肋骨さわぎでくたばってる間に、きーこさんが早業で文字起こししてくれてはりました。
いつものごとく、ものすごい量やけど、それを打ち直させてもらいました。
わたしが憲法を学ぶにあたり、大いに助けてくださった伊藤真所長による、めちゃわかりやすい憲法のお話です。
2回に分けて載せさせてもらいます。
↓以下、転載はじめ
1ー憲法と法律の違いはなに? 5/3報道するラジオ 伊藤真弁護士(文字起こし)
安倍総理は事あるごとに、憲法改憲をアピールする。
だけど、9条を改正して戦争が出来る国になったり、徴兵制になったりしたらとても怖い。
私が信頼している方々は皆、改憲には反対しているし……。
その位の知識で、私は漠然と、憲法は変えない方がいいと思っていた。
でも、憲法は古いし、敗戦後他国が作ったものだし、
テレビで何度も流れる領土問題。
韓国や中国とかが攻めてきても、アメリカは助けてくれないだろうし、
北朝鮮はミサイルを打ってくるかもしれないし、
日本はあっという間に支配されちゃったりするのかもしれない。
守るための軍隊は必要なのかもしれない。
そうすると、改憲した方がいいところもあるのかもしれない……なんて、
テレビを見れば、そんなふうにも思ったりしていた。
そして、憲法の日に行われた集会を書き出し、
あれ?もしかしたら私は、「憲法」のことを何も知らないんじゃないかな?と思った。
そして、もしかしたら、私みたいな人って結構多いんじゃないかな?とも思った。
同じ5月3日に放送された、報道するラジオ。
原発事故後、水野さんの素朴な質問で、いつもはっとさせられてた事を思い出し、書き出してみた。
そうしたら、驚いた。
あまりに知らない自分に驚いた。
そして、私みたいに知らない国民が多いだろうと想像したら、とても恐ろしくなった。
知らないうちに、憲法を書きかえられたらどうなるのか、
私が改憲について悩んでいたような内容も含めて、理解できると思います。
伊藤弁護士と水野さんが、分かりやすく説明して下さっています。
志位委員長が
「私は是非、この自民党の改正案を、よく読む事をお勧めしたいと思います。
とにかく読んでみて下さい、という事を言いたいと思います。
一読すれば、どなたも、背筋が必ずゾッとします。
※<改憲派の3つの矛盾>志位和夫氏5/3日比谷公会堂“5・3憲法集会2013”(内容書き出し)より
とおっしゃっていたけれど、
この報道するラジオを聞いていても、本当に背筋がゾッとしました。
もっと憲法を学びたくなるような、大変わかりやすい内容です。
一番知らなかった大事な事は、
憲法は、私たち国民一人ひとりを守るためのもの、という事でした。
(私は漠然と、「憲法は法律の上にある日本最高峰の法規」としか思ってなかった)
私と一緒に、憲法について勉強しましょうヽ(。◕ᆺ◕)ノ
そもそも、法律とは人を縛るが、憲法とは人が国を縛るものである。
憲法記念日~改憲でどうなる?
国側の自民党及び付属物の維新の会は、96条改正を足がかりに、本当のところ何をしたいのかを探ります。
安倍総理が、念願の憲法改正に向けて激しく動いています。
夏の参議院選挙の争点とし、96条を先に改正することを掲げました。
どのように憲法を変えようというのか、その議論がないままの動きです。
それでは、安倍総理が声高に主張する憲法改正の意味合いは、どのようなものなのでしょうか?
自民党は去年4月に「日本国憲法改正草案」を決定しています。
この内容が、どのようなものかご存知でしょうか?
そもそも憲法とは、私たちとどのような関わりがあるのか?
その中で、何を変える必要があるのか?ないのか?
自民党は「日本国憲法改正草案」で、国をどのようにしようとしているのか?
弁護士で日弁連憲法委員会副委員長、伊藤塾塾長の伊藤真さんに、じっくり聞きます。
※自民党憲法草案の条文解説
http://goo.gl/nPGZI
※『報道するラジオ』公式ホームページ
http://www.mbs1179.com/hou/
法律と憲法はなにが違うの?
水野:
この改憲論議というのが盛んになっているんですが、変えるかどうかの話をする前に、
まず「憲法ってなんなんだ?」って言う、そもそものところからね、考えていきたいと思うんですよ。
これについてかがですか?
「憲法とは?」と聞かれたら、なんてお答えになりますか?
伊藤:
憲法とは?っていうと、普通、「国の最高法規」とか、私もそうでしたけれども、なんか、法律の親分っていうのかな、
なんか、いろんな法律の中で最も基本的な、この国の基本法ですし、そんなイメージですよね。
それも決して間違いではないんですけれども、
法律と憲法はどこが違うのか?っていう事を、まずしっかりと、この憲法改正の議論する時には知っておかなければいけない、と思いますね。
水野:
そこですね。
普通の法律と憲法って、何が違うんですか?
伊藤:
普通の法律というのは、私たちの生活の秩序とか安全だとかを守るために、国がつくって、私たちのいわば自由をちょっと制限するんですね。
で、社会の秩序などを守っています。
たとえば、道路交通法なんていう法律がありますけれども、
「車を運転する時なんかは、そんなにスピードを出してはダメですよ」とか「お酒を飲んで車を運転してはダメですよ」っていうふうに、
私たちの自由を少し制限して、社会の秩序や安全を守るためのものが、法律なんですね。
水野:
「私たちがしちゃいけない事が、事細かく決められている」とも言えるわけですね。
伊藤:
そうなんです。
いろんな法律があるんですけれども、法律の最も大切なところは、そういうところにあります。
「私たちに対する歯止め」というかな、そんなもんなんですね。
水野:
国民に対する歯止めが法律だと。
伊藤:
そうです。
水野:
じゃあ、憲法はなんなんですか?
伊藤:
憲法はね、全く逆で、私たちが、国の方を縛る道具なんです。
水野:
あ、縛られるのは国民じゃなくて国の方なんですか?憲法は。
伊藤:
そうなんです。
私たちが国を縛って、国が暴走しないようにする。
たとえば、消費税を勝手に、政治家の人達がね、勝手に上げちゃったりとか、
何か財務省が、「お金が足りないから、もっと税金を高くするんだ」なんていう事を勝手にやり始めちゃったりとか、
なんか最近は、政府を批判するインターネットの発言が多いから、ちょっとインターネットを規制しようか」とか、
そんな事を国が勝手にやり出そうとすると、
「ちょっと待て、それはやっちゃいけませんよ」と言って、
私たち国民の方が国を縛って、そして私たちの権利や自由、「人権」と言ったりするんですけどね、それを守るためのものなんです。
水野:
じゃあ、ま、いうたら国、ものすごい国家権力がありますから、暴走し出したらエライ事になりますよね。
伊藤:
そうです、そうです。
時々ね、「冤罪」とか言って、悪い事をやっていないのに捕まっちゃって、ひどい目に遭っちゃう人が時々いたりしますよね。
ああいうような形にならないように、警察だとか全ての国の仕事、これを「国家権力」と言ったりするんですが、
「それを制限して国民の権利や人権を守る」。そのための法が「憲法」なんですね。
水野:
そうか、何を縛っているかが全く違うんだ!
