わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 192 流れ易い釉の功罪とは2?

2015-11-06 20:21:20 | 素朴な疑問
2) 流動性を持つと、どんな効果があるのか?。

 ① 釉が混ざり合い、綺麗な流れ文様ができます。

  ) 釉同士の境界線は不鮮明になります。

   a) 一般に異なる釉を、一部二重掛けした場合、その境界線がしっかり現れるのが普通です。

    釉が流れると、その境界線は不鮮明になり、場合によっては境界線上の色は、徐々に変化し

    グラデーションが掛かる様になります。但し、横方向の境界線もボケますが、下方向程では

    ありません。

   b) 流れて出来る紋様は多種多様です。

    大理石模様(マーブル)、ぼかし模様、筋状模様などで、釉の濃淡や施釉の仕方によって

    変化します。

  ) 流れ易い釉を総称して流紋釉と呼びます。

   a) 我が国では、一般に海鼠(なまこ)釉といいます。主に藁灰(わらばい)や土灰を主原料

    に酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト等の酸化金属を8~15%程度添加する事で、

    独自の色の海鼠釉を作る事が出来ます。

   b) 光沢のある結晶を析出するには、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステン等

    を添加します。特に酸化バナジュウムを0.2~2%添加し、更に5%の酸化錫を加えると

    とても綺麗な結晶が表れます。

   c) 艶消し(マット)の海鼠釉を作るには、釉にカオリンと亜鉛華を加えると良いでしょう。   

  ) 一般には素焼き後の作品に釉を掛けますが、一度本焼きした作品の上に流れる釉を掛ける

    方法もあります。即ち二色の釉の熔ける温度に差を持たせる(下釉が高温、上釉が低温)事で、

    より流れ易い釉が使える利点があります。

  ) 流れ落ちる量が大きくなると、最上部の釉は薄く伸ばされる為、ガラス層や釉の色が薄く

   なり勝ちです。流れ落ちた最下部の釉は厚くなり、盛り上がり滴く状になる場合もあります。

   尚、油滴天目と呼ばれる抹茶々碗は、落ちそうな天目釉(鉄系の結晶釉)の滴がギリギリの

   処で止まっているのも 一つの見所と成っています。この場合も、口縁の釉が薄く伸ばされて

   いる(ガラス質が薄い)為、金や銀覆輪が施され、口縁の保護と口当たりの良さを演出して

   います。

  ) 釉が流れる事により、単体の釉では出せない色を出す事ができます。

   前回も記した様に、混ざり合った釉は単体の色と異なる場合があります。二色の中間色に

   成る場合も有りますが、全く異なる色に仕上がる事もあります。又、光沢が増す場合や逆に

   光沢が減じる事もあります。還元焼成に敏感に反応する釉を使うと、更に色の変化が多様化

   します。

 ② 釉の流れる量は、完全に把握する事は難しいです。

  その為、流れ過ぎても棚板まで流れない様に、最下部には数cm無釉にしておく事が多いです。

  又、流れ落ちても、高台まで流れない様に、作品の上部のみに流れ易い釉を掛ける場合も多い

  です。

  ) 流れに大きく関係するのが、窯の温度です。

   窯の温度は場所場所によって変化します。即ち、容量の大きい窯では、中が均一の温度に成る

   事は稀です。特に燃料を使う窯では、炎が直接当たる火表が高温に成り易いです。

   電気窯であれば、熱源に近いほど高温になります。その為、作品を何処に置くかの、窯詰め

   作業も大切になります。

  ) 寝らし時間によって、流れる量も変化します。

   最高温度をどの程度引っ張る(時間を掛ける)かによって、流れる範囲や量も変化します。

3) 流れ難い釉や流れ易い釉を作るには?。

以下次回に続きます。
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