福島の工事関係者が告発「手抜き除染を行い復興費が消えた」
【NEWSポストセブン】 2014.08.24(週刊ポスト2014年8月29日号)
予算は4年で1兆4000億円──。
今、福島県を中心に、莫大な税金が投入されて、除染作業が進められている。
住宅の屋根や壁、道路の舗装の表面を高圧洗浄したり、表面の土を削ったりして、放射線量を下げることが目的だ。
ところが今回、本誌は、作業を請け負う業者が「手抜き除染」を行なっている、という情報を得た。
問題になっている工区は、福島・郡山市の中心部から数キロ南の、住宅地や農地が広がる地域。
郡山市が発注し、中堅ゼネコンが元請けとして受注、昨年末から今夏にかけて、下請け業者が、実際の作業を行なっていた。
工事関係者が告発する。
「市の発注内容は、『放射線量を半分以下にする』というものだった。
線量を測りながら作業し、たとえば毎時0.5マイクロシーベルトの場所であれば、0.25マイクロシーベルト以下に落とせば作業完了。
だが、工事が始まると、元請けゼネコンが、下請けに、『線量が半分以下にならなくても、土の表面を5cm削るだけでいい』と指示した。
線量が高い地域では、5cmでは足りないのだが、それ以上表面を削ると、労力も時間もかかるので、手抜きを指示したのだろう」
さらにこのゼネコンは、「線量がそれほど高くない舗装道路は、高圧洗浄などの作業をしなくていい」とも指示したという。
元請けゼネコンは、市から一定金額で受注しているため、下請けの作業を減らせば、工賃の支払いが減り、利益が増す、という目論見だったのだろう。
当該ゼネコンに尋ねると、
「お盆休みのために担当者が不在」と、回答を得られなかった。
発注者である郡山市役所生活環境部の担当者は、
「そうした手抜きの実態は把握していない。指定された場所を除染していなかったとすれば契約違反」という。
早急な調査が待たれる。
溶けて消える汚染水対策320億円
氷のフタが凍らない!
いよいよ打つ手なしだ。
福島第一原発の地下トレンチ(地下道)にたまった、高濃度汚染水をせき止めるための『氷のフタ』が、3ヵ月経ってもまったく凍らないのだ。
7月末から、トレンチの汚染水と建屋の接続部分に、300トンに上る氷を投入し、今月7月は、ドライアイス1トンも投じたが、いまだに凍結していない。
明日(19日)の原子力規制委員会では、別の工法が議題に上がるという。
その工法とは、
「ステップ2に行こうすることも検討している」と、茂木経産相が言った『資材グラウト』の注入が濃厚だ。
『資材グラウト』は、水中で固まるコンクリートのこと。
つまり、凍結をあきらめ、コンクリ投入によって固めてしまうつもりだ。
「手詰まりが鮮明になったということです。
仮にコンクリ投入で、一時的に遮断しても、劣化した隙間やヒビ割れ部分から、すぐに汚染水が漏れ出すでしょう。
そこをコンクリで固めてふさいだとしても、また別の場所から漏れるだけ。
モグラ叩きみたいなもので、根本解決にはなりません」
(元大阪市立大学院教授の畑明郎氏=環境政策論)
さあ、こうなると、同じ方式で進めている『凍土壁』造りもどうなるやら。
茂木大臣は、順調に進んでいる、との認識を示したが、凍土壁は、1~4号機の周囲1.5キロに凍結管を埋設し、地下水の流入を遮断する。
『氷のフタ』以上に大がかりな工事だ。
「寒冷地の川を見ても分かるように、流れている水を凍結させるのは、至難の業です。
ピンポイントで済むトレンチ接続部の『氷のフタ』に、これだけ苦戦しているのに、『凍土壁』を完成させられるとは、とても思えません。
東電は、地下水の流量と速さの想定を、見誤ったのでしょう。
もともと懸念されていた工法を、見切り発車した結果がこれですから、目も当てられません」
(畑明郎氏)
凍土壁に投じる国の予算は、320億円。
