『マガジン9』に掲載されていた、三上智恵の沖縄撮影日記〈辺野古・高江〉に、書きたかったことのほとんどが書かれていました。
本当は、今回の米軍軍属による殺人事件は、政府や県警上層部は、握り潰すつもりだったようです。
それを、県警の下の人間が、琉球新報にリークし、誤魔化せなくなったと。
↓以下、〝うちなあ ちゃあなる〟さんの記事『沖縄の怒りに便乗する安倍首相』より、一部引用させていただきます。
「沖縄県警や那覇地検が、独断で、米国軍人や軍属を逮捕することはありません。
一般的に、事前に、警察庁に逮捕の情報を、伝えることになります」(米軍犯罪に詳しい池宮城紀夫弁護士)
重大事件であれば、警察庁から国家公安委員長、官邸首脳にも、情報が上がることが通例だ。
シンザト容疑者が緊急逮捕されたのは、19日の午後3時10分。
つまり、この前後に、官邸に情報が上がっていたとされる。
だが、日本の“宗主国”である米国への対応が決まっていなかったのか、
同日午後7時前に、記者団から事件について問われた安倍首相は、返事もせずに無視。
参院沖縄選挙区選出の島尻安伊子沖縄北方担当相も、
「内容については承知しているが、コメントはしない」と、ひとごとのような態度だった。
それが、同日深夜になって急変した。
午後10時45分ごろに、岸田文雄外相に呼び出された米国のケネディ駐日大使が、外務省に到着すると、米国に正式に抗議した。
翌20日には、安倍首相も、「非常に強い憤りを覚える」と表明し、再発防止を求める考えを示した。
なぜ、態度が豹変したのか。
沖縄国際大学の前泊博盛教授は、こう分析する。
「米軍関係者も、サミットを控え、6月5日に沖縄県議会選挙、夏には参院選挙があるなかで、『時期がよくない』と言っていた。
これで犯人をかばったら、問題が、日米地位協定の存在そのものに及ぶ。
それを避けるため、米国も、今回は低姿勢で謝罪をし、早期解決を目指しているのでしょう」
米国と思惑が一致したのか、自民党の国対幹部も、強気の姿勢だ。
「犯人は日本で裁き、罪を償わせる。
米軍への責任追及もやる。
広島にオバマ大統領が来るからといっても関係ない。
官邸、与党は、毅然と対応すべきだ」
↑以上、引用おわり
選挙、選挙、選挙。
再発防止だとか、沖縄の方々に真に寄り添うとか、言葉だけを無意味に散らすのがお得意の、
宗主国『米国』の顔色を伺ってしか物を言えない、というか、用意された原稿無しには言葉が出ない総理大臣の頭の中は、
今もどうやったら選挙で勝てるか、それ一色だと思えてなりません。
こんな男の皮算用なんかに、今回のこの事件を利用させてなるものか!
『マガジン9』に掲載されていた、三上智恵の沖縄撮影日記〈辺野古・高江〉に、書きたかったことのほとんどが書かれていました。
↓以下、転載はじめ
蝶になったRINAさんへ
~元米兵暴行死体遺棄事件の衝撃~
http://www.magazine9.jp/article/mikami/28128/
うりずんの 島の空 高く
黒い蝶が舞い 消えていった
緑豊かな やんばるに育まれ
愛をいっぱい浴びて 笑って 周りを照らして
そして 愛を確かめあった人と
命をあわせて 命を生み出し
愛のバトンを渡していく はずだった
その命のリレーは 唐突に終わった
20歳の光り輝く日に
彼女の残した笑顔が
あまりに愛らしかったので
天の神さまは
舞い上がる蝶の 最後の記憶を 消した
愛の詰まった地上の記憶
それだけを持って
黒い蝶は 天に迎えられた
神さまは
蝶の最後の記憶を
黒い粉にして
おろかな国の民
すべての頭の上に
まんべんなく 降らせた
そして
光り輝く季節を終わらせ
島の人々が 心置きなく泣けるよう
黒い雲で覆った
今年3月に、米兵が那覇で起こしたレイプ事件について、この連載の第45回で文章を書いた。
******* ******* ******* *******
2016年3月23日に書かれた記事です。
キャンプ・シュワブの兵士
レイプ事件の激震
http://www.magazine9.jp/article/mikami/26692/
今度の犠牲者は、観光客の女性だった。
今月13日、那覇市内のホテルが、恐怖の事件現場となった。
彼女は沖縄旅行を楽しみ、友人と部屋で楽しく飲食をしていたのだろう。
追加の飲み物を買いに出たところ、戻ると友人が眠ってしまったようで、部屋に入れない。
こんな風に眠ってしまった家族に、オートロックの部屋を閉め出された経験は、私にもある。
あなたならどうするか。
ドアを激しく叩くのも迷惑だし、フロントの人を呼ぶのも気が引ける。
私なら、寒くなければ、廊下で気長に、膝を抱えて待つだろう。
やがて被害女性は、廊下で眠ってしまう。
そこに、見知らぬ米国海軍の兵士が現れ、彼女を部屋に連れ込んで、暴行に及んだ。
その兵士は、辺野古のキャンプ・シュワブの兵士だったので、翌日からゲート前は荒れた。
基地がある限り、兵士の暴力によって、女性の人権がズタズタになる、この手の性犯罪が止まない。
70年続いている、屈辱的な痛みや苦しみから、解放されない。
だから、いつもの「新基地建設反対」に加えて、「米軍は出て行け!」という抗議の声一色になったのは、当然だった。
そんな蛮行などはたらかない、立派な兵士もたくさんいるだろう。
毎日の業務で、ゲートを通る度に、「Go Home!」と書かれたプラカードを突きつけられたら、いい気はしない。
自分たちはそんな人間じゃない、と悔しい思いもするだろう。
かといって、これだけ犠牲者が出ているのに、「悪いのは一部の人よね。だからあなたには抗議しないわ」という態度をとっていたら、沖縄県民の怒りは伝わるだろうか。
米軍が、本気で、再発防止策を打つだろうか。
沖縄県民が大声を出さなければ、アメリカ軍もだが、他府県の人だって、この痛みに気付いてくれないではないか。
15日、同じキャンプ・シュワブに所属する兵士たちに、レイプ事件の抗議をしていたところ、ある兵士が、車から中指を立てて挑発した。
このポーズが意味するところは、書くまでもないだろう。
自分たちの仲間が日本女性にしたことを、少しでも悪いと思っているなら、できる仕草ではない。
また、相手を最大限に侮辱するこのサインを見て、怒らない人間はいないだろう。
辺野古の反対運動に熱心で、みんなに頼られている、ヤスさんと呼ばれる男性が、この米兵の態度に激怒して抗議し、ボンネット側に回ろうとしたとき、
黄色い線を越えたということで、軍警察に拘束された。
ゲート前のリーダー、ヒロジさんの右腕とも言われるヤスさんの逮捕に、ヒロジさんの怒りも炸裂した。
「警察は、たった1、2メートルラインを越えたからと言って、沖縄県民を拘束し、あんな事件を起こした米軍の側に立つのか?
