2008年3月に日本初となる地下鉄直通対応の特急型電車として衝撃のデビューを飾った小田急60000形ですが、すっかり行楽や帰宅時の足として定着し今年で12年目を迎えました。東京メトロ千代田線との直通の為に設計された車両ではありますが、2012年からは20000形RSE車の後任としてJR東海の御殿場線進出も果たし、小田急の現役車両では他社線3社(東京メトロ・箱根登山鉄道・JR東海)への直通を行っている唯一の存在です。
身軽な6両編成で複々線区間を駆け抜ける“ふじさん”に充当中の60000形。“はこね”と“えのしま”の併結列車やホームウェイなどで10両編成を組む運用もありますが、6両単独での運用も多数設定され、需要に応じて柔軟な運用を可能にしています。地下トンネルでも明るく見えるようにメタリック調のフェルメール・ブルーで塗装された車体は、見る角度や場所によって色合が変化し一際目を惹き付けますが、この色のモチーフは17世紀のオランダ黄金時代を代表する画家、ヨハネス・フェルメールの作品で見られる独特の鮮やかな青で、ラピスラズリを精製して作られるウルトラマリンを用いて生み出される色です。有名どころの作品では、「牛乳を注ぐ女」「真珠の耳飾りの少女」などと言われればピンと来る方も多いのではないでしょうか。
10両編成組成時には中間に入る貫通型先頭車。形状は全く異なりますが、全体的なイメージは揃えられており、最もデザイン作業の掛かった部分と言われています。かつては通勤車の分割運用が小田急の名物でしたが、今や分割運用が存在するのは30000形EXEとこの60000形MSEのみになってしまいました。
50000形VSEに近いイメージの車内ですが、ビジネス利用も多い為落ち着きのあるグレー系の座席になり、A4サイズのノートパソコンを置けるテーブルを備えています。しかし座席のクッションが薄いため、30000形には座り心地は及びません・・・。
車内案内表示はフルカラーLEDによる2段表示で、デッキとの仕切り扉上に設置しています。4ヶ国語(日・英・中・韓)表示にも対応しており、近年急増する外国人利用者にも配慮されました。