わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶芸、陶磁器の諺、格言、名言 8

2011-01-11 22:33:36 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
引き続き、諺、格言、名言について、述べます。

15) 一楽二萩三唐津。

  これは、茶道に於ける、抹茶々碗について、述べた格言です。

  一番は、楽焼で、二番目は萩焼、三番目に唐津焼が良いと、茶を嗜む(たしなむ)茶人達が、言って

  いる事で、当然、焼き物全体の、良し悪しを述べた物では、有りません。
 
 ① 楽焼が筆頭に挙げられている理由

  ) 素地が多孔質に成っている為、お茶が冷めづらい点が、挙げられます。

     急熱急冷で、焼成するのが、楽焼の特徴ですが、急熱急冷に、耐える為に、可塑性の大きい

     土に、「シャモット」を、混入させます。(多い場合は、全体の1/3程、入れます。)

     その為、焼成後に、多孔質の隙間が生じます。この多孔質が、断熱をもたらし、保温効果が、

     大きいのだそうです。

      注: シャモット(焼粉)とは、1300℃程度で焼成した、板状の物を、粉砕して作ります。

  ) 見た目より軽い事。

     楽焼の特徴は、本焼きに比べ、低い温度で、短時間焼成する事です。

     その為、土の焼き締まりが甘く、土の密度も、小さくなります。更に、多孔質な事も重なり、

     作品は、大きさの割りに、軽く成ります。

  ) 楽焼の更なる特徴は、ほとんどの作品(茶碗)が、「手作り」という事です。

     その為、形に作り手の個性が、強く表れます。微妙な歪み(ゆがみ)も、心に訴え、想像を

     豊かにする、働きもします。又、手作りである為と、焼きの甘さから、作品に暖かさが、有り、

     見た目だけでなく、手に取った際にも、暖かさを感じます。

  ) 楽焼の釉は、黒と赤が基本と成ります。その為、黒楽や赤楽に、抹茶の緑が冴えて、抹茶を

     美味しく感じさせる、作用も有ります。

  ) 楽茶碗には、模様などが、付いていないのが、普通です。

     そのシンプルさが、茶の湯の、「侘び、さび」の世界に、マッチしている事も、楽が珍重される

     理由の一つと思われます。

  ) 楽は、本焼きした作品に比べ、焼きが甘い事や、多孔質の為、強度的に劣ります。

     その為、壊れ易く、取り扱いに注意する必要が有ります。

     又、壊れ易い為、古い時代の作品は、残りづらく成ります。名品と言われる作品は、それなりに

     大切に保管、保全されてきた訳です。

     この、「はかなくて、脆い」からこそ、楽焼が大事に扱われ、抹茶々碗として、筆頭に挙げ

     られたのかも、知れません。

  ) 上記の諸々の事柄や、使い易さ等で、楽焼の抹茶々碗が、筆頭に挙げられたのではないかと、

     推測されます。

 尚、楽焼は、抹茶々碗以外では、実用的に向かず、使われる事は、稀で余り見かけません。

以下次回に続きます。

一楽二萩三唐津

  
コメント
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