憲法は国を縛る。
ただ、縛られている方の国のリーダーが、「改憲」っておっしゃっているんですけど、
私たちにしたら「憲法」って、ちょっと遠い所にあるっていうかね、普段私……。
憲法が私たちを守ってくれている
伊藤:
遠いですよね。
普段生活の中であんまり感じない。
水野:
感覚ないですよね。
伊藤:
ないですよね。
それがね、私たちが憲法を意識しなくてもいいほどに、今のこの日本の社会が、自由で安全だからなんですね。
たとえば、空気とか水とか、あんまり意識しないじゃないですか。
水野:
まあね、あって当然っていう感じですね。
伊藤:
蛇口ひねれば、きれいな水が出て飲めますよね。
その時に水が濁っていたら、「あれ?」ってその時に初めて気づくわけですよ、水のありがたみが。
水野:
確かに。
伊藤:
それから、普段息吸っている、空気を吸っていると、何とも思わないけれども、
「何かちょっと、どこかからか有害物質が飛んできているみたいだから、マスクしないと危ないぞ」なんて言われちゃったら、
「普段吸っている空気って、綺麗で良かったんだな」って、初めて気付きますよね。
ですから、なんか知らないけど、「突然インターネットが使えなくなっちゃって、好きな事が言えなくなっちゃったぞ」とか、
「突然韓国ドラマが見れなくなっちゃった」「見ちゃいけない」なんて国に言われちゃったぞとか、
今はならないですよね。
水野:
はい。
伊藤:
でもたとえば、お隣の韓国というのは、何年か前まで、「日本のドラマや音楽は、一切聞いてはいけない」ってなってたんですよ。
水野:
そうでしたね、ええ。
伊藤:
それから今でも、中国なんかだと、インターネットとか検出されちゃったりね、
あんまりメールとか好きにできない訳じゃないですか。
だから、今、日本はそういう状態じゃないですよね。
それは、憲法が人権とかを守ってくれているから。
水野:
そうとう、じゃあ、守ってくれているんですか、憲法って!
伊藤:
そうです。
水野:
日ごろの私たちの生活を。
伊藤:
そうですよ!
だって、こうやってお電話できるのも、憲法があるからだし、こうやってラジオを聞けるのも、ラジオの番組を自由に作れるのも、これは憲法があるから。
水野:
表現の自由、報道の自由なども、ま、言うたら全部憲法のおかげですか。
伊藤:
そうです。そうなんです。
いま、憲法を変えようとするのは何故?
水野:
でも、その憲法を変えようという必要性が、じゃあ、今なぜ、言われるようになってきてるんですかね?
伊藤:
そうですね、
「憲法というのは国の基本の法なんだ」と多くの方は理解されていますが、ま、その通りなんですけどね、
何か世の中で上手くいかない事があると、
「この国の法律の根本である憲法のせいじゃないか」っていうふうに感じる人が、なんか居たりするんですよ。
たとえば、不況が長い間続いちゃったりするとね、
「この不況も憲法で、政治がなんか決められないからじゃないか」
「決められない政治」というのはちょっと前ね、今でも言われるかもしれませんけれども、そんな事があったじゃないですか、「決められない政治」。
これが、ひょっとしたら、憲法をかえたらスパスパ決められる政治に、
水野:
決められるんじゃないかって、
伊藤:
というふうに思ったりとか、
あとは、少し前から尖閣諸島の問題だとか、竹島の問題だとか、領土問題。
水野:
やっぱ、これは大きいと思いますよ。
伊藤:
ねぇ……ですから、憲法を変えれば領土問題が解決できるんじゃないか。
また、北朝鮮の核開発だとかミサイル騒動とか、物騒な事があるじゃないですか。
で、「日本がなにも言えないのは、憲法が悪いんじゃないか」とか、
あと、拉致の問題なんかもそうですよね。
それから、最近ちょっと「集団的自衛権」という難しい言葉なんですけれども、
なんかこう、「友達がやられてるのに助けなくてもいいのか」みたいなね、なんかそんな話になったりとか、
水野:
横で米軍が私たち日本の国民を守ろうとして、第三国からやられているのに、「傍で見ていて何もしないで逃げるのか」ってそういう話ですよね。
伊藤:
そうです。
水野:
それも全部、「憲法が悪いんじゃないか」という感じ、あるいは、そう考えていらっしゃる方も多い。
伊藤:
なんかいらっしゃるんだと思いますね。
それからあとは、憲法が、今年で66年目かな、施行が。
66年、一回も変えていないっていうのは、ちょっとなんか、
「これはもう古いんじゃないの?そろそろ変えてもいいんじゃないの?」というような感覚とか、
あとは、そうそう!
「アメリカから押し付けられた憲法でしょう。だから自分たちで自主憲法をつくるべきですよね」とか、
そんな思いを持っておられる方もいるのかなと思いますね。
水野:
なるほど。
そういうといろんな要素がいくつもありますが、特に“今どき”という事で言うと
「領土問題・領海問題」って、大きく皆さんの気持ちに反映しているかもしれません。
この後コマーシャルを挟んでですね、具体的に、じゃあ、改憲したらどうなっていくんだ?という、
具体的なところをぜひ教えていただきたいと思います。
水野:
今までのところ、「憲法と法律の違いはなにか」という、非常にわかりやすいお話をして下さいました。
弁護士で日弁連憲法委員会副委員長、そして伊藤塾の塾長でいらっしゃいます伊藤真さんです。
リスナーから、早速質問がきているんですが、
「自民党の改憲の草案というのは疑問点ばかりなんですよ。詳しく教えて下さい」
というふうにくださいました。
「安倍さんは『改憲を』とおっしゃいますが、具体的に、じゃあ何を変えたいと思ってらっしゃるのか?」
自民党は、もう草案を出しているんですね。
伊藤:
そうなんです。
水野:
これを具体的に、ホンマのところを教えていただきたいと思います。
まず、最初からいきましょう!
この前文というもの、ここからいきなり変わるんでしょうか?
前文/国民のためから国のための憲法へ
伊藤:
そうなんです。
前文、「まえぶん」と書くんですけどね、
一条という条文の前に、「憲法を何のためにつくるのか」というような、憲法制定の目的などを書いたものが前文なんです。
今の私たちの憲法は、「自由と平和を守るため」に、この憲法を確定しました。
というような事を、そこから始まるんですね。
ところが、今回の自民党の改定草案は、何から始まるのかな?というと、
「日本国は」というところから始まりまして、
「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇をいただく国家であって」という、
まぁ、「この日本という国は天皇をいただく国家なんだ」という、国家の紹介から始まります。
水野:
はぁ……そこから始まるんですか!?
「天皇をいただく国家」っていうのは?
