親子だって夫婦だって、好き嫌いはそれぞれ違う。
性格だって癖だって、それから考え方だってそれぞれ違う。
けれど、長く一緒に住んでいると、ついつい、相手にも同じ物を好んで欲しかったり嫌って欲しかったりしてしまう。
先日の、旦那とTとわたしと三人だけだった日曜の夜、すごくお天気が良かったからか、「アイスクリームを食べに行こう!」と、急に旦那が言い出した。
普段は滅多にアイスクリームを食べない旦那だけど、機嫌のすこぶるいい日には突然こんなことを言い出すことがある。
わたしもTも、アイスクリームはあまり好んで食べないのだけど、付き合いで行ったろか……ぐらいのノリで同行する。
車の中で、それなりにいい感じの雰囲気で話していると、旦那が急に夏の海の家の話をし出した。
毎年夏に、旦那父がスポンサーになってくれて、ニュージャージの海辺やペンシルバニアの湖畔や特別な年はハワイなどに行って何日かを過ごすのがL家の恒例行事。
ところが、去年は初めて、父の仕事が忙し過ぎたためか、その行事はお流れになった。
そして今年、旦那は密かに、今度は子供達で費用を負担し合い、近場の海の家を借りて一同そこで過ごそうと企んでいるようだ。
「今年はうちとアードリィとで費用を分担して、夏のバケーションをしようかな」と旦那。
旦那弟のジムは最近アリゾナに拠点を移し、仕事も暮らしも心機一転、家族とともに生きる新しい世界を模索中なので、バケーションどころではない。
「けど、そうなったらそうなったで、TとKがどれだけ協力できるかが問題やな」とブツブツ言う旦那。
「問題ってなに?」
「TもKも、毎度あんまり協力的な態度じゃないから」
「協力的もなんも、俺はたったの2回しか行ってないし、そのうちの1回は食中毒で吐き倒してたやんか。他の1回はハワイで、あれは楽しんでたやんか」
「そんなことない。TやKはなにかにつけてダラダラしてて、積極的に外で遊ぼうとしないし、誘ってもウダウダして周りの人間をがっかりさせることが多かった」
「だから、そんな、積極的にしようにもしようが無かった時のことで説教されたくないねん!」
「たった2回のはずがない。もっと行ってるはずで、その他の時の態度が良く無かった」
「行ってないって言うてるやろ!」
確かに、TもKも、外遊びよりゲーム、という子供だった。
離婚したわたしに連れ出された幼い孫達に、なにか楽しいことをと考えたわたしの父が買い与えたゲームボーイが事の始まりだった。
TもKも夢中になって遊んだ。けれども、休みの日には、近場の公園に行って、外遊びもいっぱい楽しんだ。
小学校の高学年ぐらいまでは、ゲームの時間をどうやったら短くできるのか、それが親の我々の悩みの種だった。
ゲーム以外の、彼らに経験して欲しい事が、わたし達の思いの中には山ほどあった。
けれども、習い事に行かせてあげられるお金も無く、周りの男の子達のほとんどがテレビゲームに熱中していた。
中学生になった頃、Tがとうとうゲームから卒業した。
ゲームよりもっと楽しいことが見つかったし、電車やバスを乗り継いで行かなければならなかったので、時間も極端に制限された。
ところがKはその後も、勢いも情熱もなんら衰えることなく、持って生まれた勘や反射神経の良さなども加担してどんなゲームでもすぐにうまくできるので、ゲーム熱は下がらなかった。
ゲームを知らずに育ったわたしの世代、そしてもう一世代若い旦那も、ゲームというとアーケードにあるインベーダーゲームぐらいしか知らないまま大人になった。
しかも旦那は、ペンシルバニアの片田舎で育った、生粋の外遊びっ子。
なので、好んで家の中で遊ぶ男の子、というのが、どうしても根本的に理解できない、というか、好きではないのだと思う。
だから、L家の旦那姉、弟の間では、うちのTとKの、外遊び度に関しての評価がすこぶるよろしくない。
散歩してもだらだら、すぐに疲れただの、喉が渇いただのと文句を言う。
基本的に、外でのアクティビティに積極的ではない。
家の中でゲームをしたり漫画本を読んだり、座ったり寝転んだり、まるで猫のようじゃないか!
