声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

フランス一人旅~マダムMを訪ねて(8)

2016-01-08 20:43:45 | 旅の楽しみ
『ドゴール空港~アヴィニョンまでのTGV車内で』


パリ・ドゴール空港を11時24分発のTGVに乗ったものの、不安で落ち着かない。

不安そうな顔でデッキに立っていると
そばにいたイタリア系らしいオニイチャンが、にこにこ笑いながら私のバッゲージを
荷物置き場に入れてくれた。

こう言う時、やたら親切なのは怪しい。

そこで、バッゲージの滑車が壊れたのを理由に(本当に壊れていた)
自転車用のワイヤーで荷物置き場のステンレス製のバーに固定する。

ついでにオニイチャンに「この電車って、5012なの?列車番号が違うけれど・・・・」と
訊いてみる。

「俺も同じだよ」・・・そういって彼は私にチケットを見せた。

見ると彼のも5012だった。
「良かったぁ・・」といって彼に礼を言うと「君の席はあっちだよ」と
客車を指さした。

彼の言うとおり、私の座る予定の席は、荷物置き場の前の車両の一番奥だった。
(親切なオニイチャンだ。疑って悪かったかなぁ・・)

予約席に行ってみると、黒いコートのオバサンがドカっと荷物を置いている。

「あのう、すみません。そこ私の席なんですけどぉ・・」と言うと
快く荷物を移動してくれた。
(空いている指定席は誰が座っても良い事になっているらしい・・)

4人掛けの席の前には折りたたみ式のテーブルがあって
私のすぐ前の席ではベージュの薄手のスーツを着た白髪の太ったオジサンが新聞を広げていた。

斜め前には50代くらいの茶色の目をしたビジネスマン風の男性。
目が合ったので、英語が話せるか?訊くと、少しならわかるという。

時刻表を見せながら、列車番号が違っているがこの列車はアヴィニョンに停まるか
と訊くと「たぶん停まるよ」と答えた。
あのイタリア人っぽいオニイチャンより信用できそうだ。

ドゴール空港駅を出て約30分。

窓の外は閑散とした冬の農村風景が広がっている。
『世界の車窓から』のような風景を想像していた私には、少し物足りない気がした。

しばらくして、ようやく車掌さん風の男性がやってきた。
見た目だけでは車掌さんか、どうかわからない普通のダークスーツを着ているのだ。
日本と違って制服らしいものは着ていない。

彼は私のクーポンを受け取ると「メルシー、マダム」と言って丁寧に礼を言った。
良かった、この列車で間違いなかったんだ。


教訓その3・・・フランス国内では列車の番号や行き先表示が違っている時もある。そういう時は自分の勘を信じよう。

 
安心したとたん、お腹がすいた。

ビュッフェでサンドイッチでも買って来ようと思ってドアを開けて閉めようとしたら
閉まらない。

無理やり閉めようとしたら、親切な私の斜め前の男性が後ろから
「チョットマッテ」「チョットマッテ」と教えてくれた。

?・・・その言葉通りちょっと待っていると、ドアが自然に閉まった。
「オートマティック?」と振り向いて彼に訊くと「そうだ」と頷いた。

ビュッフェに行って見ると、昼時とあって5~6人の客が並んで順番を待っていた。
私の前の太ったオジサンもその中にいた。

次は私の番という時になって、反対側のドアから痩せた神経質そうな50歳くらいの
薄茶色のセミロングのカマキリのような顔の女性が割り込んで来た。

その様子を見た、私の後ろのメガネのショートカットの上品なマダムが
「あら、あなた皆並んでいるのよ」っと彼女を軽く嗜めた。

割り込みセミロング・カマキリは、ちょっと悪戯っぽく笑ったが、全く取り合わなかった。

その仕草に、注意したマダムも諦めたのか私を見て聞こえよがしに
「ああいう人がいるのは困るわね」と言った。

私も一応
「私は日本人なので、フランス語はわからないので注意はできなかった。でも、彼女のやり方はフェアではないと思う」と・・・
まるで中学校の授業で習ったかのような英語で答えた。
メガネのマダムは納得したかのように頷いた。


教訓その4・・・フランス国内でも英語は学校で習うらしい。
従って、中学2年くらいまでの英語がわかれば大体のコミュニケーションはできる。


チキン&チーズクラブサンドとオレンジジュースを買って、合計7.8ユーロ
サンドイッチは少々冷たかったが味はまあまあ。
でも製造年月日は3日前だ。
日本では考えられないことだが、フランスでは当たり前のことなのだろう・・。

自分の席に帰り、ふと思いついて先ほど私に「チョットマッテ」とドアの閉め方を
教えてくれた斜め前の男性に「あなたは日本語が喋れますか?」と訊いてみた。

「まさか・・」と彼は両手を挙げて笑った。

そうだ、やはりあれは聞き間違いだったのだ。
「チョットマッテ」はフランス語の「オートマティック」だったのだ。
一人でクククッと笑ってしまった。
前の太ったおじさんが怪訝そうな顔で私をジロリと見た。

車窓からは相変わらずフランスの田舎の景色が見える。

所々雪がうっすらと積っている冬の景色だ。
季節柄、緑が少ない。

窓から見える村々の中心には必ず教会のチャペルの高い塔がある。
建物も古さを感じさせる。
きっとこの辺の人たちは200年前から、変わらない静かな生活を送っているのではないか?
と・・思わせるような佇まいだ。

私の憧れるフランスの田舎の生活が・・・
そこにはきっとあるに違いない。                         

                                   

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