、厚生労働大臣から財政健全化計画の提出を求められた基金も、平成23年12月時点で81基金に上っている。多数の基金が積立不足を抱えたまま解散することも、俄然、現実味を帯びてきた。
現行制度では、その積立不足は加入企業が共同して負担しなければならないことになっているので、間違いなく企業経営を圧迫することになろう。政府や国会内には基金の解散に際して公金を投入する案も出ているようだが、今の国会情勢は「それどころじゃない」ので、現行制度のまま変わらない可能性も高い。
となれば、財政状態の悪い基金に加入している企業としては、財政改善が見込めないのであれば、傷の小さい今のうちに基金を脱退することも考えたいところだ。
しかし、そのためには、社内外2段階の障壁がある。
まず、社内的には、従業員の半数以上が基金脱退に同意していなければならない。特に基金に加入していることをリクルートの材料にしていたり、退職金に代わる措置として設けていた会社では、従業員に納得してもらうために大変な時間と労力を要するだろう。労働協約や労使協定を締結しなおさなければならない場合もある。
そして、社内の問題が解決したとしても、基金の代議員会で承認されなければ脱退できない。しかし、任意脱退を安易に認めてしまうと残された企業の負担が増えることになるので、なかなか承認されないのが現実のようだ。存亡の危機に瀕している会社からの脱退申し出であればいざ知らず、黒字会社が“食い逃げ”するのは、代議員(=他の加入企業)が簡単に許さないのは想像に難くない。それでも無理を通すと言うなら、業界の中で孤立する覚悟も要るだろう。
※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
(クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
↓
