ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

『まうみ爆弾』落ちるの巻

2010年05月10日 | 音楽とわたし
毎回、コンサートが近づいた頃に必ず一回、キレてしまいます。
誰にって?
それは、伴奏を担当している高校の生徒達にです。

今週に入っていよいよ近づいてきたコンサート本番。
リハーサルも毎日、朝から昼の2時半頃までぎっしり。
コーラスのグループは4つあって、高校生はそれぞれのグループで歌っていればいいけど、
指導者&指揮者のダリルと伴奏者のわたしはそういうわけにはいきません。
わたしは計15曲、ダリルはコーラスの他にミュージカル、キーボードなど、他の舞台の指導もしなければなりません。

舞台慣れするために、本番と同じ照明をつけ、舞台の上で歌います。
そうなると、いつもはすぐにチョケる子達も、それなりに態度を整えます。
ところが、それでも普段と同じようにダレる子もいます。
そして、そういう子供は、すぐに座りたがります。
今日も1曲終わっては座り、他のパートをダリルが注意しているとまた座り、
とうとう、わたしがイントロを弾き始めているのに、3人のアルトパートの女の子達が当たり前のような顔をして座っていました。

イントロの途中で、ダリルの指揮も無視して、わたしはピアノを弾くのをやめました。

「そこの3人、立ちなさい!」

ピアノが急に止まっただけでなく、わたしが大きな声で怒鳴ったので、みんな凍りついたように止まってしまいました。
「ダリルが手を振り下ろして、わたしがピアノを弾き始めているんだよ!心を込めて、みんなが歌い易いように、音楽を楽しんでもらえるように弾いているんだよ!そしてそれはもう、あなた達も演奏に入っているってことなんだよ!それを無視して座ってるなんて……本番はもうすぐなのに……年相応の責任のある態度をとりなさい!ちょっとそこ、楽譜を下ろして!顔を隠さない!声が通らないじゃないの!」

「あ~あ、まうみを怒らしちゃったよ」とダリル。

わたしはアシスタントではないし、雇われて通っているだけのピアノ弾きなので、本来はこんなふうに生徒を嗜めたりする立場ではありません。
だから、できるだけ普段は言いたいことがあっても抑えています。
けれども、たま~に一発落とす爆弾は、生徒達だけでなく、ダリルの気分転換にもなるようです。

「今日の彼女達の態度、すまなかった」
別れ際にそう言われて、「ダリルが謝ることじゃないよ。立場を超えてしまってごめんなさい」とこちらも謝りました。
でも、ダリルもわたしも、彼らが本気で歌った時のすばらしい響きを知っている者として、たった一回しかない舞台のチャンスを逃がして欲しくないのです。
「あと3日、お互いしんどいけど、いい音楽会になるよう頑張るしかないね」と、励まし合いながら別れました。

コメント (10)
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