わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 92 作品が綺麗に見える形とは1?

2015-03-12 21:58:26 | 素朴な疑問
古い時代から、陶磁器の形は時代と共に色々変化しています。用途によっては、固定された形も

存在します。

絵画の世界や建築(物)等の世界では、全体の構成をバランス良く見せる為、適度に分割する方法に

黄金比と呼ばれる割合があります。

  注:黄金比(おうごんひ)とは、線分を二分する時、短い部分:長い部分=1:1.618(近似値)

   を言います。古代ギリシャで発見されて以来、最も安定し、美しい比率とされ、美術的要素の

   一つとされている分割方法で、色々な分野で使われています。

この黄金比を更に簡略化すると、およそ2:3になります。陶磁器の世界でもこの割合で作品を

形つくれば、見た目にも綺麗に整った形になると言われています。

形作りに迷った時には、大いに利用すべき事柄です。では実際の方法に付いて述べます。

尚、2:3=2/5:3/5(又は、3/5:2/5)と成りますので、全体を5等分して考えた方が

解かり易いかも知れません。

但し、この比率に囚われ過ぎると、作品に動きが出ない為、面白味が出ないと見る向きもあります。

1) 縦(高さ)方向に2/5:3/5(又は、3/5:2/5)に分割する。

  例えば、高さが20cmの作品の場合、下部が12cm、上部が8cmになる計算になります。

  (逆の場合は下部が8cm、上部が12cmと成ります。)

 ① 袋物と呼ばれる器の場合。

  壷や花瓶など中空の部分が大きい器を袋物と呼びます。完全な球形の場合には、分割の問題は

  起こりませんが、上下の大きさ(張り具合)が異なる時には、どの部分で形を変えるかが、

  作品全体の形に影響します。

 ) 鶴頸(つるくび)の場合。

   下部に球形の器があり、その真上に細長い筒状の器から成ります。

   この球形部と筒状部の境が下から、2/5:3/5(又は、3/5:2/5)になります。

   筒状の部分が短いなれば、下から3/5が球形になり、上部筒状の部分が2/5となります。

   筒状の部分が長ければ、この比は逆に成ります。

  ) 瓢箪型にする場合。くびれ部分を何処に取るかによって作品の雰囲気は大きく異なり

   ます。上部を3/5とし、下部を2/5とすると頭でっかちの瓢箪型になり、上部を2/5とし

   下部を3/5とすれば、安定した形に成ります。

  ) 胴や型の張った壷などの場合。

   張り出す部分をどの位置に設けるかによって、作品の雰囲気も変わります。即ち張り出し部を

   下方(2/5)に取れば、重心が下がり安定感が増しますが、逆(3/5)の場合には、重心が

   高くなり、不安定さのある作品に成ります。

 ② 袋物に横線や模様を入れる場合にも、役立つ方法です。

   即ち、壷の様に桧垣紋を入れたり、円周上に帯状の模様を描く場合にも、この3/5(又は

   2/5)の分割方法をしれば、大きな失敗も無くバランス良く絵柄が出現します。

2) 口径と底径の比を、2/5:3/5(又は、3/5:2/5)にする。

  口径が小さく、底径(高台径)が大きい場合、安定感が増します。逆の場合、やや不安定になり

  ます。尚、皿の場合は、この割合では綺麗に見えません。一般に口径:底径=1:1/2~1/3と

  言われています。

以下次回に続きます。
  
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素朴な疑問 91 本焼き後の装飾とは?