沖縄の人間としての怒りはないのか?
米軍を守るより、沖縄にいる女性をなんで守れないんだ!」
レイプは悪いけど、どうもそれに対する沖縄の怒りは、毎回過度な印象がある、と言う人もいるかも知れない。私も、20年以上ここに生活をして、よくわかったことだが、
米兵によるレイプの事実があっても、その後に待っている苛酷な運命を考えたとき、警察に行かない選択をする人が、どれほど多いか。
昔は私も、「勇気を出して警察へ」などと思っていたが、身近な被害者の話や、目撃談などを聞いていると、
自分なら、セカンドレイプも覚悟で警察に行けるだろうかと、年々否定的になっていく。
相手が米兵なら、まずはマスコミに追いかけられ、好奇の目で見られ、外も歩けなくなる。
仕事を失う可能性も高い。
必ず、本人の落ち度の話になる。
彼氏がいたらギクシャクするだろうし、結婚していたら、夫の仕事にさえ影響するかもしれない。
息子や夫が、一緒に闘ってくれるか。
仮にそうでなかったら、それこそ、家族の絆を含めて、レイプ前に持っていたものすべてを失ってしまうだろう。
一人で抱えることに決めて、心に深い傷を追って沈黙している女性が、どれだけいることか、と思う。
ヤスさんの個人的背景は、全く知らないが、この島の男性にとっても、母や姉、恋人などの身近な女性に、犠牲者がいるケースも多く、
レイプ自体も、それ以上に被害者を苦しめるセカンドレイプに対して、男性でも、激しい怒りを持つ人が少なくない。
たまたま、今日(21日)の沖縄タイムスに、今回の抗議集会に参加する60代の男性の、痛ましい話が掲載されていた。
彼が幼い頃、姉が米兵にレイプされ、そのあとは、家の中の1畳ほどしかない裏座(※民家の裏側に位置する収納部屋などのこと)に、引きこもったままになったという。
周囲は、精神を病んでいると言っていたそうだが、原因がレイプと知ったのはつい最近、10年ほど前だそうだ。
当時、父も兄も家に居た。
「なぜ止めなかったのか?」と聞くと、母は、「止めたら殺された」と言ったという。
復帰前の、植民地同然の沖縄で、腕力も権力も桁違いの米兵に、目の前で娘を蹂躙されて、何もできないでいる父の気持ちは、想像を絶する。
父として、兄として、恋人として、大事な女性を守れなかった時の男性の尊厳こそ、ズタズタだろう。
憲法もなく、警察権もない、公平な裁判を受ける権利もない、
そういう状況を恨み、米兵を憎んだとしても、何一つできない自分を悔やむだろう。
責め続けるだろう。
そんなやりきれない経験の蓄積が、この地域にはある。
復帰して、人権が、憲法上は保障された。
とはいえ、捜査権も裁判権も、米軍相手だと制限されたままだ。
これでは、復帰前と何も変わってないじゃないか、という憤怒が、この事件が起きる度に、腹の底から沸き上がってくるのは当然である。
今回の、ビデオ後半にある緊急抗議集会で、照屋寛徳議員が言及しているが、
沖縄県民にとって、忘れようにも忘れられない、「由美子ちゃん事件」がある。
1955年、米兵が、幼稚園児の由美子ちゃんを強姦、切り裂いた上、殺害して、ゴミ捨て場に捨てた。
由美子ちゃんは、歯を食いしばった表情のままで、幼い手には雑草が握られていたという。
こうして書いていても、怒りと涙が溢れてくる。
弱い者が犠牲になり、周囲も、それを守れなかった苦さを抱いて生きる。
それが、日本の国とその国民が是とする、「米軍の駐留」が作り出す、構造的な不平等が温床になっている場合、問題を解決する責任は、誰にあるのか。
こういう話をすると必ず、「レイプをするのはアメリカ兵だけではない」という意見が出てくる。
普通の日本人もやるではないか、と言ってまで、おぞましい行為をかばう意味が、全く理解できない。
軍人と一般人の最も大きな違いは、人を殺す訓練を受けているかどうか、ということだ。
もちろん、彼らの正義や大義があって、組織の決定に従ってやるのであって、私利私欲のために殺すわけではないのだろう。
国を守る、秩序を守る。
理由は結構だ。
でも、その大きな違いを知って欲しい。
普通の精神状態では、人間は人間を殺せないものだ。
しかし、軍人の頭の中には、常に「守らなければいけない大事な人間たち」と、「いざとなれば殺されても仕方のない悪い人たち」の2種類が、必ずいるのだ。
すべての人間に、全く同じように人権があると信じていたら、相手を殺すことはできない。
つまり、女性にも、自分と同じ人権があると100パーセント思っていたら、レイプはできない。
人権意識を狂わせ、縮小させ、暴力性、攻撃性を肥大化させる訓練を、組織としてやっている軍隊の構成員に、
一方で、「綱紀粛正と道徳」なんて、教えても染みこんでいくはずがない。
攻撃と支配に、アドレナリンが出るよう訓練された集団と、一般の日本国民が、一緒であるはずがない。
動画のラストに登場する、ダグラス・ラミスさんは、沖縄在住の政治学者だが、元海兵隊員でもある。
2500人が集まった、レイプ事件への抗議集会の後、矢も盾もたまらないといった様子でマイクを握り、米兵に、直接英語で訴え始めた。
「沖縄の抵抗運動を、イデオロギーだ、動員だと、矮小化しているかも知れないが、
今日見たままの沖縄の怒りを、ぜひ上司に、アメリカ議会に、ペンタゴンに伝えて欲しい」と叫んだ。
そして、私たちのインタビューに答えて、衝撃的な指摘をして下さった。
「残念ながら、軍隊は、戦争で勝ち取ったものは、〈戦利品〉だと思っています。
この島も。
女性は、戦利品に付属する、ご褒美のつもり、ね」。
そう言う目は、とても哀しい色だった。
週に3回、辺野古に通うラミスさんは、
「何千、何万の沖縄の人が、カッターを持って基地を囲み、フェンスを切断し始めたら、外国軍隊であるあなたたちはどうするのですか?」と、英語で書かれたビラを持っていた。
敗戦国に生き、そのまま占領された島に住んで、嫌でも屈辱を味わってきた沖縄の人々には、
構造的な差別、システムとしての日米同盟のいびつさは、はっきり見えている。
たまたま犯人が米兵だっただけでしょう?