税金でバクチをして、「負けました、残念」では許されない。
【NEWSポストセブン】 2014.08.24(週刊ポスト2014年8月29日号)
予算は4年で1兆4000億円──。
今、福島県を中心に、莫大な税金が投入されて、除染作業が進められている。
住宅の屋根や壁、道路の舗装の表面を高圧洗浄したり、表面の土を削ったりして、放射線量を下げることが目的だ。
ところが今回、本誌は、作業を請け負う業者が「手抜き除染」を行なっている、という情報を得た。
問題になっている工区は、福島・郡山市の中心部から数キロ南の、住宅地や農地が広がる地域。
郡山市が発注し、中堅ゼネコンが元請けとして受注、昨年末から今夏にかけて、下請け業者が、実際の作業を行なっていた。
工事関係者が告発する。
「市の発注内容は、『放射線量を半分以下にする』というものだった。
線量を測りながら作業し、たとえば毎時0.5マイクロシーベルトの場所であれば、0.25マイクロシーベルト以下に落とせば作業完了。
だが、工事が始まると、元請けゼネコンが、下請けに、『線量が半分以下にならなくても、土の表面を5cm削るだけでいい』と指示した。
線量が高い地域では、5cmでは足りないのだが、それ以上表面を削ると、労力も時間もかかるので、手抜きを指示したのだろう」
さらにこのゼネコンは、「線量がそれほど高くない舗装道路は、高圧洗浄などの作業をしなくていい」とも指示したという。
元請けゼネコンは、市から一定金額で受注しているため、下請けの作業を減らせば、工賃の支払いが減り、利益が増す、という目論見だったのだろう。
当該ゼネコンに尋ねると、
「お盆休みのために担当者が不在」と、回答を得られなかった。
発注者である郡山市役所生活環境部の担当者は、
「そうした手抜きの実態は把握していない。指定された場所を除染していなかったとすれば契約違反」という。
早急な調査が待たれる。
溶けて消える汚染水対策320億円
氷のフタが凍らない!
いよいよ打つ手なしだ。
福島第一原発の地下トレンチ(地下道)にたまった、高濃度汚染水をせき止めるための『氷のフタ』が、3ヵ月経ってもまったく凍らないのだ。
7月末から、トレンチの汚染水と建屋の接続部分に、300トンに上る氷を投入し、今月7月は、ドライアイス1トンも投じたが、いまだに凍結していない。
明日(19日)の原子力規制委員会では、別の工法が議題に上がるという。
その工法とは、
「ステップ2に行こうすることも検討している」と、茂木経産相が言った『資材グラウト』の注入が濃厚だ。
『資材グラウト』は、水中で固まるコンクリートのこと。
つまり、凍結をあきらめ、コンクリ投入によって固めてしまうつもりだ。
「手詰まりが鮮明になったということです。
仮にコンクリ投入で、一時的に遮断しても、劣化した隙間やヒビ割れ部分から、すぐに汚染水が漏れ出すでしょう。
そこをコンクリで固めてふさいだとしても、また別の場所から漏れるだけ。
モグラ叩きみたいなもので、根本解決にはなりません」
(元大阪市立大学院教授の畑明郎氏=環境政策論)
さあ、こうなると、同じ方式で進めている『凍土壁』造りもどうなるやら。
茂木大臣は、順調に進んでいる、との認識を示したが、凍土壁は、1~4号機の周囲1.5キロに凍結管を埋設し、地下水の流入を遮断する。
『氷のフタ』以上に大がかりな工事だ。
「寒冷地の川を見ても分かるように、流れている水を凍結させるのは、至難の業です。
ピンポイントで済むトレンチ接続部の『氷のフタ』に、これだけ苦戦しているのに、『凍土壁』を完成させられるとは、とても思えません。
東電は、地下水の流量と速さの想定を、見誤ったのでしょう。
もともと懸念されていた工法を、見切り発車した結果がこれですから、目も当てられません」
(畑明郎氏)
凍土壁に投じる国の予算は、320億円。
税金でバクチをして、「負けました、残念」では許されない。