町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

新生西武グループの旗手・スマイルトレイン30000系

2021年05月12日 | 西武鉄道

新宿線・池袋線の101系初期車置き換えは20000系により進められましたが、高運転台で正面形状を変更した通称新101系と301系は引き続き多数が残存し運用を継続していました。これらを完全に置き換えるべく2005年には30000系の開発計画が動き出しますが、当時の西武鉄道は堤家による同族経営時代だった2004年に発生した総会屋利益供与事件・証券取引法違反事件による株式上場廃止を受け、グループ再編と経営再建の最中であった為に生まれ変わった西武のシンボルと位置付けられ「Smile Train〜人にやさしく、みんなの笑顔をつくり出す車両〜」として今まで保守的で合理性重視だった西武通勤車のイメージから一転、極めて斬新な意匠の車両になりました。

新宿線で運用中の38110F。「生みたてのたまご」をモチーフに曲線を多用したデザインで、地下鉄直通を想定しない地上専用車として設計されている為、正面は非貫通の異形ガラスによる1枚窓構成で西武鉄道では初めて2930ミリの幅広で裾を絞った車体になりました。スマイルトレインの愛称通り、丸型の前照灯や連結器周りの切り欠きと相俟って笑顔のような独特のスタイルが印象的です。全車両が日立製作所製で、標準車両A-trainの一員でもあります。

池袋線急行で運用される38114F。同線の急行は10両編成での運転の為、飯能寄りに2両編成を増結しています。16次車までは8両編成と池袋線のみに配置される増結用2両編成で増備されましたが、一部機器の見直しを行なった7次車からは10両固定編成も加わり、3種類の編成が存在します。

横幅が広がり従来車よりも余裕のある空間になった車内。30000系の車内デザインは鉄道車両では珍しく女性社員のみで担当しており、東京メトロ10000系や東葉高速鉄道2000系、JR東日本E233系を参考にしている事が公式で明かされており、強化ガラス製妻面貫通扉や天井周り、スタンションポールに各形式の要素が見受けられます。吊り手も卵をモチーフにした専用品で、本形式の為に新規開発されました。

ドア上に配置される車内案内表示は、これまた西武初の液晶画面で15インチサイズを2台配置しました。現在は1〜6次車を対象に写真の左右一体型ワイド液晶画面への換装が進行しています。

今までは西武鉄道=黄色い電車のイメージでしたが、6000系・20000系で無彩色に青帯を経て30000系で「都市と自然あふれる街並みを結ぶ車両」を表現した青と緑のグラデーションになり現在も増備中の地下鉄対応40000系にも踏襲されました。今後開発される新形式もこの流れを汲むと思いますが、今後も西武の新しいイメージを作り上げた画期的車両として長く親しまれて行くでしょう。

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民鉄初の日立製標準車両A-train、西武鉄道20000系

2021年05月10日 | 西武鉄道

1996年より地下鉄直通用の6000系の車体が更なる軽量化を目指してステンレスからアルミに設計変更され、それらの実績から西武鉄道の新形式はアルミ車体を採用する方向性が定まりました。そして当時多数が残存していた101系初期車置き換えと池袋線中村橋〜練馬高野台間の複々線化完成に伴う列車増発で自社線専用の通勤車両を計画する事になり、1999年より20000系が登場しました。

設計に当たり「シンプル&クリーン」のコンセプトを掲げた本形式は日立製作所が開発した次世代アルミ合金車両システム・A-trainに基づいて製造された車両で、これは199910月に登場したJR九州815系に次いで2例目、民鉄では初の採用でした。特徴的な前頭部は普通鋼製で構体とは別に製造し後にボルトで結合する構造ですが、この工法は2004年登場の東武50000系グループにも同様の手法が用いられています。

