さて、指板コーティング後、操作性が最高に良くなったとはいえ、胴体部分に今までよりも4mm厚のエポキシ樹脂を盛り上げた為に低音部の鳴りが悪くなった問題を解決しようと弦の太さを変える事にしました。
元々、私の場合、今の日本でスタンダードな6コース・ウードの調弦(1.C、2.G、3.D、4.A、5.G(↓) 、6.D(↓))ではなく、
エジプトで学んだ時のエジプト・スタンダードな調弦
(1.F、2.C、3.G、4.D、5.A、6.F(↓))だった為、
帰国後、1コースに張ってある高音域のF弦を日本で入手する事から始めなければなりませんでした。
運良く、お師匠様の常味さんが既に様々な弦を試されていた経験があったり、知り合いにクラシックギターのリペアを手掛けている人がいたりして、様々教えて頂きました。
今でこそ、Amazonでウード専用の弦を直接購入できる時代になりましたが、私がウードを学んで帰国した2005年あたりでは、クラシック・ギター専門店まで行って、様々な弦を購入して試行錯誤するしかありませんでした。
幸い、そのリペアをしている方から「ウードの弦長から言うと、アルト・ギター弦が合うと思うよ」というアドバイスが功を奏して、そこから Hanabach や D'Addario のアルト・ギター弦を使用することにし、そこから弦の探求が始まりました。
さて、2009年にお師匠様から7コース・ウードを譲り受けてから、更に弦の探求が深まりました。調弦は以下の通り。
(1.F、2.C、3.G、4.D、5.A、6.F(↓)7.C(↓))
この頃には、1コースから3コースまで、釣り糸のフロロカーボンを使用し、4コースから7コースまでを様々な弦で試行錯誤しました。
家の近くにあるギター専門店が Hanabach のアルト・ギター弦をはじめ、多くの種類の弦を扱っていた為、Hanabach の青、緑、黄色、黒の弦を様々試してみた結果、結局、Hanabach の黒で統一することにしました。
そして、2015年、オーダーメイドで購入したトルコのVeysel Music 社のウードは今まで使っていたエジプト製の7コース・ウードより鳴りが良い半面、7コース目の C の音がHanabach の黒の6弦では何となく「か細い」感じがして、結局、Hanabach のバロック式10弦ギター用弦のD7弦を使う事にしました。
これがピタリ!と当て嵌まっていましたが…。
今回の樹脂コーティングで、この太い7弦でさえ「か細い」感じです。6コースも同じくボディを鳴らし切れてない感じ。それもそうで、良く見たら、このウード、低音側のボディが正中線から測ってみて少し幅が狭く、左右非対称でした。
このウード、高音部がキラキラ光る感じで、割と細い弦でも鳴るのは、高音部側のボディが大きかったからなんだ、と理由が分かった訳ですが、それはそれとして、私は結構低音弦も、お師匠様の流派のごとくガンガン鳴らしたいタイプなので、低音弦をどうするか、試行錯誤してみる事にしました。
6コース目(F)は、Hanabach の青ラベルの5弦が良いようで、そこを基準としました。ちなみに5コース(A)はオーガスチンの青の4弦。一番消耗する為に手に入りやすい物にしています。
そして、問題の7コース弦ですが、まずは、以前購入した際、音が重すぎてお蔵入りした Aranjuez の10弦ギター用D7弦を使ってみる事に。
…、ボディを鳴らすという意味では悪くはないが、なんかヤッパリ重いというか、重厚過ぎて、最終選択肢とはちょっと言えない感じ。
で、結局、Hanabach の10弦ギター用C8弦を使ってみたら、これが他の弦との響きとの相性があってピッタリでした!
ヤッパリ真鍮製の巻弦か銀メッキ性の銅の巻弦かの違いなのでしょうね。
最近は、1~4コースまでフロロカーボンのハリスを使用している為、巻弦部分も、キラキラと倍音が鳴って、なおかつ、軽やかで鋭い音でないと、ちょっとアンバランスさが出てくるので、Hanabach は最適な選択肢でした。
ともあれ、指板の改造以降、自分の楽器にストレスを感じることなく演奏できていることを思うと、今までは一体なんでそんな苦行をしていたのか、と思える位でw、
そういう意味でも、これらの弦で当分は演奏活動を進めていこうと思います。
参考までに私の7コース・ウードの弦は以下の通り。
1コースF、シーガーエース・グランドマックスFX4号
2コースC、ダイワ・ディーフロン8号
3コースG、ダイワ・ディーフロン12号
4コースD、ダイワ・ディーフロン26号
5コースA、AUGUSTINE青4弦、または、Hanabach 黒4弦
6コースF、Hanabach 青5弦
7コースC、Hanabach バロック式10弦用C8弦