雨を予感させる秋の土曜日。
気温は、それ程低くはないけれど、晩秋の・・・雰囲気のある土曜日でもある。
ひと月前くらいから、裏の林から、夜間に時折、音が聞こえる。
ポトリ・・・ポトポト・・・。
クヌギの木から落ちるどんぐり達だ。
車の屋根やボンネットに、落ちる音が、夜半には、響く。
ボトン、バキバキ・・・・。
秋も深くなってきたな・・・と思う。
家人は、落ちてきたドングリと落ち葉を掃き始める。
昔は、姪どもは、喜んで、家人の跡をついて回って、どんぐりなど拾って遊んでいたが、高校生にもなれば、もう、そんなことは、しなくなる。
深夜すぎても、姪の部屋の電気は、消えないから、勉強しているのか、漫画でも読んでいるのか、スマホで、ゲームでもしているのか・・・。
私は、ほぼ一晩中、起きているから、どんぐりの落下音を聞きながら、夜を明かす。
夜間は、ほっとする。
世の中は、寝静まる。
私と夜の静寂だけが、『そこ』にある。
昼間の惨めさや、虚しさを、ヴェールで蔽い、僅かな存在の時間がそこにある。
ポトリ・・・
どんぐりが落ちる。
ポトリ・・・
哀しみが落ちる。
一昨日の強風で、全部落ちてしまったと思っていたけれど、まだまだ、落ちる。
私も落ちる・・・夜の闇に・・・。