1991年3月19日より東京都心部・神奈川県横浜市からの成田空港アクセス列車として新設された特急成田エクスプレスでは長らく同列車専用に開発された253系電車が充当され、順調に利用者が増加していました。一方で目的地の成田空港では2005年よりB滑走路延伸で大型旅客機の離着陸回数増加を目論み工事に着手、2010年度完成との方針を打ち出し更なる空港利用者の増加が見込まれることとなります。これを受け、古くから東京都心〜成田空港アクセスを担い成田エクスプレスとは競合関係にある京成電鉄の特急スカイライナーには新型車導入の構想が持ち上がり、加えて北総鉄道を経由し空港に乗り入れる新線(京成成田スカイアクセス線)も2010年開通に向けて動き出しました。これらの動きからJR東日本も253系に代わる新型車両の導入を決定し2009年10月1日より2代目となるE259系の運転を開始しました。
都心に向けて総武本線の複々線区間を快走するE259系。JR東日本の特急型電車ではお馴染みのアルミ合金製車体ですが、溶接箇所を削減するなど更なる改良が施されています。東京駅で横浜方面と副都心の新宿方面からの列車を分割併合する運用に対応する為、先頭車は貫通扉と自動幌装置を備えており、先代の253系では連結しても通り抜けできない構造でしたが本系列では通路が構成され編成間の通り抜けを可能にしています。運転を開始した2009年には財団法人産業デザイン振興会よりグッドデザイン賞が、翌年には鉄道友の会よりブルーリボン賞、2011年にはブルネル賞(鉄道唯一の国際デザインコンペティション)をそれぞれ受賞しました。
空港アクセス用に登場したE259系ですが、臨時列車への起用もされるようになり2012年12月の週末から2020年3月8日まで空港輸送とは関連しない東京〜伊豆急下田間の臨時特急マリンエクスプレス踊り子号での運用の他、2014年7月26日から土休日に限り定期成田エクスプレスを延長する形で富士急行線河口湖まで運転したこともあり、こちらは2019年3月ダイヤ改正時の「富士回遊」新設に伴い終了しました。この為、臨時ではありますが伊豆急行線・富士急行線の2社の私鉄路線に乗り入れた実績があります。またユニークな点では新型コロナウイルス流行に伴うテレワーク増加で、両国駅3番線ホームに本系列を留置し車内テレワークの実証実験にも用いられました。
普通車車内設備。海外からの観光客も多く利用するため、情報案内の充実を図るべく17インチ液晶画面による車内案内表示器を天井にも設置しました。この為に天井高さは床面から2305mmを確保しており、開放感のある室内空間となっています。
グリーン車車内。座席を本革製とし、跳ね上げ式フットレストを設けて普通車と差別化を図っています。先代253系ではコンパートメントが設置されていましたが、E259系では解放型客室とされました。
長らく空港アクセスに特化していた成田エクスプレスですが、2022年3月12日より日中時間帯も千葉に停車するようになり、また2023年3月24日にはE259系の塗装デザイン変更が発表され、新塗装のコンセプトに空港アクセスに限らない多様な都市間輸送特急との記述があり、今後は成田エクスプレス以外の列車の充当を示唆する動きを見せています。今後の他路線への進出に期待ですね。