10両編成では通常の密着式連結器を装着していますが、8両編成では20152F以降奥に引っ込んだタイプ(20151Fは通常仕様にカバーを被せている)になりました。これは先頭車全長が若干長くなっている為、ホーム有効長がギリギリの駅に停車した際尖った部分が踏切にはみ出さないようにする為の措置で、先頭車の外観から編成両数を見分けるポイントでもあります。2019年より前照灯のLED化が開始され印象が変わりましたが、現在は全編成に波及しました。

白い化粧板に青い座席の組み合わせで清潔感のある車内。片持ち式座席は初採用になりました。写真は1次車の車内ですが、4次車から7人掛け部分を3-4で仕切るスタンションポールを設置、5次車からは更に内装が見直され、ポールを2本に増設の上で袖仕切りを大型化するなど、バリアフリー面の充実が年度毎に図られています。

車内案内表示装置はオーソドックスなLED1段表示で、全ドア上に設置されチャイムも併設されています。

近年は銀河鉄道999列車や埼玉西武ライオンズラッピング車L-trainに起用されるなど、華やかな役回りが多く注目された20000系ですが、登場に至るまでの背景はなかなか画期的で、日本のみならず海外にも勢力を拡大する日立製標準車両の嚆矢的存在でもありました。今後も長く活躍すると思いますが、経年20年を超えつつある今は最新形式に準じたリニューアルにも期待したいですね。

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首都圏地下鉄ネットワークの新鋭・東京メトロ17000系

2021年05月08日 | 首都圏の地下鉄

有楽町線・副都心線では経年40年を超える7000系が主力として運用されており、後継車の導入が注目されていましたが20191111日に17000系の概要と導入計画が発表され、本格的な置き換えが開始される事になりました。運用範囲が広い為、20201月の落成後は試運転と乗務員訓練を行い営業運転は約1年後の2021221日から開始し、現在は有楽町線と副都心線の全区間と相互直通運用にも充当されています。

Fライナー特急で東急東横線を走行する17101F2006年登場の10000系の流れを汲んでいますが、曲線を多用し丸型のライトケースで独自性を持たせた柔和なデザインとしています。側面帯はゴールデンイエローにブラウンの細帯で、配置が変わった事から印象が変化しました。10両編成は日立製作所、8両編成は近畿車輛と編成でメーカーが分かれているのも特徴です。

有楽町線直通準急で西武池袋線内の複々線区間を快走する17102F。10両編成は既に所定の6本が出揃っています。営業運転を目前に控えた2020101日には日立製作所と共同でグッドデザイン賞を受賞する栄誉を授かりました。

強化ガラスを多用して地下区間でも開放感のある空間を目指した車内。配色は有楽町線と副都心線のラインカラーに同調させたデザインで、座席のイエローやブラウンの吊り手が特徴的です。

車内案内表示はオーソドックスな17インチ液晶画面で、防犯カメラも併設されています。銀座線や日比谷線では3画面の大型ディスプレイになった為、採用されなかったのは少々意外でした。

今後は8両編成15本が近畿車輛で製造される事になっており、2022年までに7000系の置き換えを完了させる予定です。昭和から令和まで、長い間見慣れた車両がまた姿を消すことになり、新時代の始まりを実感させられます。

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ウォーターフロントを駆ける新鋭・東京モノレール10000形

2021年05月06日 | 首都圏のモノレール・新交通システム

東京モノレールでは1990年代初頭まで10年前後の短いスパンで車両置き換えを実施して来ましたが、1000形からは長期間の使用が見込まれるようになり、1997年に20003編成が登場して以降は、車体の塗装変更(1000形のみ)やワンマン化、ホームドア対応などの改造が行われる以外に大きな変化はありませんでした。しかし開通から50周年を迎える2014年、国際化が進む羽田空港や2回目の東京オリンピック開催決定も踏まえて、日本の玄関口に相応しい車両を目指した新形式10000形が導入され、新風を巻き起こしました。

