町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

京急新1000形歌う電車、運用終了。消えゆくシーメンス製VVVF

2021年07月28日 | 京浜急行電鉄

音階のような独特の磁励音を発し歌う電車、ドレミファインバーターとして親しまれて来た京急新1000形の1033編成ですが2021720日を以って定期運用を離脱し機器更新のために入場しました。これにて1998年登場の2100形から始まった23年に渡る歌う電車の歴史が幕を閉じました。

最後まで歌う電車として残存した1033編成。以前にも記事にしていますが、この編成は2次車に区分されるグループで1次車と比較すると側面窓が大型ガラスの固定式になり、窓の中央部にあった分割するピラーが廃されているのが特徴です。1次車同様ドイツのシーメンス社が製造したGTOサイリスタによるVVVFインバーター制御装置を搭載していますが、次期増備車(3次車)からは半導体素子がIGBT化された為、音階調の磁励音を発する最後のグループになりました。

シーメンス社のVVVFは踏襲しつつ半導体素子と機器構成を大幅に見直した3次車。12次車では8両が4M4T4両が2M2Tでしたが空転・滑走対策として6M2T3M1Tに変更されている他、200412月より国土交通省の地下鉄道の火災対策が改正された為それらの基準にも対応しています。ドレミファ音階は聞かれなくなりましたが、日本国内のメーカー製品では聞かれない甲高い独特な磁励音を発します。これらもアフターサービス終了に伴い順次国内生産品に換装が計画されており、シーメンスの制御装置は近い内に消滅する見込みです。

線内普通列車や快特の増結、4両+4両で羽田空港〜逗子・葉山間のエアポート急行に使用される4両編成。GTO-VVVF12次車と併結した際は音階調のドレミ音と慌ただしく変化するIGBTによる音が混じり合い独特なハーモニーを奏でました。

ロングシート主体で車端部をボックスシートにした車内。扉間の座席には珍しく中仕切りを備え、ピラーの無い大きな窓と相まって少々贅沢さすら感じさせます。

独特なサウンドで鉄道マニア以外からも注目されメディア露出も多く、ロックバンド「くるり」の赤い電車の歌詞の一節にもなるなど平成時代の京急を象徴する存在でしたが、遂に今年7月に幕引きとなりました。今後は同じく歌わないIGBT-VVVF制御装置の国内生産品への換装が進められると思いますが、こうした車両が活躍した事はずっと記憶に留めておきたいですね。

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色褪せぬ人気のフラッグシップ・京急2100形

2020年01月28日 | 京浜急行電鉄

京浜急行電鉄創立100周年の1998年に、1982年以来快特用として運用されて来た2000形に代わるオールクロスシート車両として2100形は登場しました。間近に迫る21世紀に向けた車両ということで、2100の形式が与えられたものですが、従来車とは異なり内外共に欧州の製品を導入した極めて斬新な車両として、また関東では数少ないオールクロスシート車として独特な存在感を放っています。特にVVVFインバータ制御装置にはドイツ・SIMENS社の製品である「SIBAS32」を搭載し、JR東日本E501系に近い(但し2100形は回生制動が切れる速度が高いため、停車時には音階は聞かれず音もやや大きいなど相違点があります)音階調の磁励音が特徴で、機器更新が完了する2015年まで耳にすることが出来ました。

600形をベースにしながら、ワイパーカバーに形式名をスリット状の打ち抜き文字で表現した正面が特徴で、文字部分のスリットで運転士が連結器周りの様子を確認できるようにしています。この正面スタイルは2002年登場の新1000形に引き継がれ、また600形にも車体更新改造時に波及しました。現在の正面にはマスコットキャラ「けいきゅん」のイラストがありますが、これは車体更新の際に貼り付けられました。

久里浜工場公開時に晴れ姿を披露する2100形トップナンバー。行先は定期運用が存在しないエアポート快特の羽田空港行きです。2100形も都営浅草線には入線することが可能ですが、2扉クロスシート車両ということで定期での直通は都営地下鉄側が難色を示しており、臨時列車での運転のみに留まっています。

クロスシートが並び、連続窓に横引きカーテンが設置される車内。特別料金不要の列車では最高レベルの水準で、座席は乗務員室からの操作で転換され常に進行方向を向き、乗客の手での転換は出来なくなっています。この転換座席はノルウェー・エクネス社製で、座席モケットはスウェーデン・ボーゲサンズ社製品と、2カ国の製品を組み合わせています。

ドア上には車体更新改造時に17インチワイド液晶画面とドアチャイムを新規に設置しましたが、更新前はLED表示器で、京急では初採用の設備でした。

SIMENS社の制御装置・主電動機は登場から10年で東洋電機製造のものに更新され、最大の特徴が失われてしまいましたが、その後は格下げ改造などもなく今年で22年目に入ります。前任の2000形は3扉化・ロングシート改造で快特用クロスシート車としての活躍は18年余りでしたが、今後も関東唯一の転換クロスシート車両として長く活躍して欲しいものです。

 

 

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いよいよ残り1編成・歌う京急新1000形

2020年01月26日 | 京浜急行電鉄

京急では会社創立100周年を前に2扉クロスシートの快特用2100形を1998年に登場させましたが、初の試みとしてVVVFインバータ制御装置に国内メーカーではなくドイツのSIMENS社の製品を採用しました。この制御装置はGTOサイリスタを素子に用いており磁励音が音階調になっている非常に珍しいもので、1995年登場のJR東日本E501系の主変換装置で初採用され、日本では2例目でした。そして2002年には700形や初代1000形の置き換え用として2100形の実績を基に2代目1000形が登場、SIMENS製のVVVF制御装置を引き続き搭載し、3例目となる音階を奏でる形式になりました。この新1000形と2100形は、独特な磁励音から「歌う電車」と称されマスコミにも取り上げられたことから、京急=歌う電車のイメージを全国に浸透させました。しかし、SIMENS製VVVFも素子がIGBT化され3次車からは音階は聞かれなくなり、大幅に設計変更されたステンレス車グループからは国内の三菱電機・東洋電機製造の制御装置が採用されました。

