ウード奏者 松尾 賢 のブログ(アラディーン主宰者)

ウード奏者、ダラブッカ奏者、サズ奏者、歌手、アラブ、トルコのオリエンタル音楽演奏家・作曲家である松尾賢のブログ。

ウードの弦巻部と弦高の調整作業

2019-01-20 23:16:58 | 音楽

新宿にあるトルコ文化センターでサズ講師を務めて、はや2年が経過し、3年目へ突入。始めた頃より生徒さんも増えました。

そして、その後、トルコ文化センターとは関係なく、ウードの生徒さんが出来ました。

今までは、自分のウードの演奏に対して、納得がいかなかった事もあり、師匠である常味さんへの尊敬も兼ねて、教える事を避けていましたが、2017年から取り組み始めたセカンド・アルバムのレコーディングを行う過程で、やっと自身のスタイルと技術の確立をしたと自負した事もあり、ウードを教えるという事も始めようと思った次第です。

さて、レッスン初日、その生徒さんが持参されたのは、エジプトの「Gawhalet El Fan」というメーカーのウードです。このメーカーは、世界的にもダラブッカのメーカーで知られていますが、ウードも作っています。(というか制作家から買い取っていると言った方が良いかな?)

そのウードは、ボディがとても良く出来ているのに、弦を巻くペグが粗悪なものを使っており、また前の持ち主が張ったであろう弦も適当なものを使っていた為、

私が使用している弦と交換し、ついでにペグの具合も調整しようと試みましたが、結局正しい調弦は出来ず仕舞いでした。

理由は、ペグが安い木でできたモノで、更にペグの穴が雑に空けられている為、調弦が安定しないからです。

(↓見るからに安い木に黒い塗料を塗っただけの粗悪なペグ。調弦が安定しません。)

結局、生徒さんがネットで黒檀製の良いペグを購入し、それを使いたいという意向だったので、弦高も含めてリペアをする事にしました。

(写真は、黒檀のペグ、木工パテ。丸刀(穴埋め用のヘラとして使います。)。切り出し刀はパテがはみ出た所を削るの使います。)

(ペグを外したウード。弦はテールピースにつけたままにしておきます。)

まず、黒檀製のペグは粗悪なペグに比べて、通常糸巻部の直径が小さい、つまり細く作られています。理由は、より正確な調弦を行う為ですが、案の定、元のペグ穴は、この黒檀のペグに対して大きすぎて使い物になりません。

そこで、木工用パテを使い穴を小さくし、数日於いて完全に乾かしてから調整。

ペグを挿してみて、きつすぎる所は丸ヤスリで少しづつ削って調整します。

これでも大きすぎて合わない所は再度埋め、乾かして調整を繰り返します。

ペグを挿してみた所。この時点では、綺麗にそろっていますが、実際に弦を張ってみると、それぞれのペグの不具合が判明します。ダメな所は再度パテ埋めして調整します。

その間、ナットと呼ぶ、指板と弦巻の間に置く駒の高さをサンドペーパーで削って低くします。が、この作業はとても根気が要る微妙な作業です。削りすぎるとアウト。

適度な弦高にするには何度も高さを確認する必要があります。

(写真:ペグに弦を巻き一度全部張ってから弦高を確かめてからナットの調節をすると良いです。)

(写真:この高さでも問題ない人もいますが、常味門下で使うナグナガと呼ばれるウネウネしたフレージングを行うには弦高を究極までに下げた方が良いのです。)

(サンドペーパー(粗目)を敷いて削ります。どうしても親指側の部分が先に削れるので、方向を変えながら丁寧に削って行きます。)

(ナットを外したところ。指板もチーク材を使用し結構厚めであるのが分かります。この辺りの作りは丁寧です。)

(はめて見て、弦を張り、高さをみて、削り、という根気のいる作業です。)

結果、弦高は素晴らしく満足いく高さになり、ペグも上手く調整でき、とても素晴らしいウードになりました。

ここで、再度ペグ穴の調整をします。大きすぎた所にパテを塗り、乾かします。

反対側が特に大きすぎるのでここにパテを盛り、一日以上置いて乾かしてペグをはめ込んで出来上がり。

パテがはみ出た所は精密ドライバーのマイナスの歯で削ると良い感じでとれます。

最終的な調整も完了し弦を張り直して完成。我ながら美しく仕上がりました。

こういった作業は、試行錯誤を繰り返して楽器を調整して来た長年の経験が必要であり、根気も入りますが、ある意味、ウードは自分で調整できる分、そのカスタマイズも楽しみの一つです。

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