女性の落ち度もあったのでしょう?
そう言いたい人たちが、どういう心理で、なにと向き合いたくないのか、それも見えている。
安易に、セカンドレイプまがいのバッシングで溜飲を下げ、問題をすり替え、本当に立ち向かうべきものから逃げようとしていること、
そんな人間の弱さも含めて知っているからこそ、悲しい。
被害に遭う本人も、助けられなかった周りも、向き合いきれない人の方が多いと知っているからこそ、
このような事件が起きるたびに、とてもじゃないがやりきれないのだ。
******* ******* ******* *******
りに五臓六腑を絞るように、言葉を手繰り寄せて書いたせいか、その後具合が悪くなった。
だから、軍隊と暴力とレイプの関係や、
沖縄が、70年も、他府県と違ういびつな社会構造の中、告発する声さえ押し殺してきたことや、
守れなかった島の男性たちの、心をも壊すものであることや、
そんなことはもう書きたくない。
できれば、この事件について、なにも書きたくない。
事件の詳細は、他でみて欲しい。
ウォーキングをしていたら、元海兵隊の男に、突如棒で殴られ、性の捌け口にされて、草むらに遺棄された。
ここまで言葉を並べるにも、息を削るように、不自然な呼吸になってしまう。
このことについては、冷静でいられない。
5月22日の日曜は 米軍司令部の前で、緊急追悼集会が開かれた。
怒り悲しむ沖縄の女性たちの呼びかけに応じて、黒か白の服を着た人の列が、道の両側を埋め尽くした。
シュプレヒコールもなく、マイクで叫ぶこともなく、静かに、葬列のように歩きながら、満身の怒りをこめて、「全基地撤去」を求めた。
「謝罪と再発防止」はもういい。
今回はみな、そう口をそろえる。
「綱紀粛正・オフリミット」。
それで何も変わらなかった。
事件事故の度に、そんなごまかしで、中途半端に、抗議の拳をおろしてきた自分たちが、何よりも呪わしいのだ。
殺人・レイプ・放火など、米軍の凶悪事件だけで、500件を超える。
もしも、過去のどこかで、徹底的に抵抗して、基地を島から追い出していたら、彼女の人生は続いていたのだ。
敗戦と占領で、他国の軍隊との共存を、余儀なくされた。
でも、70年も、その状況を甘んじて受け入れ、変え切れなかったのはだれか。
私も、そのうちの50年、少なくとも大人になってからの30年の、責任からは免れない。
新たな犠牲が出るまで、この状況を放置したのは、私。
変え切れなかったのは、私だ。
沖縄に住む大人たちだけの責任ではない。
戦争をしないといいながら、よその国の武力に守ってもらうことの矛盾には向き合わず、
彼らの暴力を見て見ぬフリをしてきた国民全員が、加害性について考えてみるべきだ。
「安全保障には犠牲が伴う」などという言説に、疑問も持たずに、武力組織を支え、量産される罪を許し、予測できた犠牲を放置した。
彼女を殺したのは、元海兵隊の、心を病んだ兵士かもしれない。
が、彼女を殺させたのは、無力な私であり、何もしなかったあなただ。
米軍の凶悪犯罪を、もうこれで本当に、最後にしたい。
あらゆる対策は無効だった。
どうすればよいか?
すべての米軍に、出て行ってもらうしかない。
「いくらなんでもそれはちょっと…」と言いながら、解決策も提示せず、動かずにいる人は、次に起きる凶悪事件の、無意識の共犯者だ。
「なぜね、命まで奪ったの? と犯人にいいたい」
喪服を着て、車椅子に乗ったまま、文子おばあは泣いた。
「凍りついたようになって、何も言えないよ」
シールズ琉球のメンバーとして、基地問題に体当たりし、座り込み、声を上げてきた、大学生の玉城愛さん。
同年代の女性が、暴力の末に、草むらに捨てられていた事実を、受け止めきれない、
話せませんと、メディアのインタビューを辞退していた。
「1995年の暴行事件は、学んで、理解し、受け止めているつもりだった。
でも、当事まだ1歳で、本当にはわかっていなかった。
こんな私が、人の前で、言葉を発していいのか」
混乱する彼女に、沖縄の20代の声を代弁してもらいたいと殺到する、マスコミの群れ。
両者の気持ちがわかるが、痛々しい場面だった。
高江のゲンさん一家は、家族みんなで集会に来ていた。
ゲンさんは前夜、一人でもゲートを封鎖しに行くといって、夜中の北部訓練場ゲートに向かったという。
震えるような怒りでいっぱいのゲンさんたちは、翌日から、本当に行動に出た。
それは動画を見てほしい。
1997年の市民投票のときからずっと、辺野古の基地建設に反対してきた、瀬嵩に住む渡具知さん一家も、親子で駆けつけていた。
ちかこさんと私は、この20年、お互いに、どれだけ基地のことで頑張ってきたか知ってるだけに、悔しくて情けなくて、2人で泣いた。
大学生になった、武龍くんが言った。
「むかし、妹が、早朝にランニングしたいといったけど、家族全部で反対したんですよ。
シュワブの兵士も走っているから、と。
その時は、ちょっと神経質かな、と思ったけど、やっぱりこれが現実なんだと。
散歩も、ランニングもできない。
異常ですよ」
この息子に、基地だらけの島をプレゼントしたくない。
そう思って、渡具知さんご夫婦は、自分たちなりの反対運動を始めたのだった。
その息子が大学生になり、彼と同世代の女性が、元米兵の狂気の犠牲になった。
この家族が歩んだ20年を思っても、やりきれない。
基地に苦しめられ、声をあげてきた方々と一緒に、こんな日を、さらに苦しくなるような日を、共に迎えるなんて、
私も、どの人と話をしていても、涙腺が決壊、まともにインタビューもできなかった。
それは、あのオスプレイがきた、2012年10月1日と同じだった。
1995年の少女暴行事件、その少女の受けた苦しみを、無駄にすまいと頑張ってきた、この20年の日々は、これでもか、これでもかと、打ち砕かれる。
しかし、今回の怒りは、どこまで広がるかわからない。
先週末から、辺野古では、「殺人鬼は出さない」と、ゲート前に立ちはだかっているし、
高江でも、少人数ながら、車と横断幕で、米兵の出入り口をふさいだ。
ゲンさんたちは、北部訓練場に入る、民間の作業車は入れようとしたが、米軍車両が引かないために通れず、渋滞ができた。
でも、作業車の人たちに、その事情を説明したせいか、足止めになってつらいはずの運転手たちも、
「仕方ない。同じ県民だからわかるよ」と、答えてくれた。
沖縄県警も、この事件については、思うところも多いのだろう。
座り込みに対する対応も、手荒ではなく、辛そうな表情をにじませる人もいた。