車体は2000形と同様にアルミ製ですが、車両情報制御装置など大幅に増加した機器を搭載しつつ軸重制限をクリアする為、シングルスキンとダブルスキンを併用したハイブリッド構体が新規に開発されています。また従来は塗装仕上げだった車体も、10000形では無塗装ヘアライン仕上げで沿線に広がる空・海・緑をモチーフにしたカラーフィルムを貼る方式で保守の軽減も図りました。

このアングルからは確認出来ませんが、沿線の高層ビルから見下ろされる事を意識して屋根上にも東京モノレールのロゴを入れるなど、沿線環境をイメージしたカラーリングと共に様々な角度から楽しめるデザイン意識しているのも特徴です。

日立製作所のA-train技術で製造された鉄道車両との共通性が伺える車内。ロングシートを主体にした2000形に近い設備で、荷物置き場を新設し旅行客の利便性を向上させました。海外からの観光客の増加を受けて和のおもてなしをテーマに掲げており、青海波の座席モケットに和紙柄の照明カバー、車端部座席の市松模様入り袖仕切り、また貫通扉のアイコンには富士山や五重塔など日本の象徴的なデザインを多用しています。

車内案内表示は17インチワイド液晶画面で、2画面分のスペースがありますが片側は準備工事状態です。下部には扉開閉表示灯が設置されており、一般的な開閉時の点滅の他に青色で開く扉の方向を予告する珍しい機能が備わっています。

今後も順次増備が予定されており2021年は2月17日に10081Fが導入されました。導入に先立ち1001Fが1月5日で運用離脱し廃車になっており、ペースは緩やかですが今後も置き換えを進めて行く見込みです。

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房総半島の主力車・209系2100(2000)番台

2021年05月04日 | JR東日本

新系列電車の始祖である209系は発祥路線である京浜東北線へのE2331000番台導入により2007年から置き換えが開始され、運用終了後は順次廃車される予定でしたが、老朽化が進行していた房総半島各線の113系置き換えに充当される事になり、電気式戸閉装置を搭載する後期車を中心に324両が4両編成42本、6両編成26本に組成され2009年〜2013年に掛けて転入しました。現在は一部線区のワンマン化で撤退した区間もありますが、千葉以東の路線で広範囲に運用されています。

4両編成2本を連結した8両で運用中の編成。転用に当たっては分割併合運用が存在する為、自動分併装置の新設と尖った形状のスカートに換装されています。またVVVFインバーター制御装置・制御伝送装置の更新や中間車モハ208への車椅子対応大型トイレの設置など大規模な改造を施行されました。戸閉機構の違いで、2000番台(1・2次車ベース、空気式戸閉装置)・2100番台(3次車以降ベース・電気式戸閉装置)で分けられています。

両側の先頭車が川崎重工業のマリC427編成先頭の8両。近年は内房線・外房線の末端区間ワンマン化でこのような運用が増加しています。6両編成は単純に種車の10両から付随のサハを抜いた構成ですが、4両編成は別々の編成の車両を組み合わせているものが多く、写真のように川崎重工業の先頭車と東急車輛(新津車両製作所)の中間車の編成が見られ、窓枠の形状で判別できます。なお川崎重工業の車両は一部の先頭車のみが活用され、中間車は全て廃車になりました。

京浜東北線時代の面影を色濃く残しているロングシートの車内。冬季や夏季の長時間停車を考慮してドア3/4閉機能を追加しており、1箇所を除いて閉める事が出来る様になっています。

長時間の乗車を考慮して先頭車はセミクロスシート化されました。モケットはE231500番台のような緑系で、座り心地が改善されています。

2013年の113系置き換え完了後は安定した活躍が続いていましたが、京浜東北線・横浜線のワンマン化に伴う新形式投入により捻出されるE233系で房総各線の209系を置き換える計画が明らかになり、2024年以降に着手する事が決定しました。現時点でも内房線・外房線末端区間と鹿島線のワンマン化によるE131系運転開始で6両編成の4両化と余剰廃車が発生しており、平成世代の新系列電車の終焉もいよいよ見えて来たようです。

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