2015-03-11 21:26:51 | 素朴な疑問
施釉した作品を一度高温で本焼きした作品の上に、赤、黄、緑、紫、紺、金、銀などで色を付ける

方法を上絵付けと言います。下絵の呉須に色絵を上絵付する方法などです。特に著名なのが、有田の

染錦(染付けと上絵を重ねたもの)や九谷の五彩などがあり、古くから作られています。

赤や黄の原料は主に鉄を用い、緑は銅を、紫や紺はコバルト等の酸化金属が使われています。

フラックスと呼ばれる熔剤と顔料を混合せ、熔剤が下面の釉に熔け込み、顔料を固定します。

一般に700~850℃程度の温度で焼付けます。

尚、熔剤の種類は非常に多く70種類以上あると言われています。代表的な物はガラス質を作る硼酸

です。以前ですと酸化鉛が使用されていましたが、現在鉛は食器については、禁止されています。

一般に顔料と熔剤が混合されている各種の絵の具が、上絵の具として市販されていますので、利用

する事が多い様です。

1) 顔料と熔媒の比によって、光沢と艶消し色になります。

  ご自分で、上絵の具を作る際に参考にして下さい。

 ① 光沢のある色は、顔料:熔剤= 1:2~4の割合と成ります。

 ② 艶消し色は、顔料:熔剤= 1:1の割合と成ります。

 ③ 上記調合では、素地に接着する為の粘着剤が入っていませんので、植物油、砂糖、糖蜜などの

   他、油絵で使うテレピン油やリシドール油を添加する場合がます。

2) 和絵の具と洋絵の具。

 ① 和絵の具は、厚く塗り深みのある色を出します。但し、例外的に赤色は塗る様にします。

   但し、広い面積に赤色を塗ると、塗り方によっては、色斑(いろむら)が生じ易いです。

   厚く盛り上げる為に、下の釉面に密着させる必要があります。密着が不十分の場合ピンホール

   や、下釉と共に剥がれる事も有ります。

   陶器(土物)では、上絵の具は比較的安心して使用できますが、磁器の場合には十分注意が

   必要です。昔からの方法では、素地に布切で薄く膠(にかわ)で塗布してから、絵の具を塗る

   と良いといわれています。  

 ② 日本画で使われる岩絵の具に熔剤を添加すれば、良い上絵の顔料になります。更に鉱物質の

  油絵の具も、熔剤を添加すれば、良い上絵付けの顔料として利用できるとの事です。

  尚、近年の上絵の具は、純粋の化学薬品ですので、色に面白味(味わい)が無いと言われてい

  ます。昔は不純物の多い金属酸化物が使われている為、面白味のある色になっています。

 ③ 洋絵の具は近年、皿やコーヒーカップ等の既製の磁器製品に、絵付けする事が流行っています

  その為の絵付け専用の教室も存在しています。又、印刷や写し絵として量産され、広く使われて

  います。洋絵の具は薄塗ります。

3) 上絵付けで使う窯を錦窯と言います。

  現在では、電気窯で行う事が多いです。利点として、温度が平均的に伝わる事、(冷め)割れ

  などが起らない事が上げられます。尚、上絵付けでは窯内の湿度を嫌いますので、素焼きとは

  一緒に焼く事は避けた方が良いです。窯内に湿度があると、白釉が曇り易いと言われています。

  但し、素焼きとほぼ同じ温度ですので、湿度を気にせず一緒に焼成している人もいます。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 90 同じ釉なのに色が異なる理由

2015-03-08 22:21:13 | 素朴な疑問
同じ釉の名前であっても、メーカーが異なれば発色の違いがあるのは、当たり前かも知れません。

各々のメーカーでは、釉の調合の細かい点は秘密ですので、違いが出ます。

更に、窯の種類や燃料の差、窯の構造の違いによって、釉の発色具合は異なるのは、良く知られて

いる事柄です。

今回問題にするのは、同一メーカーの同一釉を使い、同一の窯で同時に焼成した場合にも、違いが

発生する事です。その理由、原因などを考えたいと思います。

1) どの様な変化が現れるか?

