「この時計の写真を撮らせて 頂けませんでしょうか?」 「結構よ」 ミス・グリーンショウは答えた。 「これは確か、パリ博覧会で 買い入れた物なの」 そうでしょうな。それに違いありませんよ」 と言って、ホレイスはその写真を撮った。 【A・クリスティー 「グリーンショウ氏の阿房宮」】 |
昨日とほぼ同様の空となりました。
蒸し暑さも同じ。夏の間は高かった太陽も低くなった分、
余計にその存在感を感じます。つい先程、ツクツクボウシが一声。
そろそろ虫の演奏会も始まろうとしているこの時間。
負けじと鳴いたのはいいものの、この蝉の声が
どこか物悲しそうに感じるのは気のせいでしょうか。
なぜでしょう? 9月に入った途端にセピア色の世界が恋しくなりました。
そんな時、いつだって逃げ込める空間があるっていいですね。
今日の例文のように、パリ博覧会で買った古時計もいいけれど、
銅製品、ポプリやドライフラワー、セピア色のカードと・・。
それらを無造作に飾るだけで容易にその空間は作れます。
そうそう、以前に作ったビーズの刺繍も仲間入り。
それこそ、お得意の 「想像の余地」 で。
安物のビーズをただ縫い合わせたチョーカーも、宝石煌く、
「貴婦人のチョーカー」 という事に致しましょう。それにしても・・。
チョーカーって、若い頃から大好きでしたが、
年齢の出る首の衰えを隠すのに有効だったとは・・。
この私にも 「先見の明」 があったという事ですね。
悲しみの原石と宝石彫摩師とは手を携えて歩き、 年と共に、首の幾重の衰えを隠す チョーカー の銘品の数々を世に送った。 【三島由紀夫作 「暁の寺」】 |