おかげさまで生きてます

日々の暮らしのなかで

やかん

2006年06月05日 | 日記・エッセイ・コラム
絵画の盗作“疑惑”って何ですか?

詳しい経緯も知らないで、あれこれ言うのは失礼かも知れないが、
あれは、どう見たって“疑惑”じゃないでしょ?
テレビでも二人の作品を並べて

「似てますよねぇ~」

って言ってるけど、どう見ても

「間違い探し」

にしか見えないほど、いっしょの出来上がり。
コラボだとかオマージュって言ってるそうだが、ちょっと、ねぇ。

詐欺事件が起きると、コメンテーターが

「この才能をもっと良い事に活かせば成功者になれるのに」

と言う事があるが、今回の画家さんも同じように思える。
折角「絵を描く才能」があるのに。

僕は、絵はまったくダメ。イラストみたいなものなら、少しは描けると
自分では思っているが、絵画はまったくダメ。絵の具を使うと
そりゃひどい仕上がりになってしまう。
風景画なんか描いたら、建物の上に山が乗っているかのごとく
「遠近法」無視の独自の世界が広がる。

そんな僕だが、一度だけ絵画で誉めてもらった事もある。
小学4年生の夏休み。
8月も終わりに近づいた頃、おもむろに宿題に取りかかる。
算数、国語、理科・・・手付かずの宿題の中に「絵画」もあった。

何を描こうか迷った挙げ句、「やかん」を描く事にした。
自分では上手く描けたと思ったが、ここでもやっぱり「遠近法」は無視。
バックを黄色のベタで塗りつぶす。
黄色の空間にやかんが浮かんでいると言う風情もない。ただただ黄色のバック。

しかし、それが先生の目に何故か止まった。

「使い古したやかんの雰囲気が出てる」

なんて、ちょっとバカにされた様にも感じたが、とにかく誉めてもらえた。
ここで話が終わっていれば「いい思い出」で終わるんだが・・・

「それじゃ、今から名前を呼ぶ人は、“絵画展”へ出品するから」
先生が次々と名前を呼ぶ中、僕の名前もその中に入っていた。

「今名前を呼んだ者は、2週間で出品用の絵画を仕上げるように!」

「えぇ~! その絵じゃあかんの?」

無欲の奇跡とでも言うべき「やかん」の絵を越える力は、
もう僕には残っていなかった。

2週間後、絵画の提出日。
皆が提出する中、僕は持って来るのを忘れた事にした。

「そうか。じゃあ時間をやるから取って来い!」

無茶を言う先生だ。授業中にも関わらず家に帰れと言う。
帰った所で一緒。だって描いて無いんだから。

仕方なく家に帰り、真っ白な画用紙を持って学校へ引き返す。

目に一杯涙を溜めて、何も描かれてない紙を差出す。

「絵画展には間に合わないけど、責任は果たせよ」

画用紙を突き返され、2日やるから仕上げろと言われた。
その日の夜、もう一度描いてみる事にした。

「やかん」の絵を。

絵を描く才能のある人が、ちょっと羨ましいと思った秋の出来事だった。









コメント
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