今まで、米軍基地に対して肯定的だった人や、無関心だった人も、今回だけは許せないと、動き出している。
大規模な県民大会も、6月19日と決まったが、今回は、県民大会でガス抜きをする、などという形では収まらないだろう。
20歳の輝く日に、突然未来を奪われた、彼女の苦しみを引き受けよう。
そして、肉親や友人らが抱えて行く、二度と晴れない空を思って震えながら、
いつか、彼女が生まれてきた意味を、みんなで肯定できる日を迎えるために、前に進むしかない。
陳腐な怒りも、涙も、意気消沈も、責任のなすりあいも、彼女のためにならない。
次の犠牲者のためにならないのだ。
アメリカ国防総省の調査(2012年)では、2万6千人の兵士が、軍隊内で性的暴行を受けていて、
被害者の9割が、その後、除隊を余儀なくされているという。
この、いびつな弱肉強食の社会、強靭な肉体と暴力性、征服欲を掻き立てられ、命令があれば、思考停止で従う訓練を、受けている集団。
個の尊厳が否定され、抑圧される人間が、異常性愛に走るのは必然だ。
普段から、「野獣になれ」と教育されているのに、「道徳教育」が染みこむはずがない。
<まうみ注・誤訳がありますので、以下に訂正をしておきます>
以下の下線の部分です。
↓↓↓
バイデン副大統領は、奇しくも21日、陸軍士官学校の卒業式で、
「性的に逸脱した傾向を持つ兵士が、アメリカ軍に加わることは、アメリカ軍をより強力にする」
「性的な問題や、倫理的逸脱によって、アメリカ軍関係者が除隊処分になることは、弱体化を招く」と発言した。
よくぞ本音を言ってくれた。
異常な性愛や暴力も、性能のいい武器と同列に考える思考が、「軍隊」の本質なのだ。
そんな、人として歪められた兵士たちが、フェンスの外に野放しにされている状態が続く沖縄にいて、
現状を変えずに、彼女の冥福など、祈れるはずがない。
<まうみ訳>
バイデン副大統領が、米軍の軍隊学校の卒業式で述べたのは、
軍が多様性に満ち、男性のみならず、女性をはじめ、多様な性の好みを持つ人たちをも受け入れることは、我国の軍力の強化につながる。
とりわけ彼らが、根本的に違う可能性や社会的な規範を持つ世界のどこかで、チームを導かなければならないような時において、戦場において、男性女性が共に活動することは、とてつもない強みになる。
<原文>
WEST POINT, N.Y. (AP) -- Vice President Joe Biden told the U.S. Military Academy's class of 2016 on Saturday that greater diversity, including more women and openly gay soldiers, will strengthen the country's armed forces. "Having men and women together in the battlefield is an incredible asset, particularly when they're asked to lead teams in parts of the world with fundamentally different expectations and norms," Biden said in his speech at a graduation ceremony at Michie Stadium on the West Point grounds along the Hudson River.
基本的に、ゲイやトランスジェンダーの人たちを、異常性愛と捉えている人は、かなり少なくなってきました。
同性愛は異常ではない、という認識は、違いを認め、受け入れるという姿勢の延長にあり、
そうでなければ、人種のるつぼであるこの国が、国として成り立っていかないということも含めて、社会的にも政治的にも、尊重されるようになってきたと思います。
バイデン副大統領は、そういう人種はもちろんのこと、性的指向の多様性が軍の中に存在することの意義を述べたのだと思います。
が、個人的な意見を言わせてもらえば、人を殺めることを厭わない、あるいは積極的に殺るような人格破壊のための訓練や洗脳を、
率先して実施している軍などに、これからも人がさらに加わっていくことが間違いであり、
これまで拒否されてきたゲイやトランスジェンダーの人たち、入りにくかった女性は、そういう意味からすると守られていたのではないかと思うのです。
危険極まりない前線。
元々そういう場所に強い興味を持っていた人か、異常な訓練を受け、自身も含め、殺戮を躊躇なくできる人ももちろんいます。
でも、今のような異常な訓練が為されるようになったのは、兵士たちの中に、人をどうしても殺せないという人が増えてきたからだ、と聞いたことがあります。
こんな話を聞くたびに、戦争というもの、軍隊というもの、兵器というものを、世界から無くすことが本当に必要だと、心の底から思います。
******* ******* ******* *******
周囲の人たちの言葉から、愛に溢れて生きていた彼女の、まさに花開こうとしていた未来を思う。
それが閉ざされた。
特に、最後の数時間は、彼女の人生にふさわしくないので、記憶ごと地上に置いていってもらおう。
私たちが引き受けますから、光り輝く記憶だけを持って、軽やかに天を目指してください。
尊い使命を帯びたあなたの魂を、天がきっと癒すでしょう。
そして、あなたが残した波紋が、島を守る力になって、ついに暴力を払拭する日が来るはずです。
みんなで頑張りますから、楽しみに見守っていてください。
マガジン9さんと、三上監督への、カンパのお願いです。
三上智恵監督新作製作のための製作協力金カンパのお願い
『戦場ぬ止み』のその後――沖縄の基地問題を伝え続ける三上智恵監督が、年内の公開を目標に新作製作取り組んでいます。
製作費確保のため、皆様のお力を貸してください。
■振込先
郵便振替口座:00190-4-673027
加入者名:沖縄記録映画製作を応援する会
◎銀行からの振込の場合は、
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
店番 :019
預金種目:当座
店名:〇一九 店(ゼロイチキユウ店)
口座番号:0673027
加入者名:沖縄記録映画製作を応援する会
本当は、今回の米軍軍属による殺人事件は、政府や県警上層部は、握り潰すつもりだったようです。