伊藤:
そういう表現になるんですね。
そして、「いろいろな戦争を経て、今発展しています」というような事を言った上で、3段落目にですね、やっと日本国民が出てくるんですが、
水野:
やっと国民が出てきます。
伊藤:
はい。
それで、「日本国民は、国と郷土を、誇りと気概を持って自ら守り」
水野:
自ら守り!!
伊藤:
ここが、「国防の義務」のようなものに繋がる部分なんですね。
水野:
「自ら守り」というのは言いようによったら、そうですね、
伊藤:
そしてさらにですね、
「基本的人権を尊重するとともに」と、日本国民が人権を尊重するんだ、という事を言っているんですよ。
水野:
えっ!?
さっき、憲法というのは、権力側を縛るとおっしゃいませんでした?
伊藤:
そうそう。そうなんですよ。
ですから、私たち国民が国に、「人権を守りなさいよ」というべきものなんですね。
人権を尊重するのは国の側の義務であり、責任であるはずなんですよ。
水野:
今まではそうなんですね。今の憲法はそうなんですね。
伊藤:
それを、今度は逆に、「国民が人権を尊重しろ!」と、こう言うんですね。
そしてさらに、「家族や社会全体が互いに助け合って、国家を形成する」と。
水野:
家族が助け合うという事まで書いてあるんですか!?
伊藤:
そうなんです。
ま、家族が助け合うのはね、これは道徳や倫理で当然だと思うんですけれども、それを憲法の中で「助けあえ」となるんですね。
そして次の段落は、これもまたすごいんですが、
「我々は」っていうところから始まって、「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」って、こうなるんですね。
水野:
は……?
伊藤:
ですから、「私たちは、国を成長させなくちゃいけないぞ」と。
国民ひとりひとりの幸せよりも、国の成長が表に出てくるんですね。
水野:
はぁ~……。
伊藤:
そして、最後の段落は、
「日本国民は良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、国交にこの憲法を制定する」
水野:
国家を末永く
伊藤:
継承するため
水野:
子孫に継承するんですか?
伊藤:
そうなんです。
ですから、国を子孫に継承していくためにこの憲法を制定するんですよ。
国を続けるために憲法を制定するんですよ。
水野:
国のためにっていう感じですね。
伊藤:
もうね、徹頭徹尾、国のために憲法をつくり、国のために「私たちが国を成長させて」という、そういう前文ですね。
水野:
「国民」という文字が、大分なんか減っているような感じがしますが。
伊藤:
そうなんです。ですから、今の私たちの憲法は、国民のための憲法、
国民の権利や自由や平和を守るための憲法、というのは一貫しているんですが、
それが、今度の自民党の改憲案は、国のための憲法、
国を成長させ、国を発展させるための憲法という、そういう性質に、全く変わっちゃいましたね。
1条/天皇は「元首」
水野:
1条が、天皇についての文章ですよね。これも……。
伊藤:
1条がですね、こんなふうに変わります。
「天皇は日本国の元首であり」と入るんですね。
水野:
えぇっ!でも「日本国の象徴」っていうのは、学校でイヤというほど教わったんですけど。
伊藤:
そうですね、「象徴」というのは、それも残っているんですけど、その象徴のほかに「元首」という、
「元首」というのは、ヘッド・オブ・ステート、国の頭っていうかな、その国で一番偉い人、国の代表というイメージが「元首」なんですけどね、
それが天皇です、ということ。
水野:
それは明治憲法の時じゃないんですか?
伊藤:
そうですね、明治憲法の時は、「天皇は元首であり君主であり主権者であり」っていうかな、
要するに「天皇が一番偉いんですよ」というのが明治憲法でしたけれども、あたかも、それに近付く様な言い方をしてるんですね。
ただ、外国から見ると、「天皇が日本の国を代表する」というふうに実際には見られて、そう扱われることはあるんですけどね、
でも、私たちの憲法では、自ら「天皇が元首だよ」という事はあえて言わなかったんですね。
それは、「元首」と言ってしまうと、なにか天皇が非常に高い所にいて、「国民が主人公だ」というのとちょっと遠くなっちゃうところがありますんで。
あえてそういう言い方はしていなかったんですけれども、それを明確に、「元首」という事を言います。
第2章/「戦争の放棄」が消えた
水野:
そして第2章はですね、今の憲法の、「戦争の放棄」というタイトルが無くなって、「戦争の放棄」が「安全保障」に代わっているんですね。
で、ここに9条が含まれてくる訳ですけど、皆さんご存じのとおり、「国防軍」についての文言が、ダーッといっぱい書き連ねてありますが、
あのね、ま、ひと言でいうて、その、たとえば、北朝鮮からミサイル撃ち込まれた時に、
「今の憲法だったら何もできへんのとちゃうか」と。
「ちゃんと反撃できるようにしないと私たちの身が心配である」と。
「だから憲法を変えよう」、みたいな考え方ももちろんありますでしょ?
伊藤:
ありますね。
水野:
これについてはどうなんですか?
伊藤:
それはね、今の政府の考え方は、日本の国を守るためには、必要最小限でありますけれども
「日本の国を守るための実力行使は、事実上何でも出来ますよ」というのが、今の政府の考え方なんですね。
水野:
事実上何でも出来ますよ、はぁ~。
伊藤:
「国を守るための必要最小限の事は何でもできる」ということなんです。
ですから、今までの政府の見解ですと、
「小型の核爆弾でも持つ事が出来るんだ」というのが、今の政府見解なんですね。
ですから、「個別的自衛権」という言い方をするんですが、
「自分の国を守るという事は、当然に今の憲法9条のもとでもできるんだ」と。
「そのための実力部隊が自衛隊なんだ」という、そういう考え方です。
ですから、自衛隊という実力部隊、
これは戦力ではない、あくまでも自衛のための実力部隊なんだというんですけれども、
それによって「この国を守る」という事ならば、もうそれは十分できるし、またしなければいけない事だ。
水野:
しかしですね、町で聞いてきたお声はですね、今のままでは不十分だというのが多いんですよ。
お聞き下さい。
男性:
ハッキリすべきだと思うんですね、自衛隊か軍隊かというのを。
現状はやっぱり中途半端ですね。
軍隊にすべきかなとおもうけどね。
それがイコール戦争という意味じゃないですね。
女性:
韓国とか中国とか、やっぱりちょっと問題になってきているので、強化するという意味では、自国を守る上では、
もうちょっと改正した方がいいかもしれないな、と思いますけど。
男性:
変えた方がいいと思います。
今現在を見ても、日本を取り巻く環境というのはすごく難しくなってきていますよね。
たとえば、中国の問題韓国の問題みんなそうですけど、だからそういう事を見据えて、
やっぱりその、今までは9条の範疇で良かったんでしょうけど、
これからはやっぱり、そこをもう一歩踏み込んで行ってね、世界の中で自立した国家である日本を築いていくために、
法律を、憲法を整えておくべきというのかなぁ。
9条/今のままでは日本を守れない?
