30年に渡り続いた平成も幕引きが迫る今日では、鉄道車両に於いても世代交代が進み平成生まれのVVVF車でさえも廃車が発生するようになりました。その中で、首都圏の路線でありながら旧態依然とした吊り掛け駆動方式の車両を複数保有し、さらにVVVF制御の高性能車と日常的に併結運転を実施している驚愕の路線が存在します。
今更説明不要ですが、それがこの江ノ島電鉄で1979年~1983年度に導入された1000形グループの内、1次車(1001編成・1002編成)、非冷房ながら準備工事車として落成した2次車(1101編成・写真上)、江ノ電初の冷房車として登場の3次車(1201編成・写真下)4編成が該当し全車が大規模な修繕工事を施工され2018年現在も他形式と共通で運用されています。これらの車両群は、1979年代当時の江ノ電では48年ぶりの新型車ということで大きな注目を集め、また旧型車の機器流用車や他社からの譲渡車が多数を占めていた同社の旅客サービス向上に貢献しました。1980年には通勤型電車ながら鉄道友の会によるブルーリボン賞も受賞しています。2003年からバリアフリー対応化の為、ドアチャイム・車椅子スペースの設置や車内放送の自動化など、各種改造が実施されていますが、現在の1000形グループは2代目新500形に準拠した塗装と、集電装置のシングルアーム化、更に行先表示のフルカラーLEDへの換装など新型車にも劣らない設備に改められました。
行先表示のLED化が進行する中で未だ方向幕を堅持する3次車1201編成。先述のようにこの編成は江ノ電初の新製冷房車(1次車は1985・86年に、2次車は1982年に改造で搭載)で、日本国内の旅客営業を行う狭軌鉄道車両で吊り掛け駆動方式を採用する最後の新型車になりました。車体は更に改良され、屋根と床板にステンレスが用いられ正面のライトは角型に変更されています。これら4編成の使用実績で、台車の固定軸距が軌道に与える影響が少ないことが分かった為、1986年・1987年の通称1500形とも区別される増備車2編成は車体の基本設計はそのままに駆動装置をカルダン駆動方式に変更、この2編成の登場で在来車の300形・初代500形も性能を揃える工事が実施されました。
外観・車内共に同時期の新型車だった京浜急行電鉄800形の影響を受けているのは有名な話ですが、下降式窓やワンハンドル式運転台にその特徴が現れています。化粧板と座席の更新は2代目500形登場直後に実施されましたが1201編成が2011年末にドア上への液晶画面設置、車内照明のLED化を追加で施工され、2015年度中には全編成に波及しました。
2011年度より設置が始まった液晶画面による車内案内表示装置。向かって左側は乗客の少ない時間帯だった為使用されていませんが、沿線の観光情報などを流しています。JRの新型車も顔負けな設備を持ちながら、動き出せば重厚な駆動装置の音が響き渡るのもギャップがあり非常に面白い点ですね。