「まさ」様より以下の質問を頂戴しました。
桑田卓郎さんの作品のような釉の剥がれ方はどうやってると思われますか?
私の推測では釉薬がカリ長石を主成分としている可能性が高いと思います。そしてたっぷりと
厚がけをする。化粧は蛙目粘土を添加してるのでしょうか?
全くわかりません。
宜しければご解答頂きたいです。
明窓窯より
小生勉強不足の為、桑田卓郎さんの名前を存じ上げていませんで、初めて知りました。
ネットで検索した所、ある程度の経歴や、作品を見る事ができました。要約すると次の如くです。
注: 桑田卓郎(くわたたくろう)氏:1981年 広島県生まれ。岐阜県土岐市に工房を構えて制作中。
経歴
2001年:京都嵯峨芸術大学短期大学部を卒業。
2002年:陶芸家の財満進氏に師事。
2007年:多治見市陶磁器意匠研究所を修了。
2006年:第6回益子陶芸展で濱田庄司賞を受賞。
2015年:イサムノグチ制作の「天国」(東京赤坂の草月会館 1 階)でオブジェの作品展示。
国内(金沢21世紀美術館)及び海外(ニューヨーク、ブリュッセル、ロンドン等)で、個展や
グループ展を行なっています。
◎ 作品の特徴
作品は、大胆にデフォルメされた形とポップな色彩が特徴です。
長石釉(志野釉)の「梅華皮」(かいらぎ=釉のひび割れの一種)や、「石爆」(磁土に混ぜた
石が、焼成によってはぜて表面に現れたもの)。大きく剥がれた釉の作品などがあります。
直接作品を拝見した訳では有りませんが、釉が大きく剥がれている作品が多い様に思われます。
質問の意味も、この剥がれがどの様にして出来たかの原因を問うものと思われます。
当方の考えを述べたいと思います。当然ですが、あくまでも推量ですので、真実とは異なる事が
多いと思われますが、参考程度にして下さい。
大きく釉剥げのある作品は、青や赤、黄色の地に、白やピンク、金色などの肉厚な釉が掛けられて
います。下地には釉の剥げた跡もなく、上部の釉が大きく剥がれている作品です。一般の貫入と
比べ格段に割れ目が幅広く、作品によっては、一部が剥げ落ちたり、蜜柑の皮をむいた様に、
外側に反り返っている物も見受けられます。
1) 作品は施釉し本焼き後、再度別の釉(長石釉)を厚掛けした物と思われます。
① 釉が大きく「ひび割れ」たり、剥がれたりするのは、素地と釉の収縮率の差が大きい程、
効果が増すからです。特別な場合を除き、素地と釉の収縮率に大きいな違いがある事は稀な事
です。尚、特別な場合とは、備前焼の事です。備前の土は収縮率が20%とも言われ、釉の
12~13%とは大きく異なり、釉が剥げ落ちる為、施釉が出来ないと言われています。
② 下地に成っている釉(赤、青、黄色など)を掛けて、一度高い温度で本焼きし下地の色を
定着させます。当然、素地も収縮します。高い温度程大きく縮む事になります。
次に前回以下の温度で焼成すれば、素地の収縮は0%ですので、上に掛けた釉の収縮がそのまま
現れる事になり、一度の施釉と一度の本焼きよりも、釉は多く縮み割れ目も大きくなります。
2) 釉の厚みが極端に厚いのも特徴です。
写真で見る限り1~3mm程度ある様に見えあます。(著作権の関係で写真は、表示できませんが)
一般の釉の厚みは、ハガキ一枚分と言われていますので、極端な厚みですが、釉が流れている
様子は見えません。既存の大きな貫入(割れ目)と言えば、鬼萩を思い出します。又蛇肌や、
氷裂釉などもありますが、それ以上の割れ目に成っていますので、流れ難い釉(志野釉など)で
ありながら、比較的低い温度で熔ける釉を厚く掛けていると思われます。更に白以外は着色されて
いると思われます。ご指摘の「カリ長石」を多く含んでいるかは不明です。
蛙目粘土を添加すれば、流動性を少なくし、釉を盛り上げ易くなりますが、熔け難くなります。
それ故、蛙目粘土の使用状態も不明です。
3)二度目の施釉時に、何らかの細工が施されている可能性があります。
一般に幾ら厚く施釉しても、上の釉のみが剥がれ落ちる事は少ないです。考えられる事は、釉が
一部剥がれ易い様に、何らかの技法が取り入れられていると思われます。
ご存知の様に、素焼きした作品に施釉する際、作品の表面の埃(ほこり)を取り除く為、「はたき」
を掛けたり、水拭きしたり、場合によっては、水洗いをする事があります。その目的は、釉剥げを
防止する事です。即ち埃は厳禁なのです。しかしこれを逆手にとって活用する事も可能です。
一度本焼きした作品の表面に、埃に相当する物質を塗り付ける事です。但し、二度目の本焼で
焼失してしまう有機物質でなければなりません。例えば「片栗粉」等が最有力になります。
その他、身の回りに、これに類する物が見つかるはずです。これらを部分的に任意の場所に使用
すれば、その部分のみに釉剥げを起こす事が可能に成ると思われます。勿論、何度かの試行錯誤の
実験が必要であるのは当然です。
以上が私の見解です、参考に成れば幸いです。
尚、桑田卓郎さんの技術は未公開ですので、直ぐに真似が出来るとは思われません。別の秘密がある
のかも知れません。
桑田卓郎さんの作品のような釉の剥がれ方はどうやってると思われますか?