それを、県警の下の人間が、琉球新報にリークし、誤魔化せなくなったと。
↓以下、〝うちなあ ちゃあなる〟さんの記事『沖縄の怒りに便乗する安倍首相』より、一部引用させていただきます。
「沖縄県警や那覇地検が、独断で、米国軍人や軍属を逮捕することはありません。
一般的に、事前に、警察庁に逮捕の情報を、伝えることになります」(米軍犯罪に詳しい池宮城紀夫弁護士)
重大事件であれば、警察庁から国家公安委員長、官邸首脳にも、情報が上がることが通例だ。
シンザト容疑者が緊急逮捕されたのは、19日の午後3時10分。
つまり、この前後に、官邸に情報が上がっていたとされる。
だが、日本の“宗主国”である米国への対応が決まっていなかったのか、
同日午後7時前に、記者団から事件について問われた安倍首相は、返事もせずに無視。
参院沖縄選挙区選出の島尻安伊子沖縄北方担当相も、
「内容については承知しているが、コメントはしない」と、ひとごとのような態度だった。
それが、同日深夜になって急変した。
午後10時45分ごろに、岸田文雄外相に呼び出された米国のケネディ駐日大使が、外務省に到着すると、米国に正式に抗議した。
翌20日には、安倍首相も、「非常に強い憤りを覚える」と表明し、再発防止を求める考えを示した。
なぜ、態度が豹変したのか。
沖縄国際大学の前泊博盛教授は、こう分析する。
「米軍関係者も、サミットを控え、6月5日に沖縄県議会選挙、夏には参院選挙があるなかで、『時期がよくない』と言っていた。
これで犯人をかばったら、問題が、日米地位協定の存在そのものに及ぶ。
それを避けるため、米国も、今回は低姿勢で謝罪をし、早期解決を目指しているのでしょう」
米国と思惑が一致したのか、自民党の国対幹部も、強気の姿勢だ。
「犯人は日本で裁き、罪を償わせる。
米軍への責任追及もやる。
広島にオバマ大統領が来るからといっても関係ない。
官邸、与党は、毅然と対応すべきだ」
↑以上、引用おわり
選挙、選挙、選挙。
再発防止だとか、沖縄の方々に真に寄り添うとか、言葉だけを無意味に散らすのがお得意の、
宗主国『米国』の顔色を伺ってしか物を言えない、というか、用意された原稿無しには言葉が出ない総理大臣の頭の中は、
今もどうやったら選挙で勝てるか、それ一色だと思えてなりません。
こんな男の皮算用なんかに、今回のこの事件を利用させてなるものか!
『マガジン9』に掲載されていた、三上智恵の沖縄撮影日記〈辺野古・高江〉に、書きたかったことのほとんどが書かれていました。
↓以下、転載はじめ
蝶になったRINAさんへ
~元米兵暴行死体遺棄事件の衝撃~
http://www.magazine9.jp/article/mikami/28128/
うりずんの 島の空 高く
黒い蝶が舞い 消えていった
緑豊かな やんばるに育まれ
愛をいっぱい浴びて 笑って 周りを照らして
そして 愛を確かめあった人と
命をあわせて 命を生み出し
愛のバトンを渡していく はずだった
その命のリレーは 唐突に終わった
20歳の光り輝く日に
彼女の残した笑顔が
あまりに愛らしかったので
天の神さまは
舞い上がる蝶の 最後の記憶を 消した
愛の詰まった地上の記憶
それだけを持って
黒い蝶は 天に迎えられた
神さまは
蝶の最後の記憶を
黒い粉にして
おろかな国の民
すべての頭の上に
まんべんなく 降らせた
そして
光り輝く季節を終わらせ
島の人々が 心置きなく泣けるよう
黒い雲で覆った
今年3月に、米兵が那覇で起こしたレイプ事件について、この連載の第45回で文章を書いた。
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2016年3月23日に書かれた記事です。
キャンプ・シュワブの兵士
レイプ事件の激震
http://www.magazine9.jp/article/mikami/26692/
今度の犠牲者は、観光客の女性だった。
今月13日、那覇市内のホテルが、恐怖の事件現場となった。
彼女は沖縄旅行を楽しみ、友人と部屋で楽しく飲食をしていたのだろう。
追加の飲み物を買いに出たところ、戻ると友人が眠ってしまったようで、部屋に入れない。
こんな風に眠ってしまった家族に、オートロックの部屋を閉め出された経験は、私にもある。
あなたならどうするか。
ドアを激しく叩くのも迷惑だし、フロントの人を呼ぶのも気が引ける。
私なら、寒くなければ、廊下で気長に、膝を抱えて待つだろう。
やがて被害女性は、廊下で眠ってしまう。
そこに、見知らぬ米国海軍の兵士が現れ、彼女を部屋に連れ込んで、暴行に及んだ。
その兵士は、辺野古のキャンプ・シュワブの兵士だったので、翌日からゲート前は荒れた。
基地がある限り、兵士の暴力によって、女性の人権がズタズタになる、この手の性犯罪が止まない。
70年続いている、屈辱的な痛みや苦しみから、解放されない。
だから、いつもの「新基地建設反対」に加えて、「米軍は出て行け!」という抗議の声一色になったのは、当然だった。
そんな蛮行などはたらかない、立派な兵士もたくさんいるだろう。
毎日の業務で、ゲートを通る度に、「Go Home!」と書かれたプラカードを突きつけられたら、いい気はしない。
自分たちはそんな人間じゃない、と悔しい思いもするだろう。
かといって、これだけ犠牲者が出ているのに、「悪いのは一部の人よね。だからあなたには抗議しないわ」という態度をとっていたら、沖縄県民の怒りは伝わるだろうか。
米軍が、本気で、再発防止策を打つだろうか。
沖縄県民が大声を出さなければ、アメリカ軍もだが、他府県の人だって、この痛みに気付いてくれないではないか。
15日、同じキャンプ・シュワブに所属する兵士たちに、レイプ事件の抗議をしていたところ、ある兵士が、車から中指を立てて挑発した。
このポーズが意味するところは、書くまでもないだろう。
自分たちの仲間が日本女性にしたことを、少しでも悪いと思っているなら、できる仕草ではない。
また、相手を最大限に侮辱するこのサインを見て、怒らない人間はいないだろう。
辺野古の反対運動に熱心で、みんなに頼られている、ヤスさんと呼ばれる男性が、この米兵の態度に激怒して抗議し、ボンネット側に回ろうとしたとき、
黄色い線を越えたということで、軍警察に拘束された。
ゲート前のリーダー、ヒロジさんの右腕とも言われるヤスさんの逮捕に、ヒロジさんの怒りも炸裂した。
「警察は、たった1、2メートルラインを越えたからと言って、沖縄県民を拘束し、あんな事件を起こした米軍の側に立つのか?