わたしもできれば、元気に外で走り回る息子達の姿を目で追いながら微笑んでいる母親、というのをたくさん経験したかったけれど、だからといって、TとKの時間の過ごし方をとやかく非難するつもりもない。
まあ、わたしも彼ら同様、家の中でずっと過ごしていてもご機嫌で、イライラしてくることもないタチだからだろうけれど。
Tは、旦那が嫌っている事柄をちゃんと理解している。
けれど、勘違いしていることで非難されたことは腹が立つので、そのことについては謝って欲しいと言う。
旦那は思いっきり無視している。そして絶対に謝らない。
よく運動する。よく身体を動かす。そうしないとすぐに身体が変になってイライラする。
そういうタイプの旦那からは、TやKやわたしの、なんともダラダラとしたでんでん虫的な行動が気に触って仕方が無い。
わたしも一昨年あたりから、やっと運動の大切さと意義を知ったので、旦那のそういう気持ちも少しはわかる。
でも、Tは高校で陸上を、大学ではウエイトリフティングを地道に毎日トレーニングしているので、種類は違うけれど、運動量は旦那のそれよりもはるかに多い。
旦那の頭の中には多分、ごろごろ寝転んで漫画を読みふけるか、テレビの前に陣取りコントローラーのボタンをカシャカシャ押しているTとKの姿が、今だに色濃く残っているのだろう。
それがたまに悪さして、彼の言葉の端々にトゲをつける。
もうとっくの昔に大きくなって、頼んだことはすぐにしてくれるし、歩くのもシャキシャキしているし、それぞれにしっかりしているのにね。
子育て真っ最中の親にとって、子供が自分の好む行動をしてくれなかったり言葉を発してくれなかったりすると、それが小さな事であれ結構がっかりするもんだけど、
愛だよね~愛!それでもめちゃくちゃ好っきゃで~の気持ちが、負の気持ちのほとんどをうまく包んでくれる。
家族だからって、なにも保証してくれない。なにも助けてくれない。
好き嫌いはあっても、なにかと衝突したり喧嘩したりしても、そうやって結局はお互いに認め合ったり許し合ったり、時にはいい意味で無視できたりすればいい。
旦那とTは、あの後丸一日、ちょっとぎくしゃくしていた。
まあ、いつか思い出してまた笑おう。
性格だって癖だって、それから考え方だってそれぞれ違う。
けれど、長く一緒に住んでいると、ついつい、相手にも同じ物を好んで欲しかったり嫌って欲しかったりしてしまう。
先日の、旦那とTとわたしと三人だけだった日曜の夜、すごくお天気が良かったからか、「アイスクリームを食べに行こう!」と、急に旦那が言い出した。
普段は滅多にアイスクリームを食べない旦那だけど、機嫌のすこぶるいい日には突然こんなことを言い出すことがある。
わたしもTも、アイスクリームはあまり好んで食べないのだけど、付き合いで行ったろか……ぐらいのノリで同行する。
車の中で、それなりにいい感じの雰囲気で話していると、旦那が急に夏の海の家の話をし出した。
毎年夏に、旦那父がスポンサーになってくれて、ニュージャージの海辺やペンシルバニアの湖畔や特別な年はハワイなどに行って何日かを過ごすのがL家の恒例行事。
ところが、去年は初めて、父の仕事が忙し過ぎたためか、その行事はお流れになった。
そして今年、旦那は密かに、今度は子供達で費用を負担し合い、近場の海の家を借りて一同そこで過ごそうと企んでいるようだ。
「今年はうちとアードリィとで費用を分担して、夏のバケーションをしようかな」と旦那。
旦那弟のジムは最近アリゾナに拠点を移し、仕事も暮らしも心機一転、家族とともに生きる新しい世界を模索中なので、バケーションどころではない。
「けど、そうなったらそうなったで、TとKがどれだけ協力できるかが問題やな」とブツブツ言う旦那。
「問題ってなに?」
「TもKも、毎度あんまり協力的な態度じゃないから」
「協力的もなんも、俺はたったの2回しか行ってないし、そのうちの1回は食中毒で吐き倒してたやんか。他の1回はハワイで、あれは楽しんでたやんか」
「そんなことない。TやKはなにかにつけてダラダラしてて、積極的に外で遊ぼうとしないし、誘ってもウダウダして周りの人間をがっかりさせることが多かった」
「だから、そんな、積極的にしようにもしようが無かった時のことで説教されたくないねん!」
