鼎子堂(Teishi-Do)

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『眩談:京極夏彦・著』

2013-12-04 22:55:25 | Weblog

曇りがち。時雨れ。


眩暈(めまい)というものを体験したのは、何時頃だっただろうか?
若いときは、眩暈をおこすことはあまりないかもしれない。
貧血のクラクラ感に似ているかもしれないけれど、脳と三半規管が関連していることは、間違いないだろう。

さて、今日のお題。
こちらも脳と三半規管は、リンクされているのだろうと思う。
・・・違うのは、物語により起こる幻の眩暈感・・・というものだろうか・・・。

もともと眩暈は、自分自身が、静止していても、自分を取り巻く外界が回っているように感じるものだと思う(自分が、動いていて起こる眩暈・・・というものたぶんあるのだろうと思うけれど)。

静止して本を読む・・・活字の中の物語が、いびつなまでに歪む・・・(ここで、『いびつ』を漢字変換すると『歪』と表記される・・・『いびつ』と『ゆがむ』は、同じ意味なのもしれない・・・。なので、これは、二重標記で、日本語としては、正しくないのかもしれないけれど)。

これも、脳がなせる業・・・というより、京極夏彦という稀有な書き手による幻の眩暈である。

この『眩談』は、8つの短編集である。

京極夏彦・・・といえば、文庫本で、厚さ50mmをゆうに超える長編の書き手としても有名である。
しかし、短編も上手い。
しかも、それぞれの短編が、別の京極ワールド(作品)に、巧にリンクしているのも大きな特徴で、個々の短編が、複雑なネットワークで結ばれて、巨大な迷路を作り出す・・・そんな作家でもある。

しかし・・・この『眩談』に関しては、各短編が、個別に存在しているのである。

でも・・・。たぶん・・・これも作者のトラップで・・・そのうち・・・また、別の世界へ複雑なリンクが張られているに違いない・・・。

読者は、騙されてはいけない。

8つの短編集の中で、私は、『シリミズさん』が一番好きだ。
屋敷神として、存在するのに、その存在は、ただそこにあるだけ。歩くと『寒い』と言う廊下。
地上150cmのトイレの窓に映る足・・・など、怖いことは怖いが、実害がない。その家に住む人には、それが日常で、異常なことだとは、思っていないあたりが・・・なんとも・・・。

作られた眩暈感・・・心行くまで、酔って欲しい1冊である。