沖縄の人間としての怒りはないのか?
米軍を守るより、沖縄にいる女性をなんで守れないんだ!」
レイプは悪いけど、どうもそれに対する沖縄の怒りは、毎回過度な印象がある、と言う人もいるかも知れない。私も、20年以上ここに生活をして、よくわかったことだが、
米兵によるレイプの事実があっても、その後に待っている苛酷な運命を考えたとき、警察に行かない選択をする人が、どれほど多いか。
昔は私も、「勇気を出して警察へ」などと思っていたが、身近な被害者の話や、目撃談などを聞いていると、
自分なら、セカンドレイプも覚悟で警察に行けるだろうかと、年々否定的になっていく。
相手が米兵なら、まずはマスコミに追いかけられ、好奇の目で見られ、外も歩けなくなる。
仕事を失う可能性も高い。
必ず、本人の落ち度の話になる。
彼氏がいたらギクシャクするだろうし、結婚していたら、夫の仕事にさえ影響するかもしれない。
息子や夫が、一緒に闘ってくれるか。
仮にそうでなかったら、それこそ、家族の絆を含めて、レイプ前に持っていたものすべてを失ってしまうだろう。
一人で抱えることに決めて、心に深い傷を追って沈黙している女性が、どれだけいることか、と思う。
ヤスさんの個人的背景は、全く知らないが、この島の男性にとっても、母や姉、恋人などの身近な女性に、犠牲者がいるケースも多く、
レイプ自体も、それ以上に被害者を苦しめるセカンドレイプに対して、男性でも、激しい怒りを持つ人が少なくない。
たまたま、今日(21日)の沖縄タイムスに、今回の抗議集会に参加する60代の男性の、痛ましい話が掲載されていた。
彼が幼い頃、姉が米兵にレイプされ、そのあとは、家の中の1畳ほどしかない裏座(※民家の裏側に位置する収納部屋などのこと)に、引きこもったままになったという。
周囲は、精神を病んでいると言っていたそうだが、原因がレイプと知ったのはつい最近、10年ほど前だそうだ。
当時、父も兄も家に居た。
「なぜ止めなかったのか?」と聞くと、母は、「止めたら殺された」と言ったという。
復帰前の、植民地同然の沖縄で、腕力も権力も桁違いの米兵に、目の前で娘を蹂躙されて、何もできないでいる父の気持ちは、想像を絶する。
父として、兄として、恋人として、大事な女性を守れなかった時の男性の尊厳こそ、ズタズタだろう。
憲法もなく、警察権もない、公平な裁判を受ける権利もない、
そういう状況を恨み、米兵を憎んだとしても、何一つできない自分を悔やむだろう。
責め続けるだろう。
そんなやりきれない経験の蓄積が、この地域にはある。
復帰して、人権が、憲法上は保障された。
とはいえ、捜査権も裁判権も、米軍相手だと制限されたままだ。
これでは、復帰前と何も変わってないじゃないか、という憤怒が、この事件が起きる度に、腹の底から沸き上がってくるのは当然である。
今回の、ビデオ後半にある緊急抗議集会で、照屋寛徳議員が言及しているが、
沖縄県民にとって、忘れようにも忘れられない、「由美子ちゃん事件」がある。
1955年、米兵が、幼稚園児の由美子ちゃんを強姦、切り裂いた上、殺害して、ゴミ捨て場に捨てた。
由美子ちゃんは、歯を食いしばった表情のままで、幼い手には雑草が握られていたという。
こうして書いていても、怒りと涙が溢れてくる。
弱い者が犠牲になり、周囲も、それを守れなかった苦さを抱いて生きる。
それが、日本の国とその国民が是とする、「米軍の駐留」が作り出す、構造的な不平等が温床になっている場合、問題を解決する責任は、誰にあるのか。
こういう話をすると必ず、「レイプをするのはアメリカ兵だけではない」という意見が出てくる。
普通の日本人もやるではないか、と言ってまで、おぞましい行為をかばう意味が、全く理解できない。
軍人と一般人の最も大きな違いは、人を殺す訓練を受けているかどうか、ということだ。
もちろん、彼らの正義や大義があって、組織の決定に従ってやるのであって、私利私欲のために殺すわけではないのだろう。
国を守る、秩序を守る。
理由は結構だ。
でも、その大きな違いを知って欲しい。
普通の精神状態では、人間は人間を殺せないものだ。
しかし、軍人の頭の中には、常に「守らなければいけない大事な人間たち」と、「いざとなれば殺されても仕方のない悪い人たち」の2種類が、必ずいるのだ。
すべての人間に、全く同じように人権があると信じていたら、相手を殺すことはできない。
つまり、女性にも、自分と同じ人権があると100パーセント思っていたら、レイプはできない。
人権意識を狂わせ、縮小させ、暴力性、攻撃性を肥大化させる訓練を、組織としてやっている軍隊の構成員に、
一方で、「綱紀粛正と道徳」なんて、教えても染みこんでいくはずがない。
攻撃と支配に、アドレナリンが出るよう訓練された集団と、一般の日本国民が、一緒であるはずがない。
動画のラストに登場する、ダグラス・ラミスさんは、沖縄在住の政治学者だが、元海兵隊員でもある。
2500人が集まった、レイプ事件への抗議集会の後、矢も盾もたまらないといった様子でマイクを握り、米兵に、直接英語で訴え始めた。
「沖縄の抵抗運動を、イデオロギーだ、動員だと、矮小化しているかも知れないが、
今日見たままの沖縄の怒りを、ぜひ上司に、アメリカ議会に、ペンタゴンに伝えて欲しい」と叫んだ。
そして、私たちのインタビューに答えて、衝撃的な指摘をして下さった。
「残念ながら、軍隊は、戦争で勝ち取ったものは、〈戦利品〉だと思っています。
この島も。
女性は、戦利品に付属する、ご褒美のつもり、ね」。
そう言う目は、とても哀しい色だった。
週に3回、辺野古に通うラミスさんは、
「何千、何万の沖縄の人が、カッターを持って基地を囲み、フェンスを切断し始めたら、外国軍隊であるあなたたちはどうするのですか?」と、英語で書かれたビラを持っていた。
敗戦国に生き、そのまま占領された島に住んで、嫌でも屈辱を味わってきた沖縄の人々には、
構造的な差別、システムとしての日米同盟のいびつさは、はっきり見えている。
たまたま犯人が米兵だっただけでしょう?