水野:
今お聞きのように、「今の憲法9条では日本を、国民を守れないんじゃないか」っという議論ですね。
伊藤:
そうですね、やっぱり「自衛隊と軍隊の違い」っていうのかな、それを今ちょっと分からないな、というのがあるのかもしれません。
ただ本当に、「今の日本を守る」というのであれば、これは自衛隊で十分ですし、まさにそうでなければ、自衛隊の存在意義が無いんですね。
「何のために自衛隊があるの?」っていう話になりますから。
自衛隊が出来ない事というのが二つありましてね、
今の憲法のもとで、自衛隊ができませんと言っている事が二つあります。
ひとつが集団的自衛権の行使、これは、「今の憲法では出来ない」と政府が言っています。
それからもうひとつは、海外に自衛隊を派遣すること。
これはできない。
ですから、海外に自衛隊を出して、なにか武力行使をする事、それはできない。
武力行使にならなければいいんだけれども、海外に自衛隊を出して、武力行使になるようなことはできません。
その二つが出来ないだけなんです。
だから逆に言えば、憲法を変えなければいけない事というのは、集団的自衛権を行使したいんだ、海外に派兵して武力行使をさせたいんだと。
この二つが目的なんですね。
集団的自衛権/
日本が北朝鮮のミサイルを打ち落としたらどうなる?
水野:
実際に、自民党の改憲草案では、まず集団的自衛権についてはどうなっているんですか?
伊藤:
まず自民党の改憲案9条の1項では、「戦争放棄する」とハッキリ言っています。
ただ、ここには、「国権の発動としての戦争を放棄し」と書いてあるんですけれどもね、
この「国権の発動としての戦争」というのは、いわゆる、宣戦布告をしておこなう地域の戦争を意味するんですが、
こういった戦争はもう今、国連憲章で違法だとされていますから、宣戦布告をして戦争をする国なんて、今の時代はもう無いんですね。
たとえばアメリカでも、何回も戦争をやっていますけれども、アメリカの戦争で宣戦布告をしたのは、たったの5回しかありません。
ほとんどの戦争は「自衛権の行使の名のもと」だとか、または「国際合憲の名のもと」で行われちゃったりするんですね。
ですからこの「戦争放棄」と9条の1項に書いてあるからとして、だから日本は戦争しない、という訳にはならないんですよ。
で、今回の自民党の改憲案は9条の2項で、「自衛権の発動を妨げるものではない」と入ったんですね。
水野:
どういう意味ですか?
伊藤:
ちょっとわかりにくいんですけれども、これによって個別的自衛権だけじゃなくて、集団的自衛権も行使できますよ。
水野:
それはつまり、さっきも言いましたけれど、
アメリカ軍が撃たれてると、スマトラに自衛隊がおると、海外で。
で、第三国からアメリカ軍が兵士で撃たれている時に、それを見捨てて自衛隊が逃げないで、助けに行くって、
あるいは、第三国に向かって報復するっていう、
伊藤:
そういうことです。
水野:
自衛隊が、「日本がやられていなくても、アメリカがやられたら行く」っていう意味ですか?
伊藤:
そういうことになります。
ですから、「日本がやられている時に」というのは、これは個別的自衛権の話ですから、
日本がやられていなくてもアメリカがどこかで戦争していてやられる時には、日本がそれを助けに行って、相手を一緒になってやっつける。
これが集団的自衛権なんですね。
ですからよく例に出されるのは、北朝鮮が、アメリカに向かってミサイルを撃った。
サンフランシスコあたりにミサイルを撃った。
「それを日本は撃ち落とせるのに、撃ち落とさなくていいのか」
水野:
よく言われますね。
伊藤:
それを撃ち落とすのが集団的自衛権だと、まさにそういう事なんですけれどもね、
水野:
で、それを撃ち落とせるように、日本が撃ち落とせるようになる自民党の案。
伊藤:
そういうことです。
もうはっきりと問題なく、北朝鮮からアメリカに飛んでいくミサイルを撃ち落とせるようにしよう、というのが一つの目的です。
それを、集団的自衛権を問題なく行使できるようにしましょう、という意味で、
この9条の2項について、「発動を妨げるものではない」って、これを入れたんですね。
もしも、アメリカに撃った北朝鮮のミサイルを、日本が撃ち落としたら?
水野:
リスナーは、
「僕は、憲法改正にはできるだけしたくないんですが、
近年の近隣諸国の威嚇、行為なんかみてたら、改正議論もしょうがない」っておっしゃっているんですね。
やっぱりこの、最近の事情が大きく影響していると思うんですが、
今の話で、たとえば北朝鮮からアメリカに向けてのミサイルを日本が撃ち落とすとしましょう!
伊藤:
はい。
水野:
それは、どないなりますやろ、その先。
伊藤:
要するに、これを変えたい人達は、「撃ち落とさないとおかしい」。
だから「集団的自衛権を行使できるように憲法を変えるんだ」と、こう言ってるんですが、
実際それを、もし撃ち落としたらどうなるか?
水野:
どうなるんですか?
伊藤:
その先の事を考えないといけないですよね。
そうなるとどうなるか?
もちろんそれは、日本が、北朝鮮に宣戦布告をしたことになりますから、北朝鮮が今までアメリカに向けてたミサイルを、一気に日本に向けて飛ばす。
日本の真上から、原発の真上から、ミサイルが何本も落ちてくるかもしれません。
で、今の技術だと、真上から落ちてきたミサイルは撃ち落とせませんから、ま…大変なことになるわけですよね。
要するに、国民の命や財産が、とても危険にさらされる結果をまねくのが、実はこの、集団的自衛権なんですよ。
徴兵制/法律で出来るようになる
水野:
あの、リスナーの方はね、
「9条について、徴兵制度も絡めて、どう変わるのか答えて下さい」
伊藤:
徴兵制は可能になりますね。
水野:
可能になりますか。
伊藤:
なります。
今の憲法では、軍隊を持たないという事ですから、徴兵制は出来ないんです。
憲法上出来ないんですね。
ところがこうやって、軍隊を持つことになりますし、国民の「国防の義務」のようなものが入ってきますから、
これは、徴兵制は法律で徴兵制にしようと思えばできるんです。
水野:
憲法を変えなくても、もっと変えやすい法律の段階で、徴兵制度はできる!
