2006(平成18)年より導入されるようになった新常磐交通の元小田急車両ですが、当初は富士重工17型E(通称7E)ボディー+いすゞ自動車製シャーシのU-LV324Lと高出力エンジン搭載のU-LV318Lが移籍し非冷房モノコック車を置き換え大幅なサービス向上に貢献しました。その後は大型ノンステップバスのいすゞエルガとその中型車であるエルガミオ、更に導入例が無かった三菱ふそうノンステップ車も加わり全国でも類を見ない程に小田急車が勢力を誇っていました。しかし、小田急バスの方針転換で置き換えサイクルが17年程度に伸びた為、廃車のペースが緩くなり現在は都営バスからの移籍車も幅を利かせるようになり、元小田急バスの7Eボディー車の廃車が進められています。今回は、福島県いわき市に鎮座する金刀比羅神社の例大祭に伴い運行される湯本駅〜21世紀の森公園間シャトルバス運用に就く元小田急7Eの姿を捉えました。
新常磐交通の中でも異彩を放つニューステップ仕様のいわき200か243。こちらも元は武蔵境に在籍していたC8168です。1995年式で、前扉〜中扉付近までをワンステップ仕様とし、中扉はグライドスライド方式で可動式ステップ(現在は機能停止)を搭載するなど、小田急バスの低床化・バリアフリー化の先駆車とも言える存在でした。
元小田急バス7Eの中では唯一福島ナンバーとなっている福島200か914。小田急時代はC8162(元武蔵境車)でした。北営業所原町車庫に在籍していましたが東日本大震災の影響で原町車庫が閉鎖された関係で、いわき中央営業所に転属し、いわき市内の路線に充当されるようになりました。
湯本駅から戻って来たいわき200か243を非公式側から。反対側から見ると通常のツーステップ仕様車と特に変わりはありません。駐停車中に自動でエンジンを停止させるアイドリングストップ機構も本車が最初で、小田急時代はリア窓に「環境に優しいアイドリングストップバス」の文言が表記されていました。特殊な機構が嫌われたのか、このタイプは移籍が少数に留まり、西日本に偏っており(高出力仕様車の旧生田・町田車が九州産交バス・松江市交通局への移籍例があるのみ)東日本で現存する唯一の事例です。本来は定期路線バスが走らない区間で撮影出来たのは大きな収穫になりました。
中扉までをワンステップエリアとした独特な車内設備。小田急在籍時は中扉の窓と正面にハートマークと家族のシルエットのイラストに「乗り降りが楽なニューステップバス・環境に優しいアイドリングストップバス」と表記した円形ステッカーが貼られ、乗客にもアピールしていました。
登場から28年目に入り、既にメーカーによるアフターケアが打ち切られた現在も、こうした特殊な車両が稼働しているのは奇跡的なことですが、いよいよその活躍も最終ステージに入ろうとしています。恐らく自社発注車とは違い保存されることは無いと思いますが、乗ることも見ることも出来なくなる前に記録・乗車を楽しんでおきたいですね。