女性の落ち度もあったのでしょう?
そう言いたい人たちが、どういう心理で、なにと向き合いたくないのか、それも見えている。
安易に、セカンドレイプまがいのバッシングで溜飲を下げ、問題をすり替え、本当に立ち向かうべきものから逃げようとしていること、
そんな人間の弱さも含めて知っているからこそ、悲しい。
被害に遭う本人も、助けられなかった周りも、向き合いきれない人の方が多いと知っているからこそ、
このような事件が起きるたびに、とてもじゃないがやりきれないのだ。
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りに五臓六腑を絞るように、言葉を手繰り寄せて書いたせいか、その後具合が悪くなった。
だから、軍隊と暴力とレイプの関係や、
沖縄が、70年も、他府県と違ういびつな社会構造の中、告発する声さえ押し殺してきたことや、
守れなかった島の男性たちの、心をも壊すものであることや、
そんなことはもう書きたくない。
できれば、この事件について、なにも書きたくない。
事件の詳細は、他でみて欲しい。
ウォーキングをしていたら、元海兵隊の男に、突如棒で殴られ、性の捌け口にされて、草むらに遺棄された。
ここまで言葉を並べるにも、息を削るように、不自然な呼吸になってしまう。
このことについては、冷静でいられない。
5月22日の日曜は 米軍司令部の前で、緊急追悼集会が開かれた。
怒り悲しむ沖縄の女性たちの呼びかけに応じて、黒か白の服を着た人の列が、道の両側を埋め尽くした。
シュプレヒコールもなく、マイクで叫ぶこともなく、静かに、葬列のように歩きながら、満身の怒りをこめて、「全基地撤去」を求めた。
「謝罪と再発防止」はもういい。
今回はみな、そう口をそろえる。
「綱紀粛正・オフリミット」。
それで何も変わらなかった。
事件事故の度に、そんなごまかしで、中途半端に、抗議の拳をおろしてきた自分たちが、何よりも呪わしいのだ。
殺人・レイプ・放火など、米軍の凶悪事件だけで、500件を超える。
もしも、過去のどこかで、徹底的に抵抗して、基地を島から追い出していたら、彼女の人生は続いていたのだ。
敗戦と占領で、他国の軍隊との共存を、余儀なくされた。
でも、70年も、その状況を甘んじて受け入れ、変え切れなかったのはだれか。
私も、そのうちの50年、少なくとも大人になってからの30年の、責任からは免れない。
新たな犠牲が出るまで、この状況を放置したのは、私。
変え切れなかったのは、私だ。
沖縄に住む大人たちだけの責任ではない。
戦争をしないといいながら、よその国の武力に守ってもらうことの矛盾には向き合わず、
彼らの暴力を見て見ぬフリをしてきた国民全員が、加害性について考えてみるべきだ。
「安全保障には犠牲が伴う」などという言説に、疑問も持たずに、武力組織を支え、量産される罪を許し、予測できた犠牲を放置した。
彼女を殺したのは、元海兵隊の、心を病んだ兵士かもしれない。
が、彼女を殺させたのは、無力な私であり、何もしなかったあなただ。
米軍の凶悪犯罪を、もうこれで本当に、最後にしたい。
あらゆる対策は無効だった。
どうすればよいか?
すべての米軍に、出て行ってもらうしかない。
「いくらなんでもそれはちょっと…」と言いながら、解決策も提示せず、動かずにいる人は、次に起きる凶悪事件の、無意識の共犯者だ。
「なぜね、命まで奪ったの? と犯人にいいたい」
喪服を着て、車椅子に乗ったまま、文子おばあは泣いた。
「凍りついたようになって、何も言えないよ」
シールズ琉球のメンバーとして、基地問題に体当たりし、座り込み、声を上げてきた、大学生の玉城愛さん。
同年代の女性が、暴力の末に、草むらに捨てられていた事実を、受け止めきれない、
話せませんと、メディアのインタビューを辞退していた。
「1995年の暴行事件は、学んで、理解し、受け止めているつもりだった。
でも、当事まだ1歳で、本当にはわかっていなかった。
こんな私が、人の前で、言葉を発していいのか」
混乱する彼女に、沖縄の20代の声を代弁してもらいたいと殺到する、マスコミの群れ。
両者の気持ちがわかるが、痛々しい場面だった。
高江のゲンさん一家は、家族みんなで集会に来ていた。
ゲンさんは前夜、一人でもゲートを封鎖しに行くといって、夜中の北部訓練場ゲートに向かったという。
震えるような怒りでいっぱいのゲンさんたちは、翌日から、本当に行動に出た。
それは動画を見てほしい。
1997年の市民投票のときからずっと、辺野古の基地建設に反対してきた、瀬嵩に住む渡具知さん一家も、親子で駆けつけていた。
ちかこさんと私は、この20年、お互いに、どれだけ基地のことで頑張ってきたか知ってるだけに、悔しくて情けなくて、2人で泣いた。
大学生になった、武龍くんが言った。
「むかし、妹が、早朝にランニングしたいといったけど、家族全部で反対したんですよ。
シュワブの兵士も走っているから、と。
その時は、ちょっと神経質かな、と思ったけど、やっぱりこれが現実なんだと。
散歩も、ランニングもできない。
異常ですよ」
この息子に、基地だらけの島をプレゼントしたくない。
そう思って、渡具知さんご夫婦は、自分たちなりの反対運動を始めたのだった。
その息子が大学生になり、彼と同世代の女性が、元米兵の狂気の犠牲になった。
この家族が歩んだ20年を思っても、やりきれない。
基地に苦しめられ、声をあげてきた方々と一緒に、こんな日を、さらに苦しくなるような日を、共に迎えるなんて、
私も、どの人と話をしていても、涙腺が決壊、まともにインタビューもできなかった。
それは、あのオスプレイがきた、2012年10月1日と同じだった。
1995年の少女暴行事件、その少女の受けた苦しみを、無駄にすまいと頑張ってきた、この20年の日々は、これでもか、これでもかと、打ち砕かれる。
しかし、今回の怒りは、どこまで広がるかわからない。
先週末から、辺野古では、「殺人鬼は出さない」と、ゲート前に立ちはだかっているし、
高江でも、少人数ながら、車と横断幕で、米兵の出入り口をふさいだ。
ゲンさんたちは、北部訓練場に入る、民間の作業車は入れようとしたが、米軍車両が引かないために通れず、渋滞ができた。
でも、作業車の人たちに、その事情を説明したせいか、足止めになってつらいはずの運転手たちも、
「仕方ない。同じ県民だからわかるよ」と、答えてくれた。