伊藤:
この、自民党の改憲案にもし変わってしまったら、法律によって、国会の多数決で、徴兵制は何時でも採用できるようになります。
水野:
9条に、こんな新しいのが入っていましたね。
「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」
国民もいつの間にか、これ、協力せなあかんのですね。
伊藤:
そういうことになります。国民に「協力しなさい」って
水野:
その資源というのはたとえば、石油とかいったら世界中にありますよね。
伊藤:
そうですね、「日本にとって必要な資源の確保のために、国民に協力しろ」、
「その資源のために、国防軍、軍隊が出かけていくぞ」ということもあり得るわけだし、
国民に、場合によっては、徴兵制云々というので、義務を課してくる、というのは当然ありますよね。
まだまだ続きますが、今夜はここまで。
いつものごとく、ものすごい量やけど、それを打ち直させてもらいました。
わたしが憲法を学ぶにあたり、大いに助けてくださった伊藤真所長による、めちゃわかりやすい憲法のお話です。
2回に分けて載せさせてもらいます。
↓以下、転載はじめ
1ー憲法と法律の違いはなに? 5/3報道するラジオ 伊藤真弁護士(文字起こし)
安倍総理は事あるごとに、憲法改憲をアピールする。
だけど、9条を改正して戦争が出来る国になったり、徴兵制になったりしたらとても怖い。
私が信頼している方々は皆、改憲には反対しているし……。
その位の知識で、私は漠然と、憲法は変えない方がいいと思っていた。
でも、憲法は古いし、敗戦後他国が作ったものだし、
テレビで何度も流れる領土問題。
韓国や中国とかが攻めてきても、アメリカは助けてくれないだろうし、
北朝鮮はミサイルを打ってくるかもしれないし、
日本はあっという間に支配されちゃったりするのかもしれない。
守るための軍隊は必要なのかもしれない。
そうすると、改憲した方がいいところもあるのかもしれない……なんて、
テレビを見れば、そんなふうにも思ったりしていた。
そして、憲法の日に行われた集会を書き出し、
あれ?もしかしたら私は、「憲法」のことを何も知らないんじゃないかな?と思った。
そして、もしかしたら、私みたいな人って結構多いんじゃないかな?とも思った。
同じ5月3日に放送された、報道するラジオ。
原発事故後、水野さんの素朴な質問で、いつもはっとさせられてた事を思い出し、書き出してみた。
そうしたら、驚いた。
あまりに知らない自分に驚いた。
そして、私みたいに知らない国民が多いだろうと想像したら、とても恐ろしくなった。
知らないうちに、憲法を書きかえられたらどうなるのか、
私が改憲について悩んでいたような内容も含めて、理解できると思います。
伊藤弁護士と水野さんが、分かりやすく説明して下さっています。
志位委員長が
「私は是非、この自民党の改正案を、よく読む事をお勧めしたいと思います。
とにかく読んでみて下さい、という事を言いたいと思います。
一読すれば、どなたも、背筋が必ずゾッとします。
※<改憲派の3つの矛盾>志位和夫氏5/3日比谷公会堂“5・3憲法集会2013”(内容書き出し)より
とおっしゃっていたけれど、
この報道するラジオを聞いていても、本当に背筋がゾッとしました。
もっと憲法を学びたくなるような、大変わかりやすい内容です。
一番知らなかった大事な事は、
憲法は、私たち国民一人ひとりを守るためのもの、という事でした。
(私は漠然と、「憲法は法律の上にある日本最高峰の法規」としか思ってなかった)
私と一緒に、憲法について勉強しましょうヽ(。◕ᆺ◕)ノ
そもそも、法律とは人を縛るが、憲法とは人が国を縛るものである。
憲法記念日~改憲でどうなる?
国側の自民党及び付属物の維新の会は、96条改正を足がかりに、本当のところ何をしたいのかを探ります。
安倍総理が、念願の憲法改正に向けて激しく動いています。
夏の参議院選挙の争点とし、96条を先に改正することを掲げました。
どのように憲法を変えようというのか、その議論がないままの動きです。
それでは、安倍総理が声高に主張する憲法改正の意味合いは、どのようなものなのでしょうか?
自民党は去年4月に「日本国憲法改正草案」を決定しています。
この内容が、どのようなものかご存知でしょうか?
そもそも憲法とは、私たちとどのような関わりがあるのか?
その中で、何を変える必要があるのか?ないのか?
自民党は「日本国憲法改正草案」で、国をどのようにしようとしているのか?
弁護士で日弁連憲法委員会副委員長、伊藤塾塾長の伊藤真さんに、じっくり聞きます。
※自民党憲法草案の条文解説
http://goo.gl/nPGZI
※『報道するラジオ』公式ホームページ
http://www.mbs1179.com/hou/
法律と憲法はなにが違うの?
水野:
この改憲論議というのが盛んになっているんですが、変えるかどうかの話をする前に、
まず「憲法ってなんなんだ?」って言う、そもそものところからね、考えていきたいと思うんですよ。
これについてかがですか?
「憲法とは?」と聞かれたら、なんてお答えになりますか?
伊藤:
憲法とは?っていうと、普通、「国の最高法規」とか、私もそうでしたけれども、なんか、法律の親分っていうのかな、
なんか、いろんな法律の中で最も基本的な、この国の基本法ですし、そんなイメージですよね。
それも決して間違いではないんですけれども、
法律と憲法はどこが違うのか?っていう事を、まずしっかりと、この憲法改正の議論する時には知っておかなければいけない、と思いますね。
水野:
そこですね。
普通の法律と憲法って、何が違うんですか?
伊藤:
普通の法律というのは、私たちの生活の秩序とか安全だとかを守るために、国がつくって、私たちのいわば自由をちょっと制限するんですね。
で、社会の秩序などを守っています。
たとえば、道路交通法なんていう法律がありますけれども、
「車を運転する時なんかは、そんなにスピードを出してはダメですよ」とか「お酒を飲んで車を運転してはダメですよ」っていうふうに、
私たちの自由を少し制限して、社会の秩序や安全を守るためのものが、法律なんですね。
水野:
「私たちがしちゃいけない事が、事細かく決められている」とも言えるわけですね。
伊藤:
そうなんです。
いろんな法律があるんですけれども、法律の最も大切なところは、そういうところにあります。
「私たちに対する歯止め」というかな、そんなもんなんですね。
水野:
国民に対する歯止めが法律だと。
伊藤:
そうです。
水野:
じゃあ、憲法はなんなんですか?
伊藤:
憲法はね、全く逆で、私たちが、国の方を縛る道具なんです。
水野:
あ、縛られるのは国民じゃなくて国の方なんですか?憲法は。
伊藤:
そうなんです。
私たちが国を縛って、国が暴走しないようにする。
たとえば、消費税を勝手に、政治家の人達がね、勝手に上げちゃったりとか、
何か財務省が、「お金が足りないから、もっと税金を高くするんだ」なんていう事を勝手にやり始めちゃったりとか、
なんか最近は、政府を批判するインターネットの発言が多いから、ちょっとインターネットを規制しようか」とか、
そんな事を国が勝手にやり出そうとすると、
「ちょっと待て、それはやっちゃいけませんよ」と言って、
私たち国民の方が国を縛って、そして私たちの権利や自由、「人権」と言ったりするんですけどね、それを守るためのものなんです。
水野:
じゃあ、ま、いうたら国、ものすごい国家権力がありますから、暴走し出したらエライ事になりますよね。
伊藤:
そうです、そうです。
時々ね、「冤罪」とか言って、悪い事をやっていないのに捕まっちゃって、ひどい目に遭っちゃう人が時々いたりしますよね。
ああいうような形にならないように、警察だとか全ての国の仕事、これを「国家権力」と言ったりするんですが、
「それを制限して国民の権利や人権を守る」。そのための法が「憲法」なんですね。
水野:
そうか、何を縛っているかが全く違うんだ!