 ① 酸化と還元方法による違い。

  窯内の雰囲気はどの場所でも同じではありません。還元が強くなる場所、中性炎の処、酸化が

  強く出易い場所などがあり、更にそれらも刻々変化する事もあります。この様な状態では、

  釉の色の違いが発生します。

  ) 釉には酸化と還元では大きく異なる種類のものがあります。

    代表的なのが、銅を添加した釉で、織部釉、青銅釉等です。酸化では緑色になり、還元では

    赤、小豆色、ピンク色などを呈します。その他、石灰透明釉が上げられます。

    透明釉ですから、素地の色がそのまま出るはずです。しかし酸化では明るい色になり、

    還元ではグレー掛かった発色に成ります。特に素地に赤土などが混入している場合は、

    顕著にグレーが現れます。同様な事は、志野釉の様に白い釉でも起こります。

  ) 釉の種類によっては、酸化炎で焼成すべき物や還元で焼成すべき物、両方とも可能な物が

    あります。市販されている釉では、必ず焼成温度範囲と共に表示されています。

    それ故、酸化にすべき処を還元になってしまった時や、逆に還元の処が酸化炎になった

    場合には、所定の色には成りません。

  ) 前回お話した様に、炎の先端部は酸化に、炎の根元や途中では還元炎に成り易いです。

    それ故、酸化炎は、煙道に近い窯の底の周辺が良く出、還元は天井近くに出易いですので、

    窯詰めの際、考慮する必要があります。

 ② 窯の温度による違い。

  ) 基本的には、窯内の最高温度は一定にすべき物で、その為「寝らし」作業を行います。

    しかし、実際には5~10℃前後の高低があるのが普通です。窯の容積や作品の数等に

    よって温度差も異なります。必要な温度より高くなってしまった場合、マット釉でもいくら

    か光沢が出る場合があります。逆に光沢釉でも温度が低いと、熔け不足によるマット状に

    なる事もあります。

  ) 結晶釉の場合、熔け過ぎると、棚板まで流れ落ちて仕舞う事もありますし、熔け不足の

    場合には、結晶が出ない事に成ります。尚、結晶の出具合の差は良く解かっていません。

 ③ 施釉の濃淡による違い。

   釉には、厚掛け用と薄掛け用、普通の厚みに掛ける釉があります。厚く掛ける代表的な釉薬が

   青磁釉で、薄掛けの代表的なのが、焼き〆釉や緋色釉などです。その他の釉では適度の厚みに

   施釉しますが、どんな釉でも薄く掛けると、茶~焦げ茶になります。

 ④ 窯の冷える速度による、釉の発色の違い。

  ) 釉の良い黒色を出すには、急冷が良いと言われています。特に鉄釉の黒天目では、徐冷に

   すると柿釉の様に、明るい茶色に発色し易いです。その為、黒色を出すには窯の下部に窯

   詰めすると良い結果が得られます。即ち、窯は下部から徐々に冷えるからです。上部に

   窯詰めすると、茶色になります。

  ) 黒天目の場合、一つの作品の片側が黒で、反対側が茶色に発色する事があります。

   これは冷却速度のみによる物ではなく、釉の濃淡とも関係しています。即ち濃く掛けた部分は

   黒くなり、やや薄めの部分では茶色に成り易いです。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 89 窯の調整の仕方は?4