沖縄県警も、この事件については、思うところも多いのだろう。
座り込みに対する対応も、手荒ではなく、辛そうな表情をにじませる人もいた。
今まで、米軍基地に対して肯定的だった人や、無関心だった人も、今回だけは許せないと、動き出している。
大規模な県民大会も、6月19日と決まったが、今回は、県民大会でガス抜きをする、などという形では収まらないだろう。
20歳の輝く日に、突然未来を奪われた、彼女の苦しみを引き受けよう。
そして、肉親や友人らが抱えて行く、二度と晴れない空を思って震えながら、
いつか、彼女が生まれてきた意味を、みんなで肯定できる日を迎えるために、前に進むしかない。
陳腐な怒りも、涙も、意気消沈も、責任のなすりあいも、彼女のためにならない。
次の犠牲者のためにならないのだ。
アメリカ国防総省の調査(2012年)では、2万6千人の兵士が、軍隊内で性的暴行を受けていて、
被害者の9割が、その後、除隊を余儀なくされているという。
この、いびつな弱肉強食の社会、強靭な肉体と暴力性、征服欲を掻き立てられ、命令があれば、思考停止で従う訓練を、受けている集団。
個の尊厳が否定され、抑圧される人間が、異常性愛に走るのは必然だ。
普段から、「野獣になれ」と教育されているのに、「道徳教育」が染みこむはずがない。
<まうみ注・誤訳がありますので、以下に訂正をしておきます>
以下の下線の部分です。
↓↓↓
バイデン副大統領は、奇しくも21日、陸軍士官学校の卒業式で、
「性的に逸脱した傾向を持つ兵士が、アメリカ軍に加わることは、アメリカ軍をより強力にする」
「性的な問題や、倫理的逸脱によって、アメリカ軍関係者が除隊処分になることは、弱体化を招く」と発言した。
よくぞ本音を言ってくれた。
異常な性愛や暴力も、性能のいい武器と同列に考える思考が、「軍隊」の本質なのだ。
そんな、人として歪められた兵士たちが、フェンスの外に野放しにされている状態が続く沖縄にいて、
現状を変えずに、彼女の冥福など、祈れるはずがない。
<まうみ訳>
バイデン副大統領が、米軍の軍隊学校の卒業式で述べたのは、
軍が多様性に満ち、男性のみならず、女性をはじめ、多様な性の好みを持つ人たちをも受け入れることは、我国の軍力の強化につながる。
とりわけ彼らが、根本的に違う可能性や社会的な規範を持つ世界のどこかで、チームを導かなければならないような時において、戦場において、男性女性が共に活動することは、とてつもない強みになる。
<原文>
WEST POINT, N.Y. (AP) -- Vice President Joe Biden told the U.S. Military Academy's class of 2016 on Saturday that greater diversity, including more women and openly gay soldiers, will strengthen the country's armed forces. "Having men and women together in the battlefield is an incredible asset, particularly when they're asked to lead teams in parts of the world with fundamentally different expectations and norms," Biden said in his speech at a graduation ceremony at Michie Stadium on the West Point grounds along the Hudson River.
基本的に、ゲイやトランスジェンダーの人たちを、異常性愛と捉えている人は、かなり少なくなってきました。
同性愛は異常ではない、という認識は、違いを認め、受け入れるという姿勢の延長にあり、
そうでなければ、人種のるつぼであるこの国が、国として成り立っていかないということも含めて、社会的にも政治的にも、尊重されるようになってきたと思います。
バイデン副大統領は、そういう人種はもちろんのこと、性的指向の多様性が軍の中に存在することの意義を述べたのだと思います。
が、個人的な意見を言わせてもらえば、人を殺めることを厭わない、あるいは積極的に殺るような人格破壊のための訓練や洗脳を、
率先して実施している軍などに、これからも人がさらに加わっていくことが間違いであり、
これまで拒否されてきたゲイやトランスジェンダーの人たち、入りにくかった女性は、そういう意味からすると守られていたのではないかと思うのです。
危険極まりない前線。
元々そういう場所に強い興味を持っていた人か、異常な訓練を受け、自身も含め、殺戮を躊躇なくできる人ももちろんいます。
でも、今のような異常な訓練が為されるようになったのは、兵士たちの中に、人をどうしても殺せないという人が増えてきたからだ、と聞いたことがあります。
こんな話を聞くたびに、戦争というもの、軍隊というもの、兵器というものを、世界から無くすことが本当に必要だと、心の底から思います。
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周囲の人たちの言葉から、愛に溢れて生きていた彼女の、まさに花開こうとしていた未来を思う。
それが閉ざされた。
特に、最後の数時間は、彼女の人生にふさわしくないので、記憶ごと地上に置いていってもらおう。
私たちが引き受けますから、光り輝く記憶だけを持って、軽やかに天を目指してください。
尊い使命を帯びたあなたの魂を、天がきっと癒すでしょう。
そして、あなたが残した波紋が、島を守る力になって、ついに暴力を払拭する日が来るはずです。
みんなで頑張りますから、楽しみに見守っていてください。
マガジン9さんと、三上監督への、カンパのお願いです。
三上智恵監督新作製作のための製作協力金カンパのお願い
『戦場ぬ止み』のその後――沖縄の基地問題を伝え続ける三上智恵監督が、年内の公開を目標に新作製作取り組んでいます。
製作費確保のため、皆様のお力を貸してください。
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