憲法は国を縛る。
ただ、縛られている方の国のリーダーが、「改憲」っておっしゃっているんですけど、
私たちにしたら「憲法」って、ちょっと遠い所にあるっていうかね、普段私……。
憲法が私たちを守ってくれている
伊藤:
遠いですよね。
普段生活の中であんまり感じない。
水野:
感覚ないですよね。
伊藤:
ないですよね。
それがね、私たちが憲法を意識しなくてもいいほどに、今のこの日本の社会が、自由で安全だからなんですね。
たとえば、空気とか水とか、あんまり意識しないじゃないですか。
水野:
まあね、あって当然っていう感じですね。
伊藤:
蛇口ひねれば、きれいな水が出て飲めますよね。
その時に水が濁っていたら、「あれ?」ってその時に初めて気づくわけですよ、水のありがたみが。
水野:
確かに。
伊藤:
それから、普段息吸っている、空気を吸っていると、何とも思わないけれども、
「何かちょっと、どこかからか有害物質が飛んできているみたいだから、マスクしないと危ないぞ」なんて言われちゃったら、
「普段吸っている空気って、綺麗で良かったんだな」って、初めて気付きますよね。
ですから、なんか知らないけど、「突然インターネットが使えなくなっちゃって、好きな事が言えなくなっちゃったぞ」とか、
「突然韓国ドラマが見れなくなっちゃった」「見ちゃいけない」なんて国に言われちゃったぞとか、
今はならないですよね。
水野:
はい。
伊藤:
でもたとえば、お隣の韓国というのは、何年か前まで、「日本のドラマや音楽は、一切聞いてはいけない」ってなってたんですよ。
水野:
そうでしたね、ええ。
伊藤:
それから今でも、中国なんかだと、インターネットとか検出されちゃったりね、
あんまりメールとか好きにできない訳じゃないですか。
だから、今、日本はそういう状態じゃないですよね。
それは、憲法が人権とかを守ってくれているから。
水野:
そうとう、じゃあ、守ってくれているんですか、憲法って!
伊藤:
そうです。
水野:
日ごろの私たちの生活を。
伊藤:
そうですよ!
だって、こうやってお電話できるのも、憲法があるからだし、こうやってラジオを聞けるのも、ラジオの番組を自由に作れるのも、これは憲法があるから。
水野:
表現の自由、報道の自由なども、ま、言うたら全部憲法のおかげですか。
伊藤:
そうです。そうなんです。
いま、憲法を変えようとするのは何故?
水野:
でも、その憲法を変えようという必要性が、じゃあ、今なぜ、言われるようになってきてるんですかね?
伊藤:
そうですね、
「憲法というのは国の基本の法なんだ」と多くの方は理解されていますが、ま、その通りなんですけどね、
何か世の中で上手くいかない事があると、
「この国の法律の根本である憲法のせいじゃないか」っていうふうに感じる人が、なんか居たりするんですよ。
たとえば、不況が長い間続いちゃったりするとね、
「この不況も憲法で、政治がなんか決められないからじゃないか」
「決められない政治」というのはちょっと前ね、今でも言われるかもしれませんけれども、そんな事があったじゃないですか、「決められない政治」。
これが、ひょっとしたら、憲法をかえたらスパスパ決められる政治に、
水野:
決められるんじゃないかって、
伊藤:
というふうに思ったりとか、
あとは、少し前から尖閣諸島の問題だとか、竹島の問題だとか、領土問題。
水野:
やっぱ、これは大きいと思いますよ。
伊藤:
ねぇ……ですから、憲法を変えれば領土問題が解決できるんじゃないか。
また、北朝鮮の核開発だとかミサイル騒動とか、物騒な事があるじゃないですか。
で、「日本がなにも言えないのは、憲法が悪いんじゃないか」とか、
あと、拉致の問題なんかもそうですよね。
それから、最近ちょっと「集団的自衛権」という難しい言葉なんですけれども、
なんかこう、「友達がやられてるのに助けなくてもいいのか」みたいなね、なんかそんな話になったりとか、
水野:
横で米軍が私たち日本の国民を守ろうとして、第三国からやられているのに、「傍で見ていて何もしないで逃げるのか」ってそういう話ですよね。
伊藤:
そうです。
水野:
それも全部、「憲法が悪いんじゃないか」という感じ、あるいは、そう考えていらっしゃる方も多い。
伊藤:
なんかいらっしゃるんだと思いますね。
それからあとは、憲法が、今年で66年目かな、施行が。
66年、一回も変えていないっていうのは、ちょっとなんか、
「これはもう古いんじゃないの?そろそろ変えてもいいんじゃないの?」というような感覚とか、
あとは、そうそう!
「アメリカから押し付けられた憲法でしょう。だから自分たちで自主憲法をつくるべきですよね」とか、
そんな思いを持っておられる方もいるのかなと思いますね。
水野:
なるほど。
そういうといろんな要素がいくつもありますが、特に“今どき”という事で言うと
「領土問題・領海問題」って、大きく皆さんの気持ちに反映しているかもしれません。
この後コマーシャルを挟んでですね、具体的に、じゃあ、改憲したらどうなっていくんだ?という、
具体的なところをぜひ教えていただきたいと思います。
水野:
今までのところ、「憲法と法律の違いはなにか」という、非常にわかりやすいお話をして下さいました。
弁護士で日弁連憲法委員会副委員長、そして伊藤塾の塾長でいらっしゃいます伊藤真さんです。
リスナーから、早速質問がきているんですが、
「自民党の改憲の草案というのは疑問点ばかりなんですよ。詳しく教えて下さい」
というふうにくださいました。
「安倍さんは『改憲を』とおっしゃいますが、具体的に、じゃあ何を変えたいと思ってらっしゃるのか?」
自民党は、もう草案を出しているんですね。
伊藤:
そうなんです。
水野:
これを具体的に、ホンマのところを教えていただきたいと思います。
まず、最初からいきましょう!
この前文というもの、ここからいきなり変わるんでしょうか?
前文/国民のためから国のための憲法へ
伊藤:
そうなんです。
前文、「まえぶん」と書くんですけどね、
一条という条文の前に、「憲法を何のためにつくるのか」というような、憲法制定の目的などを書いたものが前文なんです。
今の私たちの憲法は、「自由と平和を守るため」に、この憲法を確定しました。
というような事を、そこから始まるんですね。
ところが、今回の自民党の改定草案は、何から始まるのかな?というと、
「日本国は」というところから始まりまして、
「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇をいただく国家であって」という、
まぁ、「この日本という国は天皇をいただく国家なんだ」という、国家の紹介から始まります。
水野:
はぁ……そこから始まるんですか!?
「天皇をいただく国家」っていうのは?