私の推測では釉薬がカリ長石を主成分としている可能性が高いと思います。そしてたっぷりと
厚がけをする。化粧は蛙目粘土を添加してるのでしょうか?
全くわかりません。
宜しければご解答頂きたいです。
明窓窯より
小生勉強不足の為、桑田卓郎さんの名前を存じ上げていませんで、初めて知りました。
ネットで検索した所、ある程度の経歴や、作品を見る事ができました。要約すると次の如くです。
注: 桑田卓郎(くわたたくろう)氏:1981年 広島県生まれ。岐阜県土岐市に工房を構えて制作中。
経歴
2001年:京都嵯峨芸術大学短期大学部を卒業。
2002年:陶芸家の財満進氏に師事。
2007年:多治見市陶磁器意匠研究所を修了。
2006年:第6回益子陶芸展で濱田庄司賞を受賞。
2015年:イサムノグチ制作の「天国」(東京赤坂の草月会館 1 階)でオブジェの作品展示。
国内(金沢21世紀美術館)及び海外(ニューヨーク、ブリュッセル、ロンドン等)で、個展や
グループ展を行なっています。
◎ 作品の特徴
作品は、大胆にデフォルメされた形とポップな色彩が特徴です。
長石釉(志野釉)の「梅華皮」(かいらぎ=釉のひび割れの一種)や、「石爆」(磁土に混ぜた
石が、焼成によってはぜて表面に現れたもの)。大きく剥がれた釉の作品などがあります。
直接作品を拝見した訳では有りませんが、釉が大きく剥がれている作品が多い様に思われます。
質問の意味も、この剥がれがどの様にして出来たかの原因を問うものと思われます。
当方の考えを述べたいと思います。当然ですが、あくまでも推量ですので、真実とは異なる事が
多いと思われますが、参考程度にして下さい。
大きく釉剥げのある作品は、青や赤、黄色の地に、白やピンク、金色などの肉厚な釉が掛けられて
います。下地には釉の剥げた跡もなく、上部の釉が大きく剥がれている作品です。一般の貫入と
比べ格段に割れ目が幅広く、作品によっては、一部が剥げ落ちたり、蜜柑の皮をむいた様に、
外側に反り返っている物も見受けられます。
1) 作品は施釉し本焼き後、再度別の釉(長石釉)を厚掛けした物と思われます。
① 釉が大きく「ひび割れ」たり、剥がれたりするのは、素地と釉の収縮率の差が大きい程、
効果が増すからです。特別な場合を除き、素地と釉の収縮率に大きいな違いがある事は稀な事
です。尚、特別な場合とは、備前焼の事です。備前の土は収縮率が20%とも言われ、釉の
12~13%とは大きく異なり、釉が剥げ落ちる為、施釉が出来ないと言われています。
② 下地に成っている釉(赤、青、黄色など)を掛けて、一度高い温度で本焼きし下地の色を
定着させます。当然、素地も収縮します。高い温度程大きく縮む事になります。
次に前回以下の温度で焼成すれば、素地の収縮は0%ですので、上に掛けた釉の収縮がそのまま
現れる事になり、一度の施釉と一度の本焼きよりも、釉は多く縮み割れ目も大きくなります。
2) 釉の厚みが極端に厚いのも特徴です。
写真で見る限り1~3mm程度ある様に見えあます。(著作権の関係で写真は、表示できませんが)
一般の釉の厚みは、ハガキ一枚分と言われていますので、極端な厚みですが、釉が流れている
様子は見えません。既存の大きな貫入(割れ目)と言えば、鬼萩を思い出します。又蛇肌や、
氷裂釉などもありますが、それ以上の割れ目に成っていますので、流れ難い釉(志野釉など)で
ありながら、比較的低い温度で熔ける釉を厚く掛けていると思われます。更に白以外は着色されて
いると思われます。ご指摘の「カリ長石」を多く含んでいるかは不明です。
蛙目粘土を添加すれば、流動性を少なくし、釉を盛り上げ易くなりますが、熔け難くなります。
それ故、蛙目粘土の使用状態も不明です。
3)二度目の施釉時に、何らかの細工が施されている可能性があります。
一般に幾ら厚く施釉しても、上の釉のみが剥がれ落ちる事は少ないです。考えられる事は、釉が
一部剥がれ易い様に、何らかの技法が取り入れられていると思われます。
ご存知の様に、素焼きした作品に施釉する際、作品の表面の埃(ほこり)を取り除く為、「はたき」
を掛けたり、水拭きしたり、場合によっては、水洗いをする事があります。その目的は、釉剥げを
防止する事です。即ち埃は厳禁なのです。しかしこれを逆手にとって活用する事も可能です。
一度本焼きした作品の表面に、埃に相当する物質を塗り付ける事です。但し、二度目の本焼で
焼失してしまう有機物質でなければなりません。例えば「片栗粉」等が最有力になります。
その他、身の回りに、これに類する物が見つかるはずです。これらを部分的に任意の場所に使用
すれば、その部分のみに釉剥げを起こす事が可能に成ると思われます。勿論、何度かの試行錯誤の
実験が必要であるのは当然です。
以上が私の見解です、参考に成れば幸いです。
尚、桑田卓郎さんの技術は未公開ですので、直ぐに真似が出来るとは思われません。別の秘密がある
のかも知れません。
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