【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

秘めたる小説の力

2013-09-26 17:13:37 | A・クリスティーの館








   こちらは今日も概ね晴れの天気になりました。
  随分、風が強くなっています。

   その風が空気を洗ったのでしょうか・・
  今見上げた空は、真っ青な空に白い雲がポカン、ポカン。

   朝方は冷えましたが、まだまだ日中は動くと汗ばみます。
  従って長袖からもう一度、着替える羽目に。
  この季節、着る物に悩みますね。







   さて、「A・クリスティーの館」
  も本当に久し振り。

   思わぬ時間がかかって
  しまいましたが、
  A・クリスティー作、
  「フランクフルトへの乗客」、
  読了。

   そもそもこの本を読む
  きっかけになったのは、
  タイトルに、ある種の郷愁と
  憧れを感じて。

   しかも物語のプロローグが
  フランクフルト空港で、
  一人の謎の美女に出会い、
  頼み事をされた・・

   ~という、何とも
  ロマンティックな出来事で
  始まったのですから。

   ところがいつまで経っても、
  お馴染みのポアロも、
  大好きなミス・マープルも出て来ません。

   そしてそれは、ミステリーと言うより、スパイ小説です。
  読みながらも・・ “ミスったかな・・?”
  ~なんて思ったものですが・・。

   一言で言えば、人生に退屈していた一人の外交官が
  フランクフルト空港で巻き込まれた、国際的陰謀。

   おまけに若者の革命戦争やハイジャック、
  果てはヒトラー論まで出て来て。

   当時の政治の世界を垣間見るというだけでなく、
  過去の歴史、かと思えば今にも十分通じる政治の世界を見た気がして。

   それにしても作品が書かれた時期が、
  クリスティーが80歳、1970年(昭和45年)というから驚きます。

   兎にも角にも物語は空港で始まり、空港で終わります。
  読み終わった今になりますと、登場人物がやたら多くて
  理解出来ない部分が多いですけれど。
  私の文章もまとまりのないものになっています。

   最後に。先の麻生発言でも話題になった、ヒトラーの事。
  そのせいもあって、ヒトラーの記述が心に残りました。

   それにしても・・まさか、クリスティーの小説で、
  その演説がどういうものだったかを知る事になるなんて。
  でも分かり易くて納得です。少しだけ記してみましょう。

   教養のある大使館員の妻がヒトラーの演説を聞きに行きます。
  彼女はドイツ語が良く分からないながらもいたく感動し、
  彼の言った事、それ以外に物の考え方はなく、
  人々が彼に従いすれば、全く新しい世界が出現する・・と思い。

   ただ、素晴らしい演説でしたから、後になって
  文章に書き留めようとするのですが、何も思い出せません。

   よしんば断片的に思い出しても、文章にすると違った
  意味のような気がするし、又、無意味にも感じると言うのです。
  その事が彼女にとっては、どうにも不思議で仕方がない・・。
  ~といったような具合。

   選挙の時、巷で言われていた 「風が吹く」 というのも、
  程度の差こそあれ、ある意味、似たようなものかも知れませんね。
  



「世の中には他の人々に熱狂を、
ある種の生活と事件の幻を吹き込む
能力を持った人間がいる。
彼らは口に出す言葉や、我々が耳で聞く言葉や、
文字で書かれた思想に頼らなくとも、
そういう事をやってのける
力を持った人間がいる。
言葉や文字とは別のものがある。
それはごく少数の人間にしか
備わっていない磁力、
ある事を始動させ、一つの幻を
創り出す磁力のようなものだ。
おそらく彼らの人間的魅力、声の響き、
肉体からじかに発散するものが
そうさせるのだろう。
(中略)
これらの人々には力がある。
偉大な宗教上の師と言われる人が
この力を持っていた。
そして邪悪な精神の力も又しかりだ」
(中略)
「ヤン・スマッツが言っている、
統率力は、偉大な創造力であると同時に、
悪魔的な力にもなりうる・・・と」              
           【A・クリスティー作 「フランクフルトへの乗客」】