伊藤:
そういう表現になるんですね。
そして、「いろいろな戦争を経て、今発展しています」というような事を言った上で、3段落目にですね、やっと日本国民が出てくるんですが、
水野:
やっと国民が出てきます。
伊藤:
はい。
それで、「日本国民は、国と郷土を、誇りと気概を持って自ら守り」
水野:
自ら守り!!
伊藤:
ここが、「国防の義務」のようなものに繋がる部分なんですね。
水野:
「自ら守り」というのは言いようによったら、そうですね、
伊藤:
そしてさらにですね、
「基本的人権を尊重するとともに」と、日本国民が人権を尊重するんだ、という事を言っているんですよ。
水野:
えっ!?
さっき、憲法というのは、権力側を縛るとおっしゃいませんでした?
伊藤:
そうそう。そうなんですよ。
ですから、私たち国民が国に、「人権を守りなさいよ」というべきものなんですね。
人権を尊重するのは国の側の義務であり、責任であるはずなんですよ。
水野:
今まではそうなんですね。今の憲法はそうなんですね。
伊藤:
それを、今度は逆に、「国民が人権を尊重しろ!」と、こう言うんですね。
そしてさらに、「家族や社会全体が互いに助け合って、国家を形成する」と。
水野:
家族が助け合うという事まで書いてあるんですか!?
伊藤:
そうなんです。
ま、家族が助け合うのはね、これは道徳や倫理で当然だと思うんですけれども、それを憲法の中で「助けあえ」となるんですね。
そして次の段落は、これもまたすごいんですが、
「我々は」っていうところから始まって、「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」って、こうなるんですね。
水野:
は……?
伊藤:
ですから、「私たちは、国を成長させなくちゃいけないぞ」と。
国民ひとりひとりの幸せよりも、国の成長が表に出てくるんですね。
水野:
はぁ~……。
伊藤:
そして、最後の段落は、
「日本国民は良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、国交にこの憲法を制定する」
水野:
国家を末永く
伊藤:
継承するため
水野:
子孫に継承するんですか?
伊藤:
そうなんです。
ですから、国を子孫に継承していくためにこの憲法を制定するんですよ。
国を続けるために憲法を制定するんですよ。
水野:
国のためにっていう感じですね。
伊藤:
もうね、徹頭徹尾、国のために憲法をつくり、国のために「私たちが国を成長させて」という、そういう前文ですね。
水野:
「国民」という文字が、大分なんか減っているような感じがしますが。
伊藤:
そうなんです。ですから、今の私たちの憲法は、国民のための憲法、
国民の権利や自由や平和を守るための憲法、というのは一貫しているんですが、
それが、今度の自民党の改憲案は、国のための憲法、
国を成長させ、国を発展させるための憲法という、そういう性質に、全く変わっちゃいましたね。
1条/天皇は「元首」
水野:
1条が、天皇についての文章ですよね。これも……。
伊藤:
1条がですね、こんなふうに変わります。
「天皇は日本国の元首であり」と入るんですね。
水野:
えぇっ!でも「日本国の象徴」っていうのは、学校でイヤというほど教わったんですけど。
伊藤:
そうですね、「象徴」というのは、それも残っているんですけど、その象徴のほかに「元首」という、
「元首」というのは、ヘッド・オブ・ステート、国の頭っていうかな、その国で一番偉い人、国の代表というイメージが「元首」なんですけどね、
それが天皇です、ということ。
水野:
それは明治憲法の時じゃないんですか?
伊藤:
そうですね、明治憲法の時は、「天皇は元首であり君主であり主権者であり」っていうかな、
要するに「天皇が一番偉いんですよ」というのが明治憲法でしたけれども、あたかも、それに近付く様な言い方をしてるんですね。
ただ、外国から見ると、「天皇が日本の国を代表する」というふうに実際には見られて、そう扱われることはあるんですけどね、
でも、私たちの憲法では、自ら「天皇が元首だよ」という事はあえて言わなかったんですね。
それは、「元首」と言ってしまうと、なにか天皇が非常に高い所にいて、「国民が主人公だ」というのとちょっと遠くなっちゃうところがありますんで。
あえてそういう言い方はしていなかったんですけれども、それを明確に、「元首」という事を言います。
第2章/「戦争の放棄」が消えた
水野:
そして第2章はですね、今の憲法の、「戦争の放棄」というタイトルが無くなって、「戦争の放棄」が「安全保障」に代わっているんですね。
で、ここに9条が含まれてくる訳ですけど、皆さんご存じのとおり、「国防軍」についての文言が、ダーッといっぱい書き連ねてありますが、
あのね、ま、ひと言でいうて、その、たとえば、北朝鮮からミサイル撃ち込まれた時に、
「今の憲法だったら何もできへんのとちゃうか」と。
「ちゃんと反撃できるようにしないと私たちの身が心配である」と。
「だから憲法を変えよう」、みたいな考え方ももちろんありますでしょ?
伊藤:
ありますね。
水野:
これについてはどうなんですか?
伊藤:
それはね、今の政府の考え方は、日本の国を守るためには、必要最小限でありますけれども
「日本の国を守るための実力行使は、事実上何でも出来ますよ」というのが、今の政府の考え方なんですね。
水野:
事実上何でも出来ますよ、はぁ~。
伊藤:
「国を守るための必要最小限の事は何でもできる」ということなんです。
ですから、今までの政府の見解ですと、
「小型の核爆弾でも持つ事が出来るんだ」というのが、今の政府見解なんですね。
ですから、「個別的自衛権」という言い方をするんですが、
「自分の国を守るという事は、当然に今の憲法9条のもとでもできるんだ」と。
「そのための実力部隊が自衛隊なんだ」という、そういう考え方です。
ですから、自衛隊という実力部隊、
これは戦力ではない、あくまでも自衛のための実力部隊なんだというんですけれども、
それによって「この国を守る」という事ならば、もうそれは十分できるし、またしなければいけない事だ。
水野:
しかしですね、町で聞いてきたお声はですね、今のままでは不十分だというのが多いんですよ。
お聞き下さい。
男性:
ハッキリすべきだと思うんですね、自衛隊か軍隊かというのを。
現状はやっぱり中途半端ですね。
軍隊にすべきかなとおもうけどね。
それがイコール戦争という意味じゃないですね。
女性:
韓国とか中国とか、やっぱりちょっと問題になってきているので、強化するという意味では、自国を守る上では、
もうちょっと改正した方がいいかもしれないな、と思いますけど。
男性:
変えた方がいいと思います。
今現在を見ても、日本を取り巻く環境というのはすごく難しくなってきていますよね。
たとえば、中国の問題韓国の問題みんなそうですけど、だからそういう事を見据えて、
やっぱりその、今までは9条の範疇で良かったんでしょうけど、
これからはやっぱり、そこをもう一歩踏み込んで行ってね、世界の中で自立した国家である日本を築いていくために、
法律を、憲法を整えておくべきというのかなぁ。
9条/今のままでは日本を守れない?
