京浜工業地帯の通勤路線として機能する鶴見線は2004年以来、山手線・埼京線からの転属車に先頭車化改造を施した205系1100番台3両編成により運転されて来ました。編成両数が奇数である為、中間車の改造や先頭車の電装化を行わない新系列電車の転用はできないことから後継車に注目が集まっていましたが、2023年7月23日に横浜支社からのプレスリリースでE131系(1000番台)を8編成24両新造し導入することが発表され、同年12月24日から営業運転を開始しました。国有化からJR東日本発足後以来、鶴見線は首都圏他線区からの転用車で賄われており、前身となる鶴見臨港鉄道以来実に80年振りの完全な新型車でもあります。
JR東日本の新系列電車はE231系以来、2950mm幅で裾を絞った車体を基本としていますが、鶴見線は車両限界が小さい箇所が点在することから2778mmのストレート車体で設計され、地下鉄乗り入れ対応車両のような外観になり正面は貫通式前面風のデザインですが、実際は非貫通全室運転台構造になっているのも特徴的です。カラーリングは海をイメージしたスカイブルーと、1980年の101系転入時より同線のラインカラーとされるイエローの構成で、正面のドット模様は過去に活躍した車両のカラーリングで歴史を表現しています。
国有化以降は長らく首都圏で使用された旧性能電車が配置され、平成に入ってからも17m車体に両運転台のクモハ12が大川支線用に残存するなど、工業地帯の特異な沿線環境から人気を集める一方で車両面は近代化から常に2〜3世代遅れている印象があった鶴見線ですが、今回のE131系登場で一気に若返りを果たしました。
ストレート車体であることに加えて久々にステンレス無塗装仕上げのドアが採用され、都営交通か私鉄の新型車のような印象を受ける車内。非貫通構造の乗務員室になっていることから仕切り扉も引き戸から通常の外開き式に改められています。使用する機会は殆ど無いと思いますが、他番台と共通化されている為か半自動ドア扱いを可能にしており、ドアボタンも備えられています。
車内案内表示装置は17インチ液晶画面を1台設置しており、表示内容は鶴見〜扇町間は赤、海芝浦支線は青、大川支線は黄色と色分けして表示されています。こちらも鶴見線では初採用の設備になりました。
鶴見線初の新型車として運用を開始したE131系は、これまでの形式と違い相当な長期間活躍することと思いきや、将来的には他線区に転用することを考慮して寒冷地での運用を想定した霜取りパンタグラフ増設の準備工事が実施されていることが明言されており、加えてJR東日本では2030年頃の実用化を目指して水素電車を開発中で鶴見線と南武支線で試験を繰り返している点からも、実用化が決まればこの2線区に導入することを想定しているように思われ、E131系の活躍は意外にそれほど長くないのかも知れません。