今週は多くの方々が3連休ですので、もう1つ、「休日のバッハ」をご紹介します。
カンタータ第122番(新たに生まれしみどりご)の第4曲より、コラール(アルト)付きのソプラノとテノールとの二重唱という、少々珍しい曲です。
小林英夫氏の対訳は以下の通り。
-神は人間と和解し、私たちの友となった、
おお、何と幸いなことか、神を信じる私たちは。
-邪悪な敵とて私たちに対して何ができよう、
いくら怒っても私たちから慰めを奪えはしない。
-悪魔も地獄の門も何するものぞ、
彼らがいかに猛り狂っても無駄なこと。
-幼いイエスが私たちの盾となったのだから、
神は私たちとともにおられ、私たちを守っている。
アルトのコラールが先導し、ソプラノとテノールの二重唱が展開されていくこの曲が示唆するものの1つが、いわゆる「三位一体」ですね。バッハの曲には、様々な数字が意味を持っており、それが暗喩としても用いられていることはよく知られた事実です。
宇宙生命的なものの何かを、シンプルな数字で背景描写として用いるその手法はバッハならではのものですが、バッハは、例えばフーガの技法において、最初にモチーフとなるメロディを持ってきて、その後そのメロディを多様な形へと変貌させ展開することを、彼の生の最後にあえて挑戦しております。しかし、音楽そのものは実に硬質でシンプルな形態をしております。そのため、このフーガの技法は、筆者もなかなかなじめない難解な曲として知られております。
なぜ、バッハはこのような曲に死を目前にしてたどり着いたのか?
そこには死とは逆の、人間の生誕以前の胎内での光景が逆照射されているようにも思えるのです。脊椎動物の胚の形成についての「ベーアの法則」をご存じでしょうか?多分、学校の教科書でどなたもご覧になったと思います。脊椎動物の胚が、4週、5週、8週と進むにつれ、段々と一般性から特殊性へと発達することを示した法則です。
4週では、サカナ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ウサギの胚とヒトの胚の形は、驚くべきことにほとんど同じです。これが、8週になると明確にそれと分かるようになります。まさしく一般性が特殊性に先立って発達するのが、我々人間を含む脊椎動物の胚の発達の大原則なのです。
ということは、この宇宙の法則からすると、誕生前とは逆の、死に入る過程においては、特殊性から一般性へと回帰すると言えるのかも知れません。それを音楽で示したのが、自身の生の波乱多い特殊性から、死の直前に究極の一般性へと回帰していく様を描いたフーガの技法という難解な音楽ではないかと思えるほどです。ちなみに、バッハはこの曲を完成させることなく死に、最後はBACHという音符で終わっております。
人の死も、結局はこの宇宙の構成元素に単純化された「灰」に帰結します。あの複雑でそれぞれが持っていた個性はみじんもなく、熱力学第二法則、エントロピーの増大の法則に従って無秩序な一般性へと収束します。
そのようなことに思いを至らせてくれるのもバッハの音楽ですね。
いつものようにここをクリックして、ウィンドウズ・メディア・プレイヤーでお聴き下さい。期間限定の公開です。
インターネットディスクの変更中です。しばらくの間はクリックしてもお聴きになれません。
カンタータ第122番(新たに生まれしみどりご)の第4曲より、コラール(アルト)付きのソプラノとテノールとの二重唱という、少々珍しい曲です。
小林英夫氏の対訳は以下の通り。
-神は人間と和解し、私たちの友となった、
おお、何と幸いなことか、神を信じる私たちは。
-邪悪な敵とて私たちに対して何ができよう、
いくら怒っても私たちから慰めを奪えはしない。
-悪魔も地獄の門も何するものぞ、
彼らがいかに猛り狂っても無駄なこと。
-幼いイエスが私たちの盾となったのだから、
神は私たちとともにおられ、私たちを守っている。
アルトのコラールが先導し、ソプラノとテノールの二重唱が展開されていくこの曲が示唆するものの1つが、いわゆる「三位一体」ですね。バッハの曲には、様々な数字が意味を持っており、それが暗喩としても用いられていることはよく知られた事実です。
宇宙生命的なものの何かを、シンプルな数字で背景描写として用いるその手法はバッハならではのものですが、バッハは、例えばフーガの技法において、最初にモチーフとなるメロディを持ってきて、その後そのメロディを多様な形へと変貌させ展開することを、彼の生の最後にあえて挑戦しております。しかし、音楽そのものは実に硬質でシンプルな形態をしております。そのため、このフーガの技法は、筆者もなかなかなじめない難解な曲として知られております。
なぜ、バッハはこのような曲に死を目前にしてたどり着いたのか?
そこには死とは逆の、人間の生誕以前の胎内での光景が逆照射されているようにも思えるのです。脊椎動物の胚の形成についての「ベーアの法則」をご存じでしょうか?多分、学校の教科書でどなたもご覧になったと思います。脊椎動物の胚が、4週、5週、8週と進むにつれ、段々と一般性から特殊性へと発達することを示した法則です。
4週では、サカナ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ウサギの胚とヒトの胚の形は、驚くべきことにほとんど同じです。これが、8週になると明確にそれと分かるようになります。まさしく一般性が特殊性に先立って発達するのが、我々人間を含む脊椎動物の胚の発達の大原則なのです。
ということは、この宇宙の法則からすると、誕生前とは逆の、死に入る過程においては、特殊性から一般性へと回帰すると言えるのかも知れません。それを音楽で示したのが、自身の生の波乱多い特殊性から、死の直前に究極の一般性へと回帰していく様を描いたフーガの技法という難解な音楽ではないかと思えるほどです。ちなみに、バッハはこの曲を完成させることなく死に、最後はBACHという音符で終わっております。
人の死も、結局はこの宇宙の構成元素に単純化された「灰」に帰結します。あの複雑でそれぞれが持っていた個性はみじんもなく、熱力学第二法則、エントロピーの増大の法則に従って無秩序な一般性へと収束します。
そのようなことに思いを至らせてくれるのもバッハの音楽ですね。
いつものようにここをクリックして、ウィンドウズ・メディア・プレイヤーでお聴き下さい。期間限定の公開です。
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