水野:
今お聞きのように、「今の憲法9条では日本を、国民を守れないんじゃないか」っという議論ですね。
伊藤:
そうですね、やっぱり「自衛隊と軍隊の違い」っていうのかな、それを今ちょっと分からないな、というのがあるのかもしれません。
ただ本当に、「今の日本を守る」というのであれば、これは自衛隊で十分ですし、まさにそうでなければ、自衛隊の存在意義が無いんですね。
「何のために自衛隊があるの?」っていう話になりますから。
自衛隊が出来ない事というのが二つありましてね、
今の憲法のもとで、自衛隊ができませんと言っている事が二つあります。
ひとつが集団的自衛権の行使、これは、「今の憲法では出来ない」と政府が言っています。
それからもうひとつは、海外に自衛隊を派遣すること。
これはできない。
ですから、海外に自衛隊を出して、なにか武力行使をする事、それはできない。
武力行使にならなければいいんだけれども、海外に自衛隊を出して、武力行使になるようなことはできません。
その二つが出来ないだけなんです。
だから逆に言えば、憲法を変えなければいけない事というのは、集団的自衛権を行使したいんだ、海外に派兵して武力行使をさせたいんだと。
この二つが目的なんですね。
集団的自衛権/
日本が北朝鮮のミサイルを打ち落としたらどうなる?
水野:
実際に、自民党の改憲草案では、まず集団的自衛権についてはどうなっているんですか?
伊藤:
まず自民党の改憲案9条の1項では、「戦争放棄する」とハッキリ言っています。
ただ、ここには、「国権の発動としての戦争を放棄し」と書いてあるんですけれどもね、
この「国権の発動としての戦争」というのは、いわゆる、宣戦布告をしておこなう地域の戦争を意味するんですが、
こういった戦争はもう今、国連憲章で違法だとされていますから、宣戦布告をして戦争をする国なんて、今の時代はもう無いんですね。
たとえばアメリカでも、何回も戦争をやっていますけれども、アメリカの戦争で宣戦布告をしたのは、たったの5回しかありません。
ほとんどの戦争は「自衛権の行使の名のもと」だとか、または「国際合憲の名のもと」で行われちゃったりするんですね。
ですからこの「戦争放棄」と9条の1項に書いてあるからとして、だから日本は戦争しない、という訳にはならないんですよ。
で、今回の自民党の改憲案は9条の2項で、「自衛権の発動を妨げるものではない」と入ったんですね。
水野:
どういう意味ですか?
伊藤:
ちょっとわかりにくいんですけれども、これによって個別的自衛権だけじゃなくて、集団的自衛権も行使できますよ。
水野:
それはつまり、さっきも言いましたけれど、
アメリカ軍が撃たれてると、スマトラに自衛隊がおると、海外で。
で、第三国からアメリカ軍が兵士で撃たれている時に、それを見捨てて自衛隊が逃げないで、助けに行くって、
あるいは、第三国に向かって報復するっていう、
伊藤:
そういうことです。
水野:
自衛隊が、「日本がやられていなくても、アメリカがやられたら行く」っていう意味ですか?
伊藤:
そういうことになります。
ですから、「日本がやられている時に」というのは、これは個別的自衛権の話ですから、
日本がやられていなくてもアメリカがどこかで戦争していてやられる時には、日本がそれを助けに行って、相手を一緒になってやっつける。
これが集団的自衛権なんですね。
ですからよく例に出されるのは、北朝鮮が、アメリカに向かってミサイルを撃った。
サンフランシスコあたりにミサイルを撃った。
「それを日本は撃ち落とせるのに、撃ち落とさなくていいのか」
水野:
よく言われますね。
伊藤:
それを撃ち落とすのが集団的自衛権だと、まさにそういう事なんですけれどもね、
水野:
で、それを撃ち落とせるように、日本が撃ち落とせるようになる自民党の案。
伊藤:
そういうことです。
もうはっきりと問題なく、北朝鮮からアメリカに飛んでいくミサイルを撃ち落とせるようにしよう、というのが一つの目的です。
それを、集団的自衛権を問題なく行使できるようにしましょう、という意味で、
この9条の2項について、「発動を妨げるものではない」って、これを入れたんですね。
もしも、アメリカに撃った北朝鮮のミサイルを、日本が撃ち落としたら?
水野:
リスナーは、
「僕は、憲法改正にはできるだけしたくないんですが、
近年の近隣諸国の威嚇、行為なんかみてたら、改正議論もしょうがない」っておっしゃっているんですね。
やっぱりこの、最近の事情が大きく影響していると思うんですが、
今の話で、たとえば北朝鮮からアメリカに向けてのミサイルを日本が撃ち落とすとしましょう!
伊藤:
はい。
水野:
それは、どないなりますやろ、その先。
伊藤:
要するに、これを変えたい人達は、「撃ち落とさないとおかしい」。
だから「集団的自衛権を行使できるように憲法を変えるんだ」と、こう言ってるんですが、
実際それを、もし撃ち落としたらどうなるか?
水野:
どうなるんですか?
伊藤:
その先の事を考えないといけないですよね。
そうなるとどうなるか?
もちろんそれは、日本が、北朝鮮に宣戦布告をしたことになりますから、北朝鮮が今までアメリカに向けてたミサイルを、一気に日本に向けて飛ばす。
日本の真上から、原発の真上から、ミサイルが何本も落ちてくるかもしれません。
で、今の技術だと、真上から落ちてきたミサイルは撃ち落とせませんから、ま…大変なことになるわけですよね。
要するに、国民の命や財産が、とても危険にさらされる結果をまねくのが、実はこの、集団的自衛権なんですよ。
徴兵制/法律で出来るようになる
水野:
あの、リスナーの方はね、
「9条について、徴兵制度も絡めて、どう変わるのか答えて下さい」
伊藤:
徴兵制は可能になりますね。
水野:
可能になりますか。
伊藤:
なります。
今の憲法では、軍隊を持たないという事ですから、徴兵制は出来ないんです。
憲法上出来ないんですね。
ところがこうやって、軍隊を持つことになりますし、国民の「国防の義務」のようなものが入ってきますから、
これは、徴兵制は法律で徴兵制にしようと思えばできるんです。
水野:
憲法を変えなくても、もっと変えやすい法律の段階で、徴兵制度はできる!
伊藤:
この、自民党の改憲案にもし変わってしまったら、法律によって、国会の多数決で、徴兵制は何時でも採用できるようになります。
水野:
9条に、こんな新しいのが入っていましたね。
「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」
国民もいつの間にか、これ、協力せなあかんのですね。
伊藤:
そういうことになります。国民に「協力しなさい」って
水野:
その資源というのはたとえば、石油とかいったら世界中にありますよね。
伊藤:
そうですね、「日本にとって必要な資源の確保のために、国民に協力しろ」、
「その資源のために、国防軍、軍隊が出かけていくぞ」ということもあり得るわけだし、
国民に、場合によっては、徴兵制云々というので、義務を課してくる、というのは当然ありますよね。
まだまだ続きますが、今夜はここまで。