歌う電車として名を馳せた1・2次車も、経年劣化と共にGTOサイリスタの製造終了や補修用部品の調達に難がある海外製品ということで、車体更新工事を待たずVVVFインバータ制御装置は国内メーカー製のIGBTを用いた新型に置き換えられることになり、現在では上写真の1033編成のみが最後の歌う電車として活躍しています。

機器更新を受けた編成の例(1413編成)。1033編成と同時期に落成した4両編成ですが、制御装置は既に置き換えられ東芝製IGBTになりました。2007年から採用の三菱・東洋製とも異なる磁励音のため、区別は容易です。

リゾート列車よろしく面積が広い固定窓が特徴の2次車車内。1次車では窓中央部にピラーがありましたが2次車から廃止され、一部機器にマイナーチェンジが加わった5次車までこの内装が引き継がれています。

全ドア上にはLED表示を設置、かつては2100形もこの形態でした。新1000形では開閉時に鳴動するドアチャイムや戸閉力弱め機構を新造時から標準装備しています。

この歌う電車は、メディア露出も多く、特にテレビ朝日の人気番組タモリ倶楽部などでも頻繁に取り上げられ、特に品川駅では接近メロディにもなっている、くるりの楽曲「赤い電車」の歌詞のモチーフになるなど名実共に京急の象徴的存在でしたが、今や消滅間近とは、一つの時代の終わりを実感させられます。今後は昭和の釣り掛け駆動車のように、GTOサイリスタのVVVF音も懐かしい時代の記憶として語られるようになるんでしょうね・・・。



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快適通勤への試金石・京急600形(3代目)

2020年01月20日 | 京浜急行電鉄

京急では都営浅草線直通運用に就いていた初代1000形初期車の置き換えの為、1500形に続く新形式として1994年より600形(3代目)を導入しました。日本の地下鉄直通運転に対応する通勤電車では極めて珍しいオールクロスシート車両として設計され、特に2人掛けと1人掛けが乗務員室からの操作で転換するツイングルシート(※ツイン・シングルと星のツインクルを掛けた造語)と呼ばれる設備は、マスメディアにも取り上げられ大きな注目を集めました。

しかし、斬新な設備設計は中々上手く行かないもので、機能維持に手間が掛かることを理由にツイングルシートは2002年より固定化、更に2005年からはロングシート化改造が施行され、本形式は新1000形に近い設備の汎用通勤車になっています。

42本併結の8両編成でエアポート急行に充当される600形。新逗子~羽田空港間の自社線運用では、必ずしも貫通編成である必要が無いので、このような組成が多く見られます。ちなみにこの新1000形まで引き継がれている丸味を持たせた前頭部は気球をイメージしており、600形から始まりました。登場時はワイパーカバーがグレーでしたが、1年程でアイボリーに改められ、更新改造時には形式の数字が入れられ印象が変化しています。

京急ファンフェスタで展示される600形トップナンバー。余り撮影する機会がない左アングルでの構図です。行先は京成本線の成田空港行きですが、実際に京成本線の他、成田スカイアクセス線のアクセス特急運用にも対応しており、100010次車と共通で運用されています。

ロングシート化で本形式独自の設備は全て失われ、新1000形に近づいた車内。乗務員室直後の前向き座席は更新改造後も存置されています。

ドア上の車内案内表示は登場時は設置されず、後年に改造でドアチャイムと共にLED表示が新設されましたが、更新工事の際に液晶画面に換装されました。

2024年には登場から30年目に入る600形ですが、陳腐化も見られず耐久性の高いアルミ車ということで、今後も長きに渡り主力車両として活躍して行くでしょう。


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【訃報】京急800形、引退・・・

2019年06月16日 | 京浜急行電鉄

本日の貸切列車を最後に、1978年以来活躍して来た800形が全ての運用を終了しました。これで長年京急の象徴だった前照灯一灯に片開きドアの車両が消滅してしまいました。

京急では初となる、ワンハンドル式運転台やFRP材を使用した車内など、当時としては画期的な設備を満載して登場した同系も、初登場からは40年と半年を数えるまでになり、よくぞここまで活躍出来たな・・・としみじみ思います。

晩年期は、唯一残っていたエアポート急行の運用からもホームドア新設計画で終了し、普通運用に徹し最後を飾りました。

更新工事を繰り返し、1500形(登場時)と同じ配色になった車内。700形全廃後は、異色の片開き4扉車として存在感を放っていましたが、ホームドア計画が持ち上がると、この設備が仇となってしまいました。威勢のいい音を立てて勢いよく開閉する片開きドアも、京急のみならず関東大手私鉄からは完全に消滅です。晩年期は普通列車を利用すると必ず遭遇するような形式だっただけに、未だ全廃の実感が湧きませんが、40年余に渡って愛用されたことは賞賛に値するでしょう。

保存車両というより記念碑的な感がありますが、東京都豊島区の丸善が入る藤久ビル(ジュンク堂書店のすぐ隣です)1階には前頭部が西武新2000系・東急7700系と共に保管・展示されており、現在は唯一自由に見ることが出来る800形となっています。しかしながら前頭部だけというのは物足りなさもあり、1両でもいいので800形も保存になることを期待したいですね。

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