「たった2回のはずがない。もっと行ってるはずで、その他の時の態度が良く無かった」
「行ってないって言うてるやろ!」
確かに、TもKも、外遊びよりゲーム、という子供だった。
離婚したわたしに連れ出された幼い孫達に、なにか楽しいことをと考えたわたしの父が買い与えたゲームボーイが事の始まりだった。
TもKも夢中になって遊んだ。けれども、休みの日には、近場の公園に行って、外遊びもいっぱい楽しんだ。
小学校の高学年ぐらいまでは、ゲームの時間をどうやったら短くできるのか、それが親の我々の悩みの種だった。
ゲーム以外の、彼らに経験して欲しい事が、わたし達の思いの中には山ほどあった。
けれども、習い事に行かせてあげられるお金も無く、周りの男の子達のほとんどがテレビゲームに熱中していた。
中学生になった頃、Tがとうとうゲームから卒業した。
ゲームよりもっと楽しいことが見つかったし、電車やバスを乗り継いで行かなければならなかったので、時間も極端に制限された。
ところがKはその後も、勢いも情熱もなんら衰えることなく、持って生まれた勘や反射神経の良さなども加担してどんなゲームでもすぐにうまくできるので、ゲーム熱は下がらなかった。
ゲームを知らずに育ったわたしの世代、そしてもう一世代若い旦那も、ゲームというとアーケードにあるインベーダーゲームぐらいしか知らないまま大人になった。
しかも旦那は、ペンシルバニアの片田舎で育った、生粋の外遊びっ子。
なので、好んで家の中で遊ぶ男の子、というのが、どうしても根本的に理解できない、というか、好きではないのだと思う。
だから、L家の旦那姉、弟の間では、うちのTとKの、外遊び度に関しての評価がすこぶるよろしくない。
散歩してもだらだら、すぐに疲れただの、喉が渇いただのと文句を言う。
基本的に、外でのアクティビティに積極的ではない。
家の中でゲームをしたり漫画本を読んだり、座ったり寝転んだり、まるで猫のようじゃないか!
わたしもできれば、元気に外で走り回る息子達の姿を目で追いながら微笑んでいる母親、というのをたくさん経験したかったけれど、だからといって、TとKの時間の過ごし方をとやかく非難するつもりもない。
まあ、わたしも彼ら同様、家の中でずっと過ごしていてもご機嫌で、イライラしてくることもないタチだからだろうけれど。
Tは、旦那が嫌っている事柄をちゃんと理解している。
けれど、勘違いしていることで非難されたことは腹が立つので、そのことについては謝って欲しいと言う。
旦那は思いっきり無視している。そして絶対に謝らない。
よく運動する。よく身体を動かす。そうしないとすぐに身体が変になってイライラする。
そういうタイプの旦那からは、TやKやわたしの、なんともダラダラとしたでんでん虫的な行動が気に触って仕方が無い。
わたしも一昨年あたりから、やっと運動の大切さと意義を知ったので、旦那のそういう気持ちも少しはわかる。
でも、Tは高校で陸上を、大学ではウエイトリフティングを地道に毎日トレーニングしているので、種類は違うけれど、運動量は旦那のそれよりもはるかに多い。
旦那の頭の中には多分、ごろごろ寝転んで漫画を読みふけるか、テレビの前に陣取りコントローラーのボタンをカシャカシャ押しているTとKの姿が、今だに色濃く残っているのだろう。
それがたまに悪さして、彼の言葉の端々にトゲをつける。
もうとっくの昔に大きくなって、頼んだことはすぐにしてくれるし、歩くのもシャキシャキしているし、それぞれにしっかりしているのにね。
子育て真っ最中の親にとって、子供が自分の好む行動をしてくれなかったり言葉を発してくれなかったりすると、それが小さな事であれ結構がっかりするもんだけど、
愛だよね~愛!それでもめちゃくちゃ好っきゃで~の気持ちが、負の気持ちのほとんどをうまく包んでくれる。
家族だからって、なにも保証してくれない。なにも助けてくれない。
好き嫌いはあっても、なにかと衝突したり喧嘩したりしても、そうやって結局はお互いに認め合ったり許し合ったり、時にはいい意味で無視できたりすればいい。
旦那とTは、あの後丸一日、ちょっとぎくしゃくしていた。
まあ、いつか思い出してまた笑おう。