2015-03-07 13:03:22 | 素朴な疑問
1) 窯の調整機能とは?(どんな事が調整できるのか?)前回の続きです。

 ⑤ 炎の流れを調整する。

   燃料を使う窯では、炎が出ます。当然ですが、炎の温度は場所毎に異なります。即ち大きく

   分けて、根元部分(ガス窯の場合では、バーナーヘッド部分)中間部、先端部分と成ります。

   ) 根元部分では完全に燃焼していませんので、温度は比較的低いです。

   ) 中間部分は燃料と空気(酸素)が適度に混ざり合い、高温に成ります。

   ) 中間部から先端部の途中が、一番高温に成ると言われています。

     先端に行くに従い、温度は徐々に低下します。

   ) 炎が伸びるとは、中間から先端部の途中を出来るだけ引き伸ばす事です。

     即ち、高温部を時間的、距離的に延ばす事になります。

   ) 現在の窯の多くは、倒炎式と呼ばれる構造になっています。

     即ち、炎は窯の壁際から天井(アーチ状のものが多い)に上り、一転して下方に落ち、

     窯底の煙道より外に逃げていきます。上記中間部より先端部途中とは、炎が天井から下に

     向かう時から、煙道に抜ける瞬間までの時間となります。

     尚、炎を天井に向かわせる為に、耐火製の火盾(たて)を使い炎を導きます。

   ) 炎には太くて短いものと、細くて長いものがあります。

     容積の小さな窯であれば、太く短くても良いのですが、容積が大ききくなると、窯内の

     温度を一定にする為にも、細くて長い炎が求められます。更に、の炎を細かく分岐させ、

     窯の隅々まで届く様にします。

   ) 細くて長い炎を作り出すには、炎の通る道を作る必要があります。

     炎の通る道を直線的に作ると、一直線に窯底に到達し、周囲に高温が十分に届きません。

     それ故、下方に向かう途中途中に、炎を分散させる棚板や作品を置く事になります。

   ) 作品と作品の間や、棚板間に細い隙間を作る事で、細長い炎にする事が出来ます。

     隙間が細ければ細い程、炎は伸びますが、熱量は十分ではありません。本焼きの際には、

     窯詰め時に指一本程度の隙間が良いと言われています。高温では素地が収縮しますので、

     窯出し時にはもっと開いています。

以下次回に続きます。


余談ですが、先日伊豆にある韮山反射炉(にらやまはんしゃろ)を見てきました。

 注: この反射炉は、江戸末期に大砲を製作するのに必要な、鉄を作る日本最初の溶鉱炉です。

   世界遺産(産業遺産)に登録する運動がある様です。

耐火レンガで組み上げ、高い煙突を持つ構造ですが、陶芸の窯と同じ様に見えました。

熔けた鉄を作るには、千数百度の高温(説明には温度が表示されていませんでした)にする必要が

あります。燃料は石炭(筑後、常磐産)で、炎を丸い天井に上らせそこから炎と熱を反射させ、

前方下方にある鉄鉱石(?)に当て鉄を鎔かしました。時間は十数時間を要したそうです。

即ち、上記の如く、天井部と炎の先端部の途中が、最高温度に成る事を示しています。

尚、熔けた鉄は型に流し込み成型しています。

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素朴な疑問 88 窯の調整の仕方は?3

2015-03-06 16:30:42 | 素朴な疑問
1) 窯の調整機能とは?(どんな事が調整できるのか?)前回の続きです。

  ④ 酸化、還元焼成と温度上昇の関係。

   燃料を使う窯の場合、温度を上昇させる為には、適度の窯内の雰囲気が必要です。

   酸化が強すぎても、還元が強すぎても温度上昇は低下するか、最悪温度低下を招きます。

   例えば、一定温度に保つ「寝らし」と呼ばれる行為では、強酸化焼成する事で一定に保つ

   事ができます。又、薪窯やガス、灯油窯の場合燃料の供給を増やした瞬間、温度が低下する

   事が有ります。これは、酸素(空気)の供給が追いつかないなどの為と思われます。

  ) 燃料の供給を増やした時、温度低下に対する処置。

   温度上昇が鈍る高温部では、徐々に燃料の供給を増やすのが一般的な方法です。しかし予想に

   反し、温度低下を招く事も稀では有りません。その際あわてて、窯の調整部を操作して、

   温度上昇に変え様とすると上手く行かない事も多いです。

   a) 温度がどんどん低下し、10℃以上落ちる事も珍しくありません。これは、供給量が

    多過ぎたのが原因と思われます。それ故、供給量を若干少なくするのも一つの解決策です。

   b) 冬場などでは、燃料が冷えている為、冷たい物が多量に窯に入り込み、結果的に窯を

    冷やすとも考えられます。

   c) 供給量が増した為、還元焼成気味になり、空気量を増す様に煙突の引きを強くした場合、

    冷たい空気が外部より入り込み、窯の温度を低下させたとも考えられます。

   d) 私の経験からすると、多くの場合、何もせずに放置すると、5~10分程度で、温度上昇

    に転じます。即ち、乱された窯の雰囲気が一定になり、温度上昇に転じたものと思われます

    それ故、「ジタバタ」しないで、静観した方が良い結果が得られる場合が多いです。

  ) 一般に温度が一番上昇するのは、中性炎と言われています。

    実際には、やや酸化気味かやや還元気味に成り、完全な中性炎は難しいです。

   a) ガス窯の場合、バーナーヘッドから出る炎の色を見て判断できます。

    炎の色は青であれば酸化焼成であり、オレンジ色になえれば還元焼成に成ります。

    バーナーの空気流入口の開閉具合で調整し、炎の色を見ます。

   b) 窯の壁に設けられた、色味穴(空気穴)の状態で判断できます。

    窯は呼吸を繰り返しているとも言えます。即ち、色味穴から窯の中に空気が流入している

    場合は、酸化焼成とし、炎が吹き出ていれば還元焼成と見て良いでしょう。

    中性炎では、この流入と流出が適度の間隔で繰り替えされている状態とも言えます。

   c) 薪などの燃料の場合、煙突から黒い煙が出ている状態が、還元焼成であり、白っぽい煙が

    酸化焼成の状態と言われています。

  ⑤ 炎の流れを調整する